見出し画像

日本のクルマと世界のEV、どうして差がついたのか…

日本が世界をリードしてきた自動車産業ですが、近年は電気自動車(EV)での遅れが指摘されています。

なぜ差がついてしまったのか。学生時代、自動車部で車を組み立てていたK.I.D.S.代表の吉江彰洋に聞きました。

●EVはエンジン車に比べると難しくない技術

――EVの開発で、日本は遅れていると言われます


日本のメーカーは元々の技術力は高いのですが、大量生産や低コスト化では、アメリカのテスラや、中国のBYD(比亜迪)、ベトナムのビンファストなどに抜かれています。いずれも、今世紀に入って自動車産業に本格参入してきたような新しい会社です。

「エンジン」は部品が多く、仕組みも複雑です。これに対し、EVの「モーター」は部品も少なく、メンテナンスコストも下がります。

国内メーカーがエンジン車と並行して、「長年乗り続けられるEV」を開発している間に、EVに「全振り」した新興企業にブランディングで遅れをとってしまった形です。

実際のところは、海外EVの中には耐久性が日本の基準を満たさない「(安全面でも)走るスマホ」も多いという面もあります。

また、海外のEV車でもパーツの多くは日本企業によるものです。たとえば、モーターなら日本電産やニデック、電子部品なら村田製作所などの部品が使われていて、EVのシェアだけをもって、日本の技術が遅れているとも言い難い状況です。

EVはシステムを構築し、モーターを付ければ作れるため、自動車会社ではない企業の新規参入がしやすい市場と言えます。現にBYDももともとはバッテリーメーカーでした。

中国「DJI」のようなドローンメーカーも、少しシフトすれば開発できるでしょうし、今後も激しい競争が起きそうです。妄想ですが、車好きとしては模型の「タミヤ」のような企業が参入してくれたら面白いですね(笑)。

●エネルギーの補充法にイノベーションの余地

——これから先、どのようなイノベーションが考えられますか?


発電・充電して、モーターを動かす仕組みの開発そのものは、さほど難しくないとされていますが、ネックになるのがインフラです。水素ステーションも、タクシーなどの「ガスステーション」も、設置費用や敷地などの問題があり、なかなか普及していません。

映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のように、車体に生ゴミを入れれば、そのまま発電できるような技術がない現状では、エネルギー供給のインフラ整備が欠かせません。

たとえば、京都大学名誉教授の今中忠行さんらが、水と二酸化炭素から人工石油を作る「ドリーム燃料」に取り組んでいますが、仮に実用化しても、インフラが整わなければ意味がありません。

個人的に注目しているのは、日本で開発された「ペロブスカイト太陽電池」です。薄くて発電効率が高いため、車体の屋根や外装に張れば、EV車みずから発電できる時代も来るかもしれません。

すでにそうした動きはあって、トヨタ自動車が京大発スタートアップ(エネコートテクノロジーズ)とペロブスカイト太陽電池の共同開発を始めています。


いいなと思ったら応援しよう!