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高尾山 前編

このあいだ、ふとポイズンガールバンドの阿部さんに連絡をした。

「高尾山、行きませんか?」

とメールすると、

「今から行く?」と阿部さんから。

時刻は22時。

阿部さんの、いつも本気か冗談かわからない感じで言ってくるそれが好きで、

夜中で山登りなんて、なんにも見えないですよ、あぶないですよー、と言うと、

「とりあえず、飯くってから行くか〜」

と メールがきた。

 本気だった。

なんとか後日という話で約束して、それなら明日、待ち合わせは、朝7.54分新宿発の高尾山行きの電車の中で合流という話に。

先頭車両にいて!と言われていたので

ガタンゴトンと乗っていたら

数駅行ったあとに、

『プシュー!』

電車のドアが開き、

「おー!」と

阿部さん。


さらに


「あ!!、はじめまして、はじめまして〜!」


見知らぬ、坊主で褐色の、インド人ぽい奴も乗ってきた。


「はじめまして、 チャパティです!!」


チャパ、え??チャ?


阿部「こいつ、チャパティ」


え、、?チャパ、 え?


情報が追いつかないまま、ふたりは僕の隣に座った。

「でさあ、そのピッチャーがね、」

2人はすぐさま会話をしだした。


ガタンゴトンと揺れる電車の中

2年ぶりくらいに会う阿部さんの髪型が、長髪からパンチアフロになっているのに気がついた。

そんなパンチアフロの話を、うんうん頷きながら謎の男チャパティが聞いている。

情報量が多すぎる。

ここまでで まだ30秒くらいしかたってない。


「今年の日ハムはね、、」


阿部さんがチャパティに真剣に話している。


ふと外に目をやると、雨も雨。

土砂降りだった。


こんな土砂降りで、パンチアフロの阿部さん、初対面のチャパティ?と高尾山に登るのか、、?


「あ!!国崎さん。」


チャパティがいきなり話しかけてくる。

「ぼく!〜〜で、〜、なんで、〜です。よろしくお願いします!」


聞けば、チャパティは日本とインドのハーフだという。育ちは日本。

「だっ!から、日本人です」

ニコリと笑ったその笑顔、真っ白い歯、一発でいい奴だとわかるその笑顔。

でもうしろの窓に雨がこれでもかと叩きつけて降っている。

「うるせえなあ、チャパティ、声がでけえんだよ。最初の一文字がよ。だっ!からの『だ』がでけぇんだよ。」

阿部さんがそう言うと、

「あっべさん!阿部さんすみません!」

「あっ!べさんじゃねえ、最初の一文字がデケエんだよ。最初に全身全霊かけるのやめてくれよ。俺いつも言ってるよな」

「はぃ!!!あべさん!」

「うるせえなあ、チャパティ、チャパティ!」

「はぃ!阿部さん!!」

「『は』の発音が、デカすぎるんだ!」

「そぅですかね?!気をつけないと!!阿部さんご飯食べました?」

「オメェさ、ほんとに頭おかしいよなあ!」

「はぃいぃいい!!」



なぜ阿部さんは、

チャパティを連れてきたんだろうか、、?



さらに聞けばチャパティは芸人をやりはじめたという。阿部さんとはバイト仲間らしい。

阿部さんからずっとLINEを無視されていて、昨日久しぶりに返事がきて、高尾山に誘われたらしく、

「『い』ぃい 一年ぶりですよ!!阿部さんと会うのも!」

「うるせえなチャパティ!「い」が大きすぎるんだよ、チャパティ!」

阿部さんに会うのが久しぶりだったみたいだ。

そんな3人が電車で合流した。

チャパティの声がデカいという注意する阿部さんと、それでもまだ声がデカいチャパティの

ただそれだけの会話が続いて、


そんなこんなで高尾山口駅についた。


ーーザアアアーーー☔️


景色がみえないくらいに土砂降りだった。


「中止にするか、帰ろう!」


阿部さんが言った。


チャパティ「いいですね!帰りましょう!」



阿部さんとチャパティが帰ろうと支度しだした。


ギョッとした。

そのまま

2人とも電車に乗り込もうとしたので、止めた。


阿部さん「?、どうした国ちゃん??」

チャパティ「国崎さん?」

「ちょっと、ホームで考えましょう?雨止むかもしれませんから💦」

阿部さん「あ!!!」

「ど、どうしました??」

阿部さん「そうそう!国ちゃんに帽子あるんだよ!!帽子!!俺とお揃いだ、ほら!!」

カバンから帽子をとりだして、渡してくる

阿部さん「ほら!かぶってみて!!」

「は、はい、、」

チャパティ「いいですね!!」

言われるままに、帽子をかぶる。

阿部さん「うんうん、似合ってるじゃん!」

チャパティ「いいですね!!」

阿部さん「チャパティ、うるせえ。『い』がデカすぎんだよテメエは、チャパティ」

チャパティ「はぃいいぃ!!!」

阿部さん「チャパティ、俺いつもなんて言ってる?声がデカすぎるんだよチャパティ!」

チャパティ「はぃいいい!!」







やばいぞこれは、、!








イカれた連中しかいないじゃないか、、、!