見出し画像

ちょっとマニアック-吹奏楽の交響曲7選

交響曲といえばオーケストラですが、吹奏楽(≒管楽合奏)のために書かれた作品もたくさんあります。

0.はじめに

7つ選ぶのが大変なくらい多くの曲がありますが、今回は編成にこだわらずに選びました。吹奏楽と言っても地域ごとに編成はそれぞれで、たとえば北欧ではテナーホーン=アルトホルンなどが使われます。またオランダやベルギー(どちらも吹奏楽大国)ではチェロが加わることがありますし、金管楽器+サックスという編成の「ファンファーレ・オルケスト」という吹奏楽団もありますね。

ちなみに交響曲というのは、「ソナタ形式で構成された楽章を含む作品」という定義があります。ソナタ形式って何ぞや? というと、異なる調で演奏された第一主題と第二主題が展開され、やがて同じ調で再現される形式です。これ以上の話は長くなるので割愛します笑。

1.ポール・フォーシェ

吹奏楽のための交響曲 変ロ長調

フランスの作曲家フォーシェが1926年に書いた曲。オルガン奏者だったらしく、雄大なハーモニーが最大の魅力。メロディは優しく、美しい。過去に1度だけコンクール全国大会でも演奏されたらしい…堅実な作品なので大変難しいと思う。1回はやってみたいな。

2.ヴィットリオ・ジャンニーニ

交響曲第3番

ジャンニーニはイタリア系のアメリカ人で、5つの交響曲を書いているが3番だけが吹奏楽のための作品。単純明快だが表情豊かな音楽。前項のフォーシェは少し珍しくなってしまったが、これは今でもよく演奏される。

以上の2曲は20世紀も前半の作品であることもあって(吹奏楽が独自の発展を遂げていない時期)、技術的にそこまで難しくはない。ただし逆に、オーケストラ音楽の流れの中で生まれているため、音楽的には非常に充実している。
以後の作品は良くも悪くも「いわゆる吹奏楽らしく」響くようになっていきます。

3.アルフレッド・リード

交響曲第4番

言わずと知れた吹奏楽の神様リードだが、吹奏楽のための交響曲を5つ残している。中でもこの第4番は、リードの全作品の中でも音楽的な頂点に達している傑作。特に1楽章、魂の叫びを思わせる鬼気迫った音響は、ショスタコーヴィッチを思わせる。こんな言い方が適切かわからないが、エル・カミーノ・レアルやアルメニアン・ダンスと同じ作曲家とは信じがたいほど(どれもいい曲だけど)。

リードのすごいところは、これだけ純音楽を突き詰めていながら、打楽器含むすべての楽器に出番があって「吹いても楽しい」曲になっていること。2・3楽章は割と親しみやすい曲調だし、最後はちゃんと興奮させて終わらせてくれる! 間違いない傑作。1回やったことがある。

4.ジェームズ・バーンズ

交響曲第2番

(最終楽章のみ)

前回も3番を紹介したバーンズだが、交響曲は9番まで書いており、特に2〜6番の完成度は凄まじく、すべてが名曲である。アメリカの自然をテーマにした4番「イエローストーン・ポートレート」や、日本の戦後復興を描いた5番「フェニックス」の方が聴きやすいかもしれないが、敢えての2番、それも最終楽章を、この演奏で聴いてみてもらいたい。一気呵成、猛進していく音楽の勢いに呑まれることだろう。終盤のサックスから始まるフーガは聴きどころ。1回やってみたいけど超難しそう。。

5.ヨハン・デ=メイ

交響曲第1番「指輪物語」

たぶんここまで書いてきた中では、これが1番聴きやすいと思う。イギリスの長編小説であり、「ロード・オブ・ザ・リング」として映画化もされた指輪物語を基に作られた曲。1楽章は大魔法使いの「ガンダルフ」、5楽章は「ホビット」というように、物語内のキャラクターや冒険の様子を各楽章で描いている。特に1楽章のファンファーレは超かっこいいし、3楽章のソプラノサックスとトロンボーンの掛け合い、5楽章の楽しいテンポ感と幸福なサウンドが素晴らしい。なお交響曲と銘打っているが、特に形式は定まっていない。1回はやってみたい。

6.スティーブン・ライニキー

交響曲第1番「ニュー・デイ・ライジング」

(1楽章 黄金の街)

(3楽章 そして大地は揺れる)

(4楽章 ニュー・デイ・ライジング)

「セドナ」や「ホープタウンの休日」といったスクールバンド用の素晴らしい作品で有名なライニキーの、現状唯一の交響曲。サンフランシスコ大地震をテーマに描いており、ゴールドラッシュで賑わう街の様子をジャズ風のピアノや打楽器で奏でる1楽章が楽しい。その分、3楽章の大地震が怖い。4楽章では新たな時代への希望を高らかにコラールで歌い上げる。これも楽しそうなので1回はやってみたい。ただ4楽章がキツそう…笑

7.ヤン・ヴァンデルロースト

シンフォニア・ハンガリカ

「アルセナール」や「カンタベリーコラール」で人気のあるベルギーの作曲家ヴァンデルロースト。彼がハンガリーという国の創建の歴史をテーマに書いた作品がこちら。各楽章にハンガリー歴史上の偉人名が冠されていて、特に3楽章の「イシュトヴァーン」では、激しい戦争の歴史を乗り越えて平和な国が生まれる様子を、実際のハンガリー国歌を用いて表現されている。全楽器でのグリッサンドや、クラスター音など前衛的なサウンドのあとで、美しい国歌(ハンガリーの国歌が本当に綺麗なのだ)が聴こえると感動的。昔コンクールでやったことがある。

ちなみにハンガリーでは「クシャミをしてから話し始めた物語は真実である」という言い伝えがあるらしく、なので1楽章の冒頭では「クシャミ」が表現されている。(これはコダーイというハンガリーの作曲家による「ハーリヤーノシュ」の模倣ですね)

8.最後に

ほかにもたくさんあるのだが、こうやって並べてみると「新しい時代になるにつれて何でもありになってくる」のが、よくわかるかもしれない…笑

この記事が参加している募集

私のイチオシ

サポートお願いします! いただいた分は文化的自己投資に使ったり、また後輩にごちそうする時に使わせていただきます。