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【カンヌライオンズ/Cannes Lions】チタニウム部門グランプリまとめてみた PART 2

こんにちは、あおきかい(@onakaitaiyurui)です

前回の記事では2012年のグランプリをまとめたので、このnoteでは2012年~2019年のカンヌライオンズ チタニウム部門グランプリをまとめていきます。

※PART1はこちら

2013年チタニウムグランプリ:「Real Beauty Sketches」

■Company
Dove


FBIで犯罪捜査用の似顔絵を描いている似顔絵画家に、女性が顔は見せずに、言葉だけで自分の言葉だけで顔を説明して似顔絵を描いてもらいます。
次に、その人を初めて見た人たちに、その女性の顔を言葉で説明してもらい、もう1枚似顔絵を描きます。そして出来上がった2枚の似顔絵を比較することで、「自分が思う自分」と「他者が思う自分」の違いを分析する実験をプロモーションとして実施しました。

実験は「自分のことを美しいと思っている女性は実は約4%しかいない」という結果になり、Doveは「You are more beautiful than you think.(あなたが思っているよりあなたは美しい)」というメッセージを女性たちに訴求しました。

実験の映像は5500万回再生を獲得5500万回再生を獲得し、非常に話題になりました。

ユーザーにとってブランドのあるべき姿を示した事例として評価されたのではないでしょうか。

2014年チタニウムグランプリ:「Sound of Honda」

■Company
・本田技研工業株式会社(HONDA)
・電通
■Country
日本

1989年のF1で、アイルトン・セナが鈴鹿サーキットの世界最速ラップを「マクラーレン ホンダ MP4/5」で記録した際の走行データ(アクセル開度、エンジン回転数、車速の変化など)から、当時の実車を用いてエンジン音を再現、セナの1周分の走行を光と音で24年越しに鈴鹿サーキットで再現したプロジェクトです。

1980年代、Hondaはアクセルやエンジンの動きを記録し、データ的に走りを解析する「テレメントリーシステム」をF1に導入し世界を席巻していました。

このF1で培った「クルマの走行データを記録、解析し、運転に役立てる」という考えから、「Hondaインターナビを搭載する車両から集められた走行データを通じて人々の安全・安心なドライブを支援する」というメッセージを訴求する施策でした。

このプロジェクトのツボは無機的なデータを、「アイルトン・セナが生きた証」と有機的に価値転換し、いかにデータから人々の心を動かすかという事にチャレンジした点だと個人的には思います。

2015チタニウムグランプリ:Emoji Ordering

■Company
・Domino's Pizza
・Crispin Porter + Bogusky
■Country
アメリカ

「ピザ・プロファイル」に個人情報を事前に登録しておき、注文するときには「ピザの絵文字」をドミノピザ公式ツイートアカウントにツイートするだけでピザが配達されてくるというプロモ-ションです。

当時の審査委員長であったマーク・フィツロフ氏は「ピザの絵文字による注文を導入したことは、一見小さな工夫に見えるが、ビジネス上は非常に大きな工夫だ。創造性があふれており、他の企業も同じことをやれるくらい本質的な強さを持つアイデアだ」と絶賛、絵文字の流行をキャッチし、他社でも転用可能な本質的なアイデアである部分が評価されたようです。

ちなみにその翌年、同社は立ち上げてから10秒待つだけで注文が完了するアプリ「Zero Clicks」をプロモ-ションとしてリリースしています。


2016チタニウムグランプリ:「#optoutside」

■Company
・REI
・Venables Bell & Partners
■Country
アメリカ

アメリカのアウトドア用品販売店であるREIが、1年の中で最も大きなセール日であるブラックフライデーにあえて休業し(Opt Out=撤退する)、買い物への執着を止め、健康的にアウトドアアクティビティーを楽しむことを訴求したアンチブラックフライデープロモ-ションです。

REIは、全143店舗とオンラインストアを休業した上で、約1万2000人の従業員に給与を支払い「アウトドアで過ごすこと」を推奨、ユーザーに対しても買い物に固執するのではなく、健康的にアウトドアアクティビティーを楽しむことを呼び掛けました。

このプロモ-ションは大きな反響を呼び、Adageによると宣言から24時間でメディアインプレッションは27億回を記録。その後、多くのメディアで報道され、最終的には67億回に達しました

さらに#optoutsideは他の企業や団体にも影響を与え、150を超える企業が店舗の休業に賛同、何千もの国立公園がブラックフライデー当日に敷地を無料で開放するなど、#optoutsideは世の中のムーブメントとなりました。

「赤字から黒字に切り替わる日」という名前の由来にもある通りブラックフライデーは小売店舗にとって最も大きな商戦日です。

その機会にあえて休業することで、「自然の中でこそ人生がより豊かに感じられる」というブランドが提供している価値をユーザーに訴求することに成功しました。

実際にブラックフライデー当日、160万人以上の人々が買い物ではなくアウトドアを選択したそうです。

2017チタニウムグランプリ:「Fearless Girl(勇敢な少女)」


■Company
State Street Global Advisors
※アメリカの投資マネジメント会社
■Country
アメリカ

3月8日の国際女性デーを記念して、NYのウォールストリートのシンボルとして有名なCharging Bull(雄牛)の銅像の前に、それに立ち向かうかのような少女の像を一夜のうちに突如出現させたプロモーションです。

ビジネスの中心地であるウォールストリート、そこに設置されているビジネス社会の象徴である雄牛の銅像に立ち向かう少女は職場における男女の立場の違いを表現しました。

少女像は企業の役員会における女性比率の低さや、金融業界における女性の給与の不平等に注目を集めるための仕掛けであり、実際に多くの議論を巻き起こりました。

瞬時的なPR的な話題性とニューヨーク市に観光地として認定されるという永続性の両方を満たしたアイデアであることが大きく評価された要因とされています。

2018チタニウムグランプリ:「Palau Pledge」

■Company
パラオ共和国政府


観光客による環境破壊(海洋ゴミ、サンゴ礁破壊、密漁)を問題として抱えていたパラオ共和国が、解決策として世界初の環境保護誓約である「Palau Pledge(パラオ誓約)」への署名を入国者全員に義務づけたというプロジェクトです。

「Palau Pledge(パラオ誓約)」への署名は入国スタンプをリデザインすることで導入され、入国者は誓約文が書かれた入国スタンプをパスポートに押し、直筆でサインすることで入国が許可されるという仕組みを作りました。

【パラオ誓約】
「パラオの皆さん、私は客人として皆さんの美しくユニークな島を保存し、保護することを誓います。足運びは慎重に、行動には思いやりを、探査には配慮を忘れません。与えられたもの以外は取りません。私に害のないものは傷つけません。自然に消える以外の痕跡は残しません」

さらに「Palau Pledge(パラオ誓約)」の導入に合わせ、誓約を違反した旅行者に対し、最大で100万ドルの罰金を科すことができる政策の議決や、観光向けWebサイトや機内映像、ビジネス許可証や標識など、あらゆるものがリデザインされたプロジェクトです

2019年チタニウムグランプリ:「The Whopper Detour」

■Country
バーガーキング
■Country
アメリカ

リニューアルされたバーガーキングアプリの認知を最大化させるために、マクドナルドの近く(約180メートル)でしか受け取れないバーガーキングのクーポン(ワッパーを1セントで買えるもの)をアプリで配布したプロモーションです。

バーガーキングのクーポンを取得するために、わざわざユーザーをマクドナルドへ回り道させるという、マクドナルドへ喧嘩を売っているような点が毎度のごとく話題になり、その結果アプリのダウンロード数は9日間で150万を超え、モバイルでの売上は開始以来の2倍に、来店数も4年間で最高を記録しています。

またマクドナルドへ向かうユーザーを、クーポンによってバーガーキングに方向転換させてしまうという点でも優れたアイデアだと考えられます。

※蛇足ですがバーガーキングとマクドルドだと最近だとこれが話題でしたね


PART 2 まとめ

前回に引き続き2012年~2019年のカンヌライオンズ チタニウム部門グランプリをまとめてきました。

広告業界全体の傾向でもありますが、やはり最近になるほど、社会が抱えている問題にアプローチ、もしくは問題提起を行い、議論を巻き起こすようなプロジェクトが評価されている印象があります。

近年ではSDGsなども強く叫ばれるようになり、関心を持つ企業の方も多いと思いますが、広告賞においてもその傾向はより加速していくでしょう。

今回は2つの記事を通じて「チタニウム部門」をまとめましたが、また他の広告賞の事例等も考察していければと思います。


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