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首都高バトルOnlineについて、思い出話とか仕様を調べたことについて。

はじめに

ご存知ない方に向けて説明すると首都高バトルとは、
首都高速道路でのストリートレースという異色でアングラな雰囲気漂う題材を以て作られたレースゲームであり、
SPバトルという格闘ゲームのような体力ゲージを使った対戦システムの採用、
人物像こそ(殆どのシリーズ作品において)存在しないものの、
短いテキストと愛車のカスタマイズから個性を演出され、魅力に溢れるライバルたち、
シリーズ後期には測量車を使用したマッピングによるコースモデル作成といった真摯なリアリティの追及などが評価され、
(一部のマニアからは)今なお人気があり続編を望む声が多いゲームです。
シリーズ最新作となったスマートフォン向けアプリ首都高バトルXTREMEは残念ながらサービス開始から提供期間1年足らずでサービス終了してしまいましたが、
今年に入ってとあるチューニングショップのブログや
同シリーズの開発を行っている元気株式会社が取り組んでいるモータースポーツ活動におけるプロモーションなどで、
新作を匂わせる動きがあったため、年内にシリーズ新作が発売されるのではないかとウワサされています。気がつけば2024年も半分終わってしまったのですが、
7月に入って元気がPCゲームプラットフォームのSteamに参入することが公式発表され、
それに伴って公式Youtubeが開設されたこと、
どうやら今年4月にTOKYO XTREME RACER(首都高バトルの海外版タイトル)
の商標を取得していたらしいことも発覚した
ため、何かしら動きがあることは確定的な雰囲気になっています。今後の発表に期待しましょう。

前置きが長くなってしまいましたが
そんな首都高バトルシリーズにおいて、2003年3月にサービス開始し、
2005年9月にサービス休止、以降サービス再開されないまま実質終了してしまった首都高バトルOnlineについての思い出話と、
近年海外で首都高バトルOnlineのクライアントファイルから解析を行い、プライベートサーバーを運用する動きがあったため(※法的にはアウトなので良い子は真似してはいけません)
便乗して仕様の確認等を行ったことについて、どのようなゲームだったのか、というお話がこの記事で触れる内容になります。
4Gamerの当時の記事が残っているのでそちらを読めばわかる情報も多いのですが、今回は主に4Gamerの記事に書かれていない実際に動かしてみないと分からない部分について記述していきます。

思い出話

実は私は実際にサービスが提供されていた時期に首都高バトルOnlineを遊んでいたことがありました。
時期はうろ覚えだったのですが、4Gamerの記事からわかったイベント開催時期などから2004年8月~9月頃だったと思います。
複数のサービスから提供されていたのですが、自分はGamaniaでアカウントを作成していました。
当時(2000年代初頭)は月額料金制のオンラインゲームが主流で、首都高バトルOnlineも例に漏れず遊ぶためには月額料金を支払う必要があったのですが、
3日間の無料試遊期間が設定されていた(後から10日に延長されたようです)ので、試遊期間+1ヶ月分課金という形でネット上に展開されていた首都高へと飛び込んだのでした。
余談ですが当時GamaniaがやっていたキャンペーンでPC用ゲームパッドが当たりました。
抽選20名くらいだった気がするんですが、運が良かったのか、
キャンペーン応募者自体が少なかったのかはわかりません。
当時使用していたパソコンは2003年モデルのVAIOで、性能的には問題無さそうに思えましたがカックカクの激低フレームレートで遊んだのを覚えています。「使っているパソコンではまともに動かなかった」のが当時続かなかった理由のひとつかもしれません。
環境設定のやりかたもわかっていない頃だったのもありますが、
グラボ搭載機前提の動作環境だったため、オンボードではまともに動かなかったのかもしれません。
NPCやその辺を走っていたプレイヤーにバトルを挑んでは負けるを繰り返し、奇跡的に勝利したライバルからカーチケットがドロップし、シビックのパチモンみたいな車(※N15パルサー)が手に入って興奮したことは覚えています。

当時はパルサーという車の存在を知りませんでした

首都高バトルOnlineの仕様について

クライアント最新(最終)ver2.03をローカル上で動かした情報に基づく部分が多いため、4Gamerの記事にあるアップデート前の情報とは異なる部分があります。

基本的には首都高バトル0の流用

コースや車のモデルデータはPS2用に発売された首都高バトル0のものが殆どそのまま使われています。独自要素として

  • 実名車種収録のため、メーカーロゴや車名エンブレムは実車準拠に変更

  • 季節イベント期間用にコース上のオブジェクトなどに差分が存在

  • チャットやチーム結成などプレイヤー間のコミュニケーション機能

  • チームでのPvP要素"サバイバルアリーナ"

  • アイテム、チケットの導入

  • チームでの車両共有やプレイヤー間での車の売買

などがあります。特に首都高バトル0と大きく異なる仕様としては

  • チャット機能、チーム結成機能などのプレイヤー間のコミュニケーション機能の追加

  • アザーカー無し(オンライン環境における負荷低減のためだと思われる)

  • 収録車種の大幅削減(135車種+カスタムカー30車種→66車種)

  • ショップ周りの仕様(ショップコースへの移動から各ショップへ入店、もしくはショップカーにパッシングすることで入店[後期ver])

  • コンディションの概念が存在

  • 通り名システムは存在しないので、登録時に入力したプレイヤーネームがそのまま使われる

あたりが挙げられます。
オンラインゲームに落とし込むために変更・追加された要素が多数存在します。
未実装のまま終わってしまったと思われる要素としてはいくつか挙げられますが、
ステッカーが「Genki」固定であったり、ナンバープレートの図柄も1種類で固定されているところ。NPCライバルとして、ROLLING GUY,GALAXY RACERS,MAX RACINGなど本編でもおなじみのライバルが登場していましたが、チームのステッカーやナンバープレートは単一で、再現されていませんでした。
これらは内部データには別のデザインが存在するということで、
やはり負荷低減のために見送られたか、後々にアップデートでカスタマイズ要素の拡充として追加予定だったものが実装されないままサービス休止に至ったものと思われます。

また、各NPCチームのリーダーが「ボス」として扱われており、十三鬼将や十二覇聖は登場せず、カスタムカーも未実装です。ワンダラーに関しても未登場、ある意味では他のプレイヤーがワンダラーであったともいえるのかもしれませんが。

初期選択車種

初回ログイン時にS13Q'sAE86トレノ(3ドア)の2車種から選択します。
あらかじめお金が一定額用意されて予算内で好きに買えるとかではなく、二択です。強いライバルの撃破報酬やイベントで好成績を収めたプレイヤーの賞品として、クルマと交換できる「カーチケット」が存在し、
チケット引き換え限定の車種が多数存在したためにこのような仕様になっていると思われます。

独自要素についての補足事項

最近調べたことも含め、自分のわかっている範囲での解説になるので、
サービス当時のマルチ要素についてはほとんどわかりません。ご了承ください。

実名車種収録のため、メーカーロゴや車名エンブレムは実車準拠に変更

湾岸MIDNIGHT Rや初期の頭文字D ARCADE STAGEで使用されていたモデルと同じものだと思われます。頭文字D ASで実名仕様のホンダ車が登場しているため、首都高バトルOnlineでもホンダ車を収録する気ではあったのかもしれません。
ところで、「公道モチーフのレースゲームで、一般車が走行している場合はホンダは許可を出さない」という根強い通説があったわけですが、
前述の通り首都高バトルOnlineはアザーカーが存在しないにも関わらずホンダ未収録です。

より正確には
「公道モチーフで、共同危険行為や違法競争を想起させるレースゲームには許可を出さない」ということなのかもしれません。
コース上に看板を多数配置して一般車を走らせないことで「閉鎖して、競技場として使用されています」ということを強調していればOKということだったのかもしれません。
一方でNEED FOR SPEED UNDER GROUNDやR改には一般車が走行している公道が舞台であるにも関わらずホンダ車が実名で登場していたため、「ホンダ北米法人経由でライセンスを受ければ承認を得やすい」という説もあります。
話がそれました。

グッズ、チケットについて

ガムやコーヒーを消費して一時的にクルマの性能を上げることができる

グッズ

オンラインゲームゆえにアイテムが多数存在し、一時的にクルマの性能を上げるガム(グリップ↑)、コーヒー(馬力↑)をはじめ、買い物するには都度ショップコースに移動しなければならないのでそのためのファストトラベル券やユーザー間でCPのやり取りを行うために用意されていたCPカード(金券)一定時間セーフモードになるお守、チャットで使えるエモートを増やすアイテムなども存在していたようです。どれもデザインが秀逸で、このゲーム限りなのがもったいなく思えるくらい……。

チケット

先述した通り、イベント報酬やNPCライバルの勝利報酬としてクルマやパーツと交換できるチケットが設定されており、特に高性能なクルマやパーツは店売りでは買えないようになっていたために、
ライバルを倒してこれらのチケットを入手し高性能なクルマを手に入れたり、パーツをチケットと引き換えてチューンナップしていくのがこのゲームの基本的な遊び方だったと思われます。
一応80スープラなどは店売りで購入できたようですが…。

コンディション

グランツーリスモシリーズに採用されていたようなクルマのコンディションという概念が存在し、
同じ車にずっと乗り続けているとコンディションが悪化して性能が落ちるため、オーバーホールを行って性能を回復させる必要がありました。
リアリティを求めているようで煩わしい要素に関しては割り切って
ゲームに入れないようにしているフシの有る元気しては珍しい気がしますが、
プレイヤーを継続的に遊ばせるためにこのような消耗度の概念を設定していたものと思われます。

ゲーム内通貨について

本家同様CP(クレジットポイント)ですが、およそ0の1000CP→Onlineの1CPというレートになっています。
ゲームバランスの関係上か、単純にすべての販売価格が0の1/1000というわけでもないみたいです。
たしか課金してチケットを購入することでリアルマネーをCPと交換できる仕様だったので、むやみに桁を大きくするより減らした方がわかりやすいということかもしれません。

対戦要素について

プレイヤー同士の場合、
パッシングによってバトル申し込みの処理が行われ、申し込まれた側のプレイヤーが承認することで1対1のSPバトルが発生します。
訂正: セーフモード設定等で対戦拒否していない場合、
BATTLE OK!の表示が出る範囲の距離からパッシングされた時点でSPバトル開始となる仕様。
SPバトル中はアザーカーの代わりに何種類かのノーマルカーが沸くようになっており、申し訳程度ではありますが車間をすり抜けて走る首都高バトルらしい対戦になります。

サバイバルアリーナに関しては当時遊ばなかったのでわかりませんが、
4Gamerの記事を読む限りではチームを組んでの勝ち抜き戦で、他のプレイヤーが対戦中はライブモニターが表示される仕様だったようです。
要はPSP版首都高バトルのチーム戦のような形式だったものと思われます。

季節イベントについて

オンラインゲームであるからには季節モノのイベントをやらないわけにはいかなかったのか、
4Gamerの記事を読む限りではクリスマス、バレンタイン、ゴールデンウィーク、夏休みに期間限定イベントが行われていたようです。
夏休みイベントは指定車種によるタイムアタック大会が主な内容だったみたいですが、
それ以外に関しては期間限定のライバルが登場し、倒すことで限定のアイテムを入手でき、それを集めることで景品と交換できた…というよくある内容だったみたいですね。

しかし、2005年2月に元気モバイルに運営が移管されてからは季節イベントどころかアップデートも途絶え、同年5月にはサービス休止予告、9月にサービス休止(実質終了)となってしまったようです。

多層形式のマップ仕様

通常ログイン時に入ることになるメインマップとクルマ及びパーツの購入に使用するカーショップコース、パーツショップコース以外にも細かくコースマップが分けられていました。

  • FREE WAY

NPCライバルの出現しないマップ。フリー走行向け

  • TIME ATTACK

タイムアタック専用コース

  • BEGINNER

アップデートで追加された初心者向けコース。C1都心環状のみ走行可能、
NPCライバルはAE86ワンメイクチームのROLLING GUY,LOWING GUY.ROLLING KIDSの3チームのみ出現。
LOWING GUY とROLLING KIDSは当作にのみ採用されていたROLLING GUY亜種のようなチーム。

  • SURVIVAL ARENA

先述のSURVIVAL ARENA専用コース。

初期verと後期ver(Speed Master)

おおよそ2年半のサービス期間のなかで一度大型アップデートが行われていました。便宜上サブタイトル「Speed Master」が追加されて以降を後期verと呼んでいます。
それ以外にも細かいアップデートは何度も行われていたため、
仕様変更は多岐にわたるようで、公式サイトのアーカイブや4Gamerの記事を追いかけても全容がつかみきれていません。

特に気になったのは「プレイヤー同士のSPバトルで敗北時に経験値減少する仕様だったのが、ある時期のバージョン以降から廃止された」という当時のプレイヤーの個人サイトのログから出てきた記述。
レベル制が採用されておりプレイヤーの強さや経験の指標としてはもちろんのこと、
チームの運営や店頭販売の車やパーツの解放に影響していたと思われるのですが、
負けたら経験値が減るというのはかなり硬派な仕様です。一方的に狩られた日にはギスギス待ったなし…

結局どのように遊ぶゲームだったのか?

  • 地道にNPCのライバルを倒しボス(チームリーダー)を倒してCPを稼ぎ、より高性能なクルマの引き換えチケットやパーツのチケットを入手して愛車を仕上げていく

  • 他のプレイヤーと集まってチャットしたり、チームを組んだり集団の中でコミュニケーションする

  • ひたすら腕を磨き、タイムアタックやプレイヤーランキングで1位を目指す

といった遊び方を想定して運営されていたのだと思います。

私個人としては、オンラインのレースゲームという当時としては珍しいジャンルにあって、
あまりにもマニアック&ストイックすぎたのが、長続きしなかった原因だと思っています。
とはいえそこが元気の、首都高バトルに良さでもあったので、なかなか難しい話です。

あとがき

とまあ長々と首都高バトルOnlineの話をしてきましたが、
およそ20年前にサービス開始から2年半くらいでひっそりと死んだゲームの話ですよ。誰が読むんだこれ。
2005年に発売されたレーシングバトルの作中にも首都高バトルOnlineについての言及はありますが(2005年5月の発売当時は休止予告はあれどサービス中、開発中の2004年頃に至ってはそこそこ盛況だったのでしょう)、
存在したことは知ってても遊んだことはないという人が大半だと思うので、
ほんのひと時とはいえ遊んでいた一人のプレイヤーとして、
少しでも記録を残すべきだと思い
当記事を執筆させていただきました。

2024年7月現在、首都高バトル新作が出るかもしれないと言われている一方で、インディーズメーカーが2000年代頃にPS2で発売された個性豊かな様々なレースゲームを強く意識したような新作の開発をしている話を色々聞きます。

Gaming Factoryが開発中の日本の峠やドリフトシーンを強く意識したJapanese Drift Masterなども気になるのですが、
とりわけPLANET JEM SOFTWAREが開発中のNIGHT-RUNNERSというゲームが、90年代~2000年代の日本のストリートシーンを強く意識しており、
Prologue版の時点で相当マニアックに作り込んできているのを感じたので
「別に元気が首都高バトル出さなくても海外から日本人でも知らない所を凄いマニアックに作り込んだタイトルが出てくる可能性がある」と思うところもあります。
とはいえ、元気にしかできない、首都高バトルの新作として
元気が作ったゲームでしか出せないであろうものは確かにあると思うのです。
そういう意味でも、新作やるなら過去に囚われためんどくせえオタクの
しょーもない懐古主義など振り切るような、しかし温故知新も忘れないような新作を出してほしい、と期待してやまないのです。

おまけ

自分のFC2ブログの方にプライベートサーバーの入り方を記載した記事を作成しました。
興味が抑えられない方向け。重ね重ね言いますが何があっても自己責任で

2024/7/27 いろいろ加筆修正

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