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仏教と国家の二重性ー軍事政権が仏教を利用する背景と矛盾

ミャンマーを知る⑱【3,199字】

仏教と国家の二重性ー軍事政権が仏教を利用する背景と矛盾


 ミャンマーにおける仏教は社会のあらゆる面に深く浸透しており、多くの国民にとって仏教は生活の基盤であり、精神的な支えです。

 ミャンマーの歴史を振り返ると、仏教は国家統治や政治的権威とも強く結びついてきました。

 しかし、この宗教的基盤を利用する形で、軍事政権は自らの権力を強化し、弾圧を正当化している現状が見られます。

 この矛盾した関係性が、現代のミャンマーでの暴力的な支配を可能にしています。具体的な論理を順を追って考えみます。

1. 仏教の社会的基盤


 仏教はミャンマーの国民生活の中心に位置し、多くの国民は日常的に寺院を訪れ、僧侶との強い関係を持っています。

 仏教僧は道徳的な権威を持ち、社会における規範や価値観を形成する上で重要な役割を果たしてきました。

 歴史的にも、ミャンマーの王朝時代から仏教は国家と密接に結びつき、政治的な正統性を支える基盤となっていました。

2. 軍事政権による仏教の利用


 ミャンマーの軍事政権(タットマドー)は、この仏教の強い影響力を利用して、自らの正当性を強化しています。

 特に、軍事政権は国民の支持を得るために、僧侶や寺院との関係を強化してきました。仏教行事に参加したり、寺院への寄進を行ったりすることで、国民に「仏教を尊重する政府」という印象を与えています。

 さらに、軍事政権は「国家の守護者」としての役割を強調し、仏教を「国民統合の象徴」として利用しています。

 仏教を守るため、そして国家の安定を維持するためには、武力行使も正当化されるという論理を展開してきました。このように、仏教を自らの支配を正当化する道具として使っているのです。

3. 仏教的価値観との矛盾


 しかし、仏教の教えそのものは非暴力や慈悲を強調しています。仏教における基本的な教義である「不殺生」は、あらゆる生命を尊重し、暴力を戒めるものです。

 この教えに照らし合わせると、軍事政権による市民への弾圧や暴力的な行為は、根本的に矛盾しています。

 仏教の価値観を信奉する市民にとって、この矛盾は理解しがたいものであり、政権に対する不信感や抵抗を引き起こす要因となっています。

 実際に、過去には多くの僧侶が政権に対して抗議活動を行い、民主化運動を支援しました(例として、2007年の「サフラン革命」)。
 
 しかし、そのような僧侶に対しても、軍事政権は容赦なく弾圧を行ってきました。

4. 仏教者に対する弾圧


 一方で、軍事政権は仏教を利用するだけでなく、批判的な僧侶や宗教者に対しては徹底的な弾圧を行っています。

 仏教徒でありながら、軍事政権に反対する僧侶や修道者は投獄され、場合によっては拷問を受けることさえあります。

 これは、政権が仏教の道徳的権威を自らの支配の道具として独占しようとしているためです。

 彼らは、宗教的な正統性を保持するために、仏教内部での異論を抑え込む必要があると考えているのです。

5. 宗教的ナショナリズムの促進


 軍事政権はまた、仏教的ナショナリズムを促進することによって、自らの支配を強化しています。

 仏教をミャンマー民族のアイデンティティと結びつけ、異教徒や異民族(特にイスラム教徒のロヒンギャ族)を「国家に対する脅威」として描き出すことで、国民の支持を得ようとしています。

 このような分断政策は、国内の不満や抵抗を外部の敵に向けさせる一方で、軍政の安定を図るために行われているのです。

6. 国家統治と宗教の矛盾


 仏教と国家の二重性という問題は、表面的には仏教を尊重し、国民を宗教的に統一しようとする一方で、その実態は軍事政権が自己の権力維持のために仏教を巧みに利用し、弾圧の道具としているという点にあります。

 仏教的価値観との矛盾を抱えつつ、仏教を国家統治のための正当化手段に転用している現実が、軍事政権の市民への暴力を可能にしているのです。

7.仏教を利用する背景と矛盾のまとめ


 軍事政権が仏教を利用しながら、同時に仏教の教えに反する暴力を行使している理由は、仏教が国民にとって精神的・文化的な重要性を持つ一方で、その権威を利用することが政権の権力維持に不可欠だからです。

 彼らは仏教を政治的に利用しながら、その教えとの矛盾を隠し、宗教的ナショナリズムを煽ることで、自らの統治を正当化し続けています。

 この二重性がミャンマーの現状を難解で暗黒の惨状としてしまっているのです。

8.国際社会の限界と慎重な介入


 ミャンマーでの軍事政権による市民弾圧が続いている背景には、十分国際社会の限界という重要な要素がある。国際的な圧力がかからない理由はいくつか存在すると思います。

①地政学的検討


 ミャンマーは中国とインドというアジアの大国に挟まれた戦略的な位置にあります。この地政学的な要因から、両国は自国の利益を優先し、ミャンマーに対して慎重な姿勢で臨んできたのだと思います。

 特に中国は、ミャンマーをインド洋へのアクセス基地として重要視しており、軍事政権との関係を意識しながら、経済的・軍事的な支援を続けています。この視点からは、軍事政権と一定の協力関係を維持しています。

 このため、国際社会全体として強い圧力をかけることが困難になっている大きな要因となっていると思います。

②経済的な利益


   ミャンマーは豊富な天然資源を持つ国であり、特に石油、天然ガス、鉱物資源などは多くの経済的安定にとって重要です。

 一部の安心は、経済的な利益を優先し、ミャンマーへの例えば、中国やロシアはミャンマーとの貿易や投資の利益を享受しており、軍事政権に対する強い構えに対して消極的な姿勢となっていると思います。

③国際的な統一した対応の欠如


   国際社会はミャンマーの人権侵害に対して非難や演説を行っていますが、各国の対応にはばらつきがあり、統一した圧力をかけることはできません。

   国連安全保障理事会では、中国とロシアがミャンマーに対する強制的な取り組みに反対しており、国際的な対応行動が、慎重な状態にあります。

 ミャンマーの軍事政権は国際的な大きな脅威となることを恐れずに市民弾圧を続けているのです。

④ASEANの限界


   ミャンマーは東南アジア連合(ASEAN)の構成員となりますが、ASEANは「内政不干渉」を原則としており、参加国同士の内政問題には直接的な介入を避けている現状があります。

 ASEANからの強い圧力や介入が期待できず、軍事政権が引き続き国民を抑圧する状況が許されているとなっています。

国際社会の限界と慎重な介入のまとめ


 ミャンマーにおける軍事政権の暴力が続いている理由には、国際社会がミャンマーに対して十分な圧力をかけられない地政学的・経済的理由が大きく影響しています。

 軍事政権に対して介入を避け、経済的利益や地域の安定を優先しているため、ミャンマーの政権に対する強力な介入や軍事介入は行われていないのだと思います。

 このような国際社会の限界も、ミャンマーでの市民弾圧が続く一因となっています。

 軍事政権による市民への暴力や弾圧、銃殺が行われ続けていて、あまりにもひどい状況であり、前回と2回にわたり投稿させていただきます。


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