ジュンイチ

神戸在住 この町が好き 文章が好き 夢は読んだ人が元気になる物語を書くこと

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漂流者

コーヒー豆を挽き ドリップにセットしてお湯を注ぐと ブレンドされた豆から 旨味が抽出された液体がカップに溜まっていく 僕は家族という物の温かみを知らない 父親は韓国人で僕とは名前が違う 母は僕にお姉ちゃんと呼ばせていた 17歳の時に30歳以上年の離れた養父の子供を産んだのだから 弟と思いたかったのは仕方のないことだろう 3歳の時に母が家出をしてからは 父を憎む母の兄と叔父が家族だった 僕はいつも一人だった ただ一人親友と思っていた男も 中学時代の出来

    • 7.7秒の空白

      そりゃあ私にも秘密はあるわよ え、教えてって? ダメよ 秘密は誰も知らないから秘密でしょ? ずるいって? たしかに香奈の秘密は聞いたわよ でもそれは、あんたが勝手に言ったんじゃない あーはいはい。分かったわ。教えてあげる でも、突拍子もない話だから笑わないでね それに、信用できないと思うけど まぁ、信用するしないは香奈の勝手だけどさ 実は私さぁ・・・ 小学生の時に雷に打たれたって、前に言ったでしょ ちょっと気を失ったけど、なんともなかったって あれ

      • 夢の世界の君

        僕は夢の世界で君の声を聞く そう 現実ではない夢の世界で どこか深いところに届くんだろうな その場所から夢の世界は現れる 君は笑って泣いて 微笑んで悲しんで 時には怒りふざけて その弾ける声の粒を降り注ぐ そして僕はいつも 甘い気持ちになってうっとりとする 夢の世界だから 恐れも悲しみもなく 追い求めずに 自由な気持ちで君を好きになる 現実にはいない君だから 澄んだ水のような気持ちで 僕は君を好きになれるんだ

        • 白い部屋と猫

          僕は精神病棟のような白い部屋に猫といる まだらのつやつやとした茶色い毛並み しなやかな肢体でぬるりぬるりと歩く姿 金色の瞳と針のような瞳孔 その姿に僕は気が狂うほど魅了されている でも近寄っては来ない 時たま一つだけある窓枠にひらりと飛び乗り じっと外を見る 窓の位置は高くて僕には見えないが 飛び出ようとしないのは よほど高くて絶壁のような壁なのだろう そうして暫くすると降りてきて 部屋の角に寝そべり 顔を横に向けて僕をじっと見る 君は僕に何を思う

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        • 鬼婆と旅の若い僧
          2本

        記事

          親子

          僕たちはこども 地球のこども この宇宙に生まれた母と子 こどもたちは母の大地で生きて 母に甘え母の上で遊ぶ 苦しい事を越えながら 笑って楽しんで 人を愛し 人のために生きる そうやってこの世界に愛を広げて 死んでいく でもきっとまたどこかで 同じ自分で続きをしていくんだ 僕たちはこの宇宙に 愛を広げるためにいるのだから

          ちぃちゃんとお星様

          ママ ほらお花が咲いてるよ ひとつ摘んでいい? ね 綺麗でしょ 池があるよ 赤いお魚が泳いでる お口をぱくぱく 可愛いね お空が青くて 綺麗だね ほら あの雲 メロンパンみたいだよ わーい いただきます 今日はお魚だね  ちぃちゃんこのお魚美味しいから好き お魚さん いつもありがとう そうだ お野菜さんも ありがとう あれ? どうしたの? 悲しいの? じゃ このお花を髪に飾ってあげるね ほら とても 綺麗だよ 鏡みて ね?  わーい笑った 今

          ちぃちゃんとお星様

          いるはずのない同級生

          このお話は他のサイトで公開した物を書き直した物で、昔友人から聞いた話を一部付け加えて書いた物です。 さて今日はどんな話をしようかのぉ ん?怖い話かえ? そうじゃなぁ・・・ ふむ。 あれはわしがまだ小学生の頃じゃった その時に住んでおった家のすぐそばに広い道があっての 道の両側にはおもちゃや人形やらの卸問屋が軒を連ねておってな 昼間には店員が忙しく立ち回っておった その道を背中にして緩い坂を1キロほど登っていくとちょうど同じくらいの広さの道があってな ただ、

          いるはずのない同級生

          宝物

          僕の宝物 つまらなそうしている君に アマリリスの赤い櫛 ほら髪がこんなに綺麗になったよ 悲しい時は 天ノ川が落としたベール 悲しみが思い出になって流れていくよ 君が涙を流したら 桜色の小瓶で受け止める 君を輝かせるダイヤになるんだ 君の心が痛いとき 天女が置いたはね衣 そっとやさしく包んであげる 心の傷が安らぎの里 運ばれていくように 君が疲れているときに ミューズが唄った子守歌 膝枕で唄ってあげる 安らかな眠りにつけるよう 色々ある宝物

          おままごと

          私の母さま出ていった 知らない間に出ていった なんにも言わずに出ていった 私の父さま出ていった 私を見ながら出ていった 父さま背中が揺れていた 私は1人で遊んでいます 母さま残したお茶碗と 父さま残したお箸とで おままごとをしています

          おままごと

          こどものいる列車

          僕の列車に子供がいるよ 1人だったり たくさんだったり いつも外を見て 楽しそうにしているよ やがて大きくなって 列車に色を塗ったり 絵を書いたりして 消えていくよ そうして僕の列車は たくさんの駅を通って いつまでも いつまでも 走っていくよ

          こどものいる列車

          言霊

          私は言霊なりたいの あなたのお耳に住み着いて 愛の言葉を囁くの そしたらきっと 私に気づいてくれるよね それでもだめならどうしよう 私の言霊ひとつづつ 眠るあなたのまわりに置いて 子守歌を唄いましょう せめて夢の中ででも 私に気づいてほしいから 私は言霊なりたいの あなたに気づいてほしいから

          私は空になりましょう あなたが見上げれば いつでも見つけられるよう 悲しい時だって 大きな青空で包んであげる 一人でさみしい夜にも 空を見上げてみて そこにはたくさんの あなたと同じ生命を持った 星たちが輝いている 星だけじゃなく草も木も あなたの目に映る物は全部 あなたの中にもあるのよ あなたは1人じゃない みんなあなたとつながっているのだから

          夜になるとどうして寂しくなるの? それは昼間の色が混ざり合ってるから 子供達の楽しそうな黄色い声 恋人達の情熱の赤 空に向かって伸びていこうとする草の緑 そんな色が混ざり合って 闇の中に隠れているから寂しくなるんだよ でもそれってみんな明るい色じゃない?って? 考えてみて 子供達は大きくなって苦しいことや辛いことを経験して 年をとって死ぬでしょ? 恋人達もいつかは別れることを知ってるじゃない? 草だって最後は枯れる 夜になるとそんなことを心のどこかで

          娘の願い

          カランカラン N:ここは地方都市のママが一人で経営する小さなバー。ママの見かけは30代後半に見えるが実は40の半ばを越えている。いまそのバーに50代半ばの男が入ってきた ママ:あら、源さんいらっしゃい。今日は遅かったのね。 源一郎:うん。娘の荷物をまとめるのを手伝ってたらこんな時間になっちまった。 ママ:あら、大変だったのね、お疲れ様。じゃぁ、最初はビールにする?それともいつもの水割り? 源一郎:そうだな。喉が渇いてるからまずはビールをもらおう。 冷蔵庫を開ける音

          鬼婆と若い旅の僧②-人の生き肝を食らう鬼-

          夜半に目覚める僧N:僧は夜中にふと目を覚ました。隣の部屋でショリショリという音がしている 僧:ん。何の音じゃあれは。ん、んんー、か、からだが動かぬ。 (隣の部屋の襖が開く音 女:目が覚めたか N:窓から差し込む月明かりで見て取れるその顔は鬼婆の顔だった 僧:お、おまえは誰じゃ。女は、女はどこへ行った。 女:あれもわしじゃ 僧:くっ・・・そ、そうか。おまえは噂に聞いた人を食らう鬼婆であったか 女:逃げようとしても無駄じゃ。お前の体は縛っておる。 N:女はそう言

          鬼婆と若い旅の僧②-人の生き肝を食らう鬼-

          暮れなずむ神戸ハーバーランド

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