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将来のアジアは? 世界の地域の将来人口はどうなるか?

 2024年7月11日に国連より、世界の将来人口推計(2024年版)が発表されたことに伴い、趣味世界各国の1950年~2100年の過去から将来の人口まで可視化できるダッシュボードの作成をしました。
 さらに、作成したダッシュボードを用いて、素人ながらデータ分析による、将来人口推計について考察をしてみました。前回、世界全体を取り上げたので、今回はアジアやアフリカなどの、世界の地域の将来人口を考察してみます。
 なお、前回のnoteはこちらです。

 ちなみに、趣味で誰もが無料で利用できる、世界の将来人口推計ダッシュボード(2024年版)はこちらです。ダッシュボードには国連のWorld Population Prospects 2024のデータを利用しています※1。


1.世界の地域の将来人口は二極化するのか

 では、世界の地域(リージョン)の人口ピークについて、ダッシュボードより考察します。考察の中心となる予測は、国連の標準的な推計値である中位推計(Medium variant)で、凄く一般的な予測と思ってください。

 すでにヨーロッパは2020年に約7.5億人で総人口のピークを迎えており、今後、中南米カリブが7.3億人で2053年頃アジアが52.9億人で2054年頃がピークと推計されており、3地域が2100年までに総人口のピークを迎えそうです。
 一方、2100年にアフリカは38.1億人オセアニアは7,300万人北米は4.7億人と、3地域が2100年まで人口が増加していくとされています。
 これで二極化? なので、もう少し詳しく見てみます。

表1.世界の地域別の総人口推移 ・中位推計

 このうち、人口増加が顕著な地域はアフリカになります。表1のとおり、2023年に14.6億人だった人口は、2100年には38.1億人まで増加する推計とされています。ちなみに、世界人口がピークになる2084年にはアフリカは35.1億人と2023年と比較し20.5億人の人口増となり、世界総人口のほとんどの増加分をアフリカの1地域で占める想定になります。

 なお、アフリカでは出生数と死亡数を引いた自然増のピークが2040年代前半の推計となりますが、若い年齢層が多く、だから、分厚い15歳~49歳の女性(再生産年齢の女性)※2が継続して多い、そのため、将来も人口増が続くことは5歳別人口ピラミッドからも見て取れそうです。

図1.アフリカの2045年の5歳別人口ピラミッド ・中位推計 ダッシュボードより

 また、人口増加が続く北米は、米国とカナダの2ヵ国が人口増を続けますがその原動力は移民になります。北米の話は別のnoteで記載します。
 ちなみに、人口減少の影響がある地域はアジア、ヨーロッパのようです。アジアは2100年には2054年頃のピークから6.7億人、ヨーロッパは2020年のピークから1.6億人の人口が減少することが想定されていますが、特にアジアは東アジア、東南アジア、南アジアなどの細分化した地域(サブリージョン)で大きく状況が異なります。
 そこで、サブリージョンの人口推計も見ていきます。

2.人口増の主役・アフリカの将来人口は?

 まずはアフリカのサブリージョンの将来人口推計を表2にまとめました。 

表2.アフリカのサブリージョン別の総人口推移  ・中位推計

 人口増は東アフリカ、西アフリカ、中央アフリカの順で多いと推計されています。これらの地域は子供の死亡率が、他の地域に比べ非常に高いことが特徴になります。表3は5歳未満の子供が1000人あたり何人亡くなったかの死亡率を表してますが、2022年時点で1割以上が5歳まで生きていけない国々があることは、想像できませんでした。
 そして、子供の死亡率が高い国は多産になります。

表3.西アフリカ・中央アフリカの国の5歳未満死亡率(1000人当たり)

 そのため、この地域の国々は出生率が高いのですが、それでも、将来は出生率は低下する想定であり、出生率を上げる政策というのは世界的にみても難しいことが想像できます。ちなみに、2100年の推計で出生率が2.1を超える14ヵ国のうち12ヵ国がこの地域の国との推計になっています。

 これら東アフリカ、西アフリカ、中央アフリカに、スーダンを加えたサブサハラ※3の国々は、難民※4が多いようで、政情や治安の不安定なことが将来人口の見通しを難しくさせそうです。
 個人的見解ですが、政情や治安の不安定なこと、内戦や紛争が起こりやすいこと、さらに教育水準、医療水準、避妊の普及・若年齢の出産、インフラ、経済状況など複合的な要素で、多産多死の状況が解決しないと、将来も出生率が高止まりする可能性がありそうです。

 また、将来的な人口が増えていきながらも、政情不安が多いアフリカの国が国際移民の出身国※5になりえるかは、素人ではイメージがつきません。個人的見解ですが、難民を除いた国際移民の出身として大きな役割を担っていたアジアや中南米※5の人口が減少下になることから、先進国の移民を中心とした人口増加は今世紀後半にはアフリカの発展が重要になってきそうです。

3.人口増減が激しいアジアの将来人口は

 次にアジアのサブリージョンの将来人口推計を表4にまとめました。中東を含む西アジアや中央アジアは人口増が続く推計ですが、それ以外の地域は今世紀中にピークを迎えるなど、アジアは地域によって大きく状況が異なります。
 で、世界の総人口の占める割合が大きいのはインド、パキスタン、バングラディシュを抱える南アジアと中国、日本を抱える東アジアになります。

表4.アジアのサブリージョン別の総人口推移  ・中位推計

 南アジアを見ていくと、総人口のピークは2073年と推計されています。例えば、インドの出生率は2020年に2.10を下回り、その後も減少傾向にありますが、これまでの人口増加により若い世代の人口が多いため2060年代まで人口増加が続き、その後は緩やかな人口減少を辿りそうです。これは、バングラディシュも同じ傾向と言えそうです。

図2.インドの将来人口推計 ・中位推計 2020-2100年 ダッシュボードより

 域内で人口がインドに次いで多いパキスタンは両国に比べ、出生率も高く圧倒的に若年層の割合が多いため、2100年でも人口増が続く推計となっています。南アジアは当面、人口増への対応が必要になりそうです。

 また、2000年頃にこの3国では千人当たり80~110人程度いた5歳未満の死亡数が、2023年にはインド、バングラディシュで27人程度、パキスタンで60人弱まで少なくなったこと、インド、バングラディシュでは平均寿命が70歳代に上昇したことも、加速的な人口増を支えている理由になります。
 この3国を中心に南アジアの国々は近年の主要な国際移民の出身国※5となっており、将来人口も前述のように大きな規模が維持できることから、政策の大きな変更がなければ将来も主要な国際移民の出身国となりそうです。

表5.将来の世界の国外転出(転入転出の差)の上位10ヵ国 ・中位推計


 一方、東アジアの総人口は2021年にはすでにピークを過ぎており、2021年の16.7億人から2100年には7.8億人と半分以下のなることが想定されています。世界に与える人口減の影響が大きい地域になります。

 そこで、東アジアの国々の出生率を図3で2022年からの30年間で比較しました。2024年版の中位推計(赤線)は2022年版の中位推計(青線)より低くなっています。
 さらに、2024年版の出生率で2022年と2023年は実際に近い値と思えば、2022年版でかなり低い推計である濃水色よりさらに下、2年前の推計よりかなーり低い値になっています。それだけ想定より出生数が少なかったことが分かります。

図3.東アジアの合計特殊出生率 国連2022年版と2024年版の比較

 国連では出生率が回復していく推計ですが、一度低下した出生率を継続的に回復することは難しく、将来も中位推計の出生率より低くなる傾向になると想定しています(回復しても出生率1.2!)。そのため、東アジアは推計値より人口減少がさらに進むシナリオが現実的と考察しています。
 さらに、高齢化が進むため、今後は自然な方法で子供を持つのが困難な年齢の割合が高くなる、本当に大変なシナリオになるかもしれません。
 コロナ化で減少した出生数が国連の推計通り回復傾向になるか、ここ数年は目が離せません。そして、東アジアは人口減少と高齢化を前提として、どう将来を設計するかが重要そうです。                                                                                                                    

4.ヨーロッパはどうなるのか?

 ヨーロッパと中南米カリブの将来人口推計を表6にまとめました。

表6.ヨーロッパと中南米カリブのサブリージョン別の総人口推移  ・中位推計

 すでに人口のピークを迎えているヨーロッパでは、東ヨーロッパは1992年に出生数から死亡数を差し引いた人口がマイナスになる自然減となりピークを迎え、南ヨーロッパは2012年がピークとなっています。
 このうち、東ヨーロッパでは、多くの国で2000年付近に出生率が低くなりました。その後、2010年代にかけて回復に向かい、自然減も回復傾向にありましたが、近年は再び出生率が減少しています。東ヨーロッパの特筆すべきところは2020-2021のパンデミックによる死亡数増の影響が大きいこと、2022年のウクライナの移民の人数で国外避難の人数が表れていることが挙げられます。
 
 また、南ヨーロッパでは人口規模の大きいイタリアやスペインの出生率が1990年代後半に1.2を下回るまで低下しました。ちなみに、1992年~1995は世界の出生率の下位3ヵ国が南ヨーロッパの国で、出生率の低下の先駆け地域と言えそうです。その後、出生率は2010年代前半にかけて回復をし、再び1.2程度まで低下しています。出生率が一度・若干持ち直したんですね。
 ただ、将来はと言うと、子供を持たない今の世界的なトレンドの中では、継続的な出生率の回復は難しそうと考察しています。
 人口の増減が少ない北ヨーロッパや西ヨーロッパは具体的な国の例をもって、次回のnoteに記載します。

 なお、出生率は政情や治安の安定などもさることながら、経済発展が大きく影響しそうなので、時間があれば個人的にIMF(国際通貨基金)か世界銀行の世界経済見通しのデータと比較できたらと考えてます。

5.最後に

 データをダッシュボードで見える化すると、素人ながらでもこんな考察が語れます。

文章が多くなったので、以下の内容は次回の記事以降に続きます。
・先進国で人口増加していく国々について
・合計特殊出生率が1.4以下の「超低出生」の国々について
・世界と比較した日本の将来人口について

長文にも関わらず読破いただき、ありがとうございました。

※1 国連のデータ
United Nations "World Population Prospects 2024" : Demographic indicators by region, subregion and country, annually for 1950-2100
Copyright © 2024 by United Nations CC BY 3.0​

United Nations https://population.un.org/wpp/

※2 再生産年齢の女性の定義 晩参加と挙児希望女性人口の高齢化  
   2007.9 国立社会保障・人口問題研究所 岩澤美穂・三田房美
※3 サブサハラの国 外務省・ODA サブサハラ・アフリカ地域 
   https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/region/africa/index.html
※4 国内避難民監視センター(iDMC) 参照 
   https://www.internal-displacement.org/global-report/grid2024/
※5 国際移住機関(IOM)2024年版世界移住報告書 第3、4章を参照
   https://worldmigrationreport.iom.int/


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