『見習い神様、願いを叶えて。』(おまけ回)どうした俺!

これは「第14話 思い出の消しゴム」シン視点でのお話。
芳高くんが青山さんに『YOSHIZAWA』の話をしていたことにみゆきがショックを受けたときの回です。ぜひ読み比べてみてね♪

 学校にいるときにみゆきが話しかけてくることなんてないのに。よっぽど芳高と青山のことが気になったんだろうな。俺はみゆきに二人の様子を見てきて欲しいと頼まれた。
 二人の話をこっそり盗み聞く。どうせ見えてないんだからこっそりなんてする必要ないんだけど。

「吉沢はね、すっごくいいんだよ!青山さんも吉沢の良さ、知ってるでしょ?」
「うん。見た目がかわいいし、柔らかい感じなのも好き!」
「青山さん、よく分かってる!」

 お?なんだ、みゆきのやつ心配することなんかないじゃないか。二人してみゆきをベタ褒めだな。

「芳高くん、いつもながらすごい熱量だね。そういうところがおもしろいんだけどっ。」
「そう?吉沢のこと大事にしてるからね。あぁ、ほんとにかわいい。カスまでかわいいよ。」
「あはは。カスまでって、もうどうかしてるよ。」
「カスを愛してこそ、本当の愛だよ。」
「もう、分かった分かった~。」

 カス?うんこのことか?やっぱり俺が前に言った通りじゃんか。芳高もうんことか言うじゃん。
 現実の男なんてそんなもんなんだよ、みゆき。もっとちゃんと男を知りなさいっての。みゆきは芳高を理想化しすぎてるんだよ。
 まぁ、芳高は確かに悪いヤツじゃないけど。というか、かなりいいヤツだな。ちょっと変なヤツだけど、いいヤツなのは認めざるを得ない。

 というか芳高、さらっと愛とか言っちゃってない?もしかしたら、もう俺の役目も終わりかもな。
 みゆきが知ったら喜ぶだろうな。
 何て言おう?芳高が愛してるって言ってたよ。いや、告白聞くのは本人からが嬉しいよな、やっぱ。

 みゆき、どんな顔するかな?興奮したら鼻の穴開くからなぁ。想像したら笑えてきた!
 でも、嬉しい顔したときのみゆき、ちょっとかわいいんだよな。
 二人が上手くいけば、俺は神様見習い卒業できるんだよな。そうなったらもうみゆきには会えないのかぁ…。なんかちょっと…。
 いやいや!俺は立派な神様になるんだ!

 みゆきに早く教えてやろ!


「みゆき!喜べ!芳高は、みゆきのこと話してたぞ!吉沢はすごくいいとか、大事だとか嬉しそうに話してたぞ!」

 みゆきの顔が一瞬パッと明るくなって、すぐに真顔に戻った。

 あれ?みゆき?もっと喜ぶと思ってたのに。
 授業中だから平静を装ってるのか?いや、みゆきは嬉しいのにそれを隠すような器用なことはできない。嬉しいときも悲しいときも、感情が全部表に出ちゃうもんな。

 じゃあどういうことだ?みゆきの話してても、青山と話してたってことがやっぱり嫌なのかな?俺ならそんなの気にならないけど。女心って難しいなぁ。
 うーん。みゆきは今何思ってんだー?授業中なのがもどかしい!早く聞きたい!モヤモヤするなぁもう!


******************


「芳高、みゆきの話してたのに嬉しくなかったのか?青山がいたからか?」
 家に帰ってやっと聞けた!

「違うの。あれは私の話じゃなくてコレのこと。」

 え?…消しゴム?『YOSHIZAWA』?

 そういえばみゆきに会ってすぐのとき、この消しゴムの話を聞かされたんだっけ。
 おかしいと思ったんだ!芳高があんな風に愛を熱く語るなんて。消しゴムへの愛なら…納得の芳高だ…。
 あぁ、俺はてっきり二人は両想いになったんだと…。

「あの話って、消しゴムの話だったのか。そんな悲しそうな顔するなよ…。な?」

 みゆきにとって『YOSHIZAWA』はただの消しゴムじゃなかった。それは、みゆきと芳高の大事な思い出だった。
 他の消しゴムならまだよかったけど、『YOSHIZAWA』だけは青山に話してほしくなかったよな。
 みゆきの気持ち、分かるよ。

 俺はみゆきの頭を撫でた。
 こうするとみゆきは安心するようで、素直になるおまじないみたいだった。
 泣きたいときは、いっぱい泣けばいい。俺が受け止めてやるから。そんでまた笑えばいい。

 みゆきが泣きながら芳高の話をしている。
 俺は相槌を打ちながら、頭を撫で続けた。

 みゆきの髪の毛からふわっといい香りがする。甘い感じの…。

 おっと、どうした俺。
 みゆきが悲しんでるのに俺はなんで今そんなことを気にしてる。

 みゆきが俺の手を取って、芳高がみゆきに消しゴムを渡したときのデモンストレーションをし始めた。  
 みゆき、芳高にこんな風に手を握られたんだ。
 たしかにこれはちょっとドキッとする…。

 みゆき、手小さいな。柔らかいし。またいい匂いがするし。
 なんか今日のみゆき…すごい可愛くないか?

 マテマテ。ドキッとどころじゃなくなってきた。
 どうした俺!

 ハッ!
 みゆきが「どうしたの」という顔でこちらを見ている。
 無意識にみゆきの顔を見つめてしまってたみたいだ。

 ほんとに、どうした俺!!

 なんか、急にすっごく恥ずかしくなってきたぞ。
 俺、今どんな顔してる?真っ赤になってないか?多分、いや確実になってる。だって今すごく顔が熱い!耳まで熱い!
 みゆき、こっち見るなよ。これ以上俺を見るなー!

「も、もういいだろっ。いい加減、手、放せよ。」

 もうダメ!!一時退散!!!


【完】


もしサポートしていただけたら、執筆活動に役立てるための頭の栄養補給をするために肉を買います!肉を買います!!