シニア指導のヒント～セミパーソナルでバランストレーニングを中心に 長谷山留美
コロナ禍が明けてから、シニア世代の方々の自分の体に対する意識の高まりを感じています。ずっと外出できずに運動不足となっていると実感し、このままではいけない、何かしなければと思う人が増えたのでしょうか、運動するのは初めてという人のスポーツクラブへの入会が増えているとも聞いています。
私は今、同じような体力レベルの方たち2、3人や、母娘さんやご夫婦を対象としたセミパーソナルトレーニングを行っています。「グループレッスンは苦手、自分をしっかり見て欲しい、でも１対１では緊張してしまう、身近な人と一緒なら続けられるかも」と思って来てくださるようです。
トレーニングでは、マシンは使っていません。マシンというと本格的な筋トレをイメージして「私にはきつそう、できない」と思うシニアの方が多いからです。代わりに、椅子からの立ち上がりのような日常生活の動作を中心に、チューブなどで負荷をかけていく方法ですすめています。
ただそれでも、モチベーションが高く続けられる人もいますが、年齢が高くなればなるほど「もう疲れたから嫌」とお休みモードに入ってしまう人も多くいます。筋肉を増やすのは大切、でも筋疲労を起こしてしまったら元も子もない…ジレンマに陥ることもありました。
その時に考えたのがバランストレーニングです。まずは体幹をしっかりさせて安定筋群を作ること。例えば靴下を履くときに、多くの高齢者は立って履くと体がグラグラして不安なので、椅子に座って履きますよね。最初は壁に手をついてでもいい、1秒でもいいから片足立ちしてみましょうというところから始めています。
膝や腰に不安がある人は座って、左右の座骨を上げて、どちらかの座骨だけで倒れないように座ってみる、その繰り返しから始めます。倒れないように踏ん張って体のバランスを取ろうとするだけでも、体幹は少しずつ鍛えられます。
特別なことでなくて、日常の動作に結びつけて続けていくうちに、高齢の方でも最初は片足立ちで1秒でもグラグラして怖かったのが2秒、3秒と続けられるようになり、それが自信につながりレベルも上がって、チューブやミニボールを使ったトレーニングに移行できます。
これはNASM(全米スポーツ医学アカデミー)のOPTモデル（Optimum Performance Training Model）からヒントを得ました。大分前から体幹が大事というのは分かっていたけれど、バランストレーニングから始めることは思いつきませんでした。グラグラしたら怖い、そう思っていたらいつまでも同じ状態なので、サポートをしながら挑戦していただいています。体が安定して初めて次の筋強化やパワーアップの段階へ。危ないと思った瞬間に反応できる筋肉の力をつけるところまでを目指しています。
シニア指導の場合、筋肉や骨格に着目したトレーニングももちろん大事ですが、体幹を安定させるためのコアトレーニングやバランストレーニングから始めてみて、ご本人が「できるようになった」と自分でも分かる評価の仕方を工夫していくといいのでは、と思います。
セミパーソナルで二人一組になって、押し相撲のようなレクリエーション要素を加えていくと、盛り上がって笑いが出ます。笑うと心肺機能も上がりますし、楽しかったからまたやりたいという思いにもつながります。一人だとついつい今日は休みたいと思う人でも、娘さんと一緒、ご夫婦で一緒、誰々さんと一緒となると、モチベーションを高め合うこともできるのです。
※NASM OPTモデルについて詳細はこちら
https://trainer.j-wi.co.jp/what-is-the-opt-model/
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