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アニメ監督*高畑勲さんの<最後の年賀状>

☞トップの高畑勲さんの肖像画像は、<アニメ!アニメ!>サイトより借用しました。

戦争のない、原発も外国の軍隊もない国で

2023年が明けて、パソコンに収めた画像BOXを整理していたら、TVアニメでは「アルプスの少女ハイジ」、アニメ映画では「火垂るの墓」ほか数々の名作を残した、アニメーション監督の<高畑勲さんの年賀状>に釘付けになってしまいました。

その賀状は、高畑勲さんから<高畑勲・宮崎駿作品研究所>代表の叶清二さん(映像研究家)宛に送られたもので、叶さんご自身が数年前にネット上で公開されたものです。

すばらしい内容ですので、ここに書き起こし、拡散させていただきます。

明けましておめでとうございます
 
  皆さまがお健やかに
お暮らしなされますようお祈りします
  公平で、自由で、仲良く
  平穏な生活のできる国
  海外の戦争に介入せず
国のどこにも原発と外国の軍隊がいない
賢明強靭な外交で平和を維持する国
サウイフ国デ ワタシハ死ニタイ です。
 
    2017年1月元旦

     高畑 勲 (※署名は万年筆による自筆

「日本国憲法」の条文宮沢賢治の「詩」を融合させたような高畑勲さんの年賀状は、2023年の今こそ、ふさわしいと思ったのです。
 
世界各地で戦争を起こしたくてウズウズしている勢力が跋扈(ばっこ)し、とりわけ元KGB出身の残虐な独裁者プーチンによるウクライナ侵略戦争が長期化するなか、ニッポンでも国民をせき立てるように、軍靴の足音がドカドカ響き渡るようになりました――。
 
高畑勲さんの年賀状に綴られた文面からは、すでに5年前、今そこにある危機を見通した世界平和への希求と、戦争への火種がくすぶり続けるニッポン国への警告と静かな怒りが感じとれます。
 
高畑勲さんは、三重県伊勢市(現)に1935年10月29日に生まれ、
2018年4月5日に肺がんにより逝去されました。
 
叶清二さん宛の賀状は、最後の新年あいさつとなってしまったのです。

ユーウツな日曜日、高畑アニメになごんだ

高畑勲監督のTⅤアニメはいま思いだしてもなつかしい。
 
1970年代、モーレツサラリーマンに仕立てあげられたころ、日曜日の夕方になると幼な子を膝に晩酌をしつつ、フジテレビの長寿番組「サザエさん」、続けて同局の高畑アニメ「アルプスの少女ハイジ」「母をたずねて三千里」「赤毛のアン」(1974~1980年放送、場面設計は宮崎駿さん)などに心なごませ、エンディングの主題歌を子どもといっしょになって歌うころには、その場でゴロリというありさま。
 
これも、ユーウツな月曜出勤からの逃避だったにちがいなく、「24時間、戦えますか」という栄養ドリンクのCMに、「戦えるわけないだろ」と毒づき、すでに出社拒否症の兆候が現れているころでした。

「アルプスの少女ハイジ」は1974年1月から1年間、
フジテレビで放送され、高視聴率をあげた。
(画像は<ジブリのせかい>サイトより)

やがて、バブル絶頂期に移り、野坂昭如の同名小説(『アメリカひじき・火垂るの墓』として1968年に刊行され直木賞受賞)を読んでいたこともあって、高畑勲監督の劇場アニメ「火垂るの墓」(1988年)に涙し、バブルがはじけたあとの「平成狸合戦ぽんぽこ」(1994年)では、多摩丘陵の大規模開発による自然環境破壊を知ることになります。

昭和20年の神戸大空襲で被災した兄と妹の物語「火垂るの墓」の一場面。
(画像は<いっしーさんのシネパラ>より ©東宝)
「火垂るの墓」の妹が好み空き缶だけとなった<サクマ式ドロップス>(赤缶)は製造元の廃業により先日販売を終えたが、「鬼滅の刃」とのコラボで話題となった<サクマドロップス>(緑缶)は別会社で現在も販売中。(画像は<いっしーさんのシネパラ>より ©野坂昭如-新潮社1988)

ほぼ並走して、高畑勲さんの東映動画時代の後輩で終生の友であった宮崎駿監督の「風の谷のナウシカ」(1984年)から「千と千尋の神隠し」(2001年)あたりまで、もれなく宮崎作品を観るにつれ、高畑―宮崎両監督の社会的なメッセージ性、とりわけ、自然と人間との共生志向に共感し、お二人とも制作の根底にあるのは左翼というかリベラル左派というか、ともかくレフト思想なのだということを知り、ますますファンになったものです。

引退を撤回した宮崎駿監督の10年ぶりの長編アニメ映画「君たちはどう生きるか」(吉野源三郎原作)は今年7月公開予定。(画像は<ファミ通.com>より)

それにしても、<年賀状の終活>にそろそろ取り掛からねばならない時期にきているなとつくづく思う今日この頃、大寒波襲来の折り、末尾ながら、
寒中お見舞い申し上げます

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