村上朝日堂より「文章の書き方」

 村上春樹さんのエッセイに「文章の書き方」というエッセイがある。
 このエッセイは若い物書き志望の方に対して書かれた文章で、非常に含蓄のある文章なので、ここで紹介してみたい。
 まず、文章を書くのは難しい、ということが最初にはっきり書いてある。これはまあ、当たり前というか、当然そこから話を始めるしかないわけで、このこと自体はまあ、普通である。
 しかし、村上さんのこのエッセイには一つ非常に面白いことが書かれている。
 それは、文章を書くということは、どちらかというと、普通の人には敬遠される面倒臭い行いである、という当たり前の事実である。
 これは考えてみると、なるほどそうだ。毎日の生活が十分に充実したものであれば、人間は執筆活動に時間を使ったりしないだろう。村上さんはこのエッセイで、まず、この生活というものの充実がなければ執筆はできない、と主張するのである。
 ここで村上さんの文章を引用してみる。
「どんな風に書くかというのは、どんな風に生きるかというのとだいたい同じだ。どんな風に女の子を口説くかとか、どんな風に喧嘩するかとか、寿司屋に行って何を食べるかとか、そういうことです。」
 村上さんの文章を読んでいると、文章を書くということの手間に思い至る。我々一般にとって、文章というのは作家の頭の中から溢れ出流ように出てくるものと錯覚しがちだが、そのプロセスに至るまでには、作家自身の生活というものがあり、そこから作家は文章の糧を得ているのだろう。
 なかなか含蓄の深いエッセイなので、皆さんも是非、機会があればご一読を。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?