バガヴァッド・ヨーガー<レッスン⑤> もしも、シンデレラの継母がヨガをやっていたら・・・
昔々あるところにシンデレラというとても可愛い娘がいました。
国王たちが住む賑やかな街から少し離れたところに家があったシンデレラ。
動物たちや草花と戯れながら、両親と平和にのびのびと暮らしていました。
しかしある日、とてもとてもシンデレラを可愛がり、愛してくれていた母が突然の病に掛かり、帰らぬ人となってしまいました。
ひどく落ち込んだシンデレラ。
それでも動物たちや草花のお陰もあり、残された父との生活の中で徐々に明るさを取り戻していき、とても美しい娘へと成長しました。
大人の階段を上り始めたシンデレラが部屋で編み物をしていると、下の階の父親から声を掛けられます。
「お~い、シンデレラ、ちょっと来てくれ」
「は~い、お父様」
シンデレラが急いで螺旋階段を降りていくと、そこには、父より少し年上に見える女性と、シンデレラより少し年上に見える女性2人が立っていました。
「シンデレラ、紹介するよ。こちらがお前の新しいお母さんだ。そしてこちらが新しいい姉さんたち」
紹介された3人は深々とお辞儀をして、優しい笑みを顔に浮かべています。
「はじめまして、シンデレラです。これからよろしくお願いします」
驚いたシンデレラでしたが、丁寧にあいさつを返し、笑顔で応えました。
紹介された新しいお母さんは、父が街中で出会った夫に先立たれ、女3人で暮らしていた女性でした。
突然始まった5人での共同生活でしたが、再び悲しい出来事がシンデレラを襲います。
隣町に仕事で出掛けていった父が、事故に遭い、帰らぬ人となってしまいました。
ひどく落ち込んだシンデレラ、なかなか立ち直ることができません。
その時、継母が声を掛けてきます。
「シンデレラ、とても悲しい出来事でなんと声を掛けていいのか。私も愛する人を失い、今は何も手に着きません。あなたとお父様の築き上げた時間に比べたら、私とあの人の時間なんて、ほんの一瞬だったかもしれません。ただ私は心からあの人を愛していました。これからは、家事や仕事は家族4人分担してやっていきましょう。私が週2回、街へ繰り出し通っているヨガでは、<受け入れる>ということを学びます」
「受け入れる?」
シンデレラも少しだけ顔を継母のほうに向けました。
「そうです。周りと比べたり、過去と比べたりせずに、今を受け入れる。これはとても時間の掛かることですが、まずは受け入れることで、スタートラインに立てると考えます。あなたの辛さは誰にも分からないかもしれません、ただ私の悲しみの深さも誰にも分からないでしょう。ただそのことで自暴自棄になるのは違います。そこか目を逸らさず、今と向き合う、これを私は、週2回通っているヨガで教わりました」
「はい、お母様」
シンデレラも涙を拭き、継母の元に歩み寄ってきます。
「お互い時間は掛かりますが、あの人の為にも、前を向いて生きていきましょう。」
「はい、お母様。今度お城で誰もが参加できるパーティーがあるそうなので、それまでに元気にならなっくっちゃ!」
「もうシンデレラったら」
シンデレラは、継母が作ってくれたドレスと靴でパーティーに参加、普通に楽しんでいたそうです。
2人は手を取り合い、仲睦まじく末永く暮らしました。
魔女はその様子を柱の陰からずと見ていたそうです。
おしまい。
【解説】
ヨガではよく出てくる言葉<受け入れる>
例えば、レッスン中にできないポーズが出てきた時に無理にやり続けると、ケガの原因になります。そこでは今の自分を受け入れることが大切です。そしてそのポーズをいつかできるようになるために、何をしなければいけないのか、その道に進むことが必要です。周りの人はあのポーズできているのに・・・、この考えも不要です。今の自分を受け入れることで、初めてやるべきことが見えてきます。
めでたしめでたし
ひとり~の小さな手~♬なにもできないけど~♬それでもみんなの手と手を合わせれば♬何かできる♪何かできる♪