見出し画像

最新のファンドレイジング事情~トランプ就任後の寄付

~営利・非営利のソーシャル事業の成長が、社会課題の解決を加速させ、より良い社会を築くと信じて執筆~

今回は、2017年のトランプ大統領就任後に起こった寄付のうねりについて、ACLU(アメリカ自由人権協会)の事例を見てみます。

ACLU(American Civil Liberties Union:アメリカ自由人権協会)
・1920年設立。アメリカで最も影響力のあるNGO団体の一つ
・政府などにより言論の自由が侵害されている個人や団体に、弁護士や法律の専門家によるサポートを提供。近年は、女性、マイノリティ、LGBTの人々に対する差別撤廃への関わりが強い。
・米国内のファンドレイジングランキング(金銭の収益)のトップ100にランクイン

1.外部環境による寄付の急増

2017年1月、アメリカ合衆国大統領にトランプ氏が就任し、すぐさま特定7か国からの難民・移民の米国内への入国を制限する大統領令に署名するという出来事がありました。この大統領令をめぐって、米国を含めて世界的にも大きな波紋が広がったことを覚えている方も多いかと思います。

実は、この大統領令及びその直前の大統領就任が、ファンドレイジングにも大きく影響を与えていました。

今回取り上げますACLUは、署名後の1週間で40万人を超える新規寄付者が集まり、年間寄付額が前年比200%増の3億ドルにのぼりました。

画像1

こうした外部環境の変化によって、ファンドレイジングが大きく影響を受ける事例は多々あり、日本国内でも「ホワイト・バンド」や「アイス・バケツ・チャレンジ」などが思い出されます。

またこうした事例では、多額の寄付が集まるのは一時的であり、寄付の継続性が課題としてあげられることがあります。

ACLUでは、2017年に新規寄付した人のうち【16%】が、2回目の寄付をしました。この数字は高いとは言えず、一般的な緊急支援に対する寄付の割合と同等と言われており(ただし、米国の平均値に比べると極端に低い数字とは言い切れませんが…)、2017年以前にACLUに寄付した人では、2回目の寄付をした割合は【37%】となっています。

2.寄付が急増したときの対応

2017年当時、ACLUは急激に伸びている寄付に対して、継続性を上げるための試みを行っていました。それは、新規寄付者へテレマーケティングを行い、マンスリー寄付への誘導です。結果は、2017年4月までの4か月間では、53,000人の新規ドナーに対してテレマーケティングを行い、10%がMSへ移ったようです。なお、マンスリーの継続率は【80%】で、単発寄付に比べて高い継続性を維持できることが強みとして捉えられていました。

なおマンスリー会員は、2016年の選挙前は4万人でしたら、2017年4月には18万人に増え、2019年現在は25万人(月500万ドルの収入)にまで拡大してきています。

この拡大の背景には、先の単発寄付者への案内のほか、退会者への復帰案内も一定の効果があるようです。

ACLUでは、12人のデータサイエンティストを雇用しており、分析の結果、マンスリーの退会者に対して、退会後3ヶ月以内にコミュニケーションを行うことで、復活する可能性が最も高いことが判明し、それに応じて施策を実行したようです。

また、データ分析は、高額寄付者を見つけることにも大きく活かされており、この高額寄付者対応もまた、マンスリーへの誘導と並ぶ、ACLUの大きな施策の一つとなっているようです。

~営利・非営利のソーシャル事業の成長が、社会課題の解決を加速させ、より良い社会を築くと信じて執筆~

参考:『The Chronicle of Philanthropy 2019年11月号』

参考:下記webサイト
https://www.aclu.org/
https://en.wikipedia.org/wiki/American_Civil_Liberties_Union


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?