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非営利組織のファンドレイジング"神話"~本当に効果があることは何か

~営利・非営利のソーシャル事業の成長が、社会課題の解決を加速させ、より良い社会を築くと信じて執筆~

非営利での活動のなかには、当たり前と思っていたけれど、実は効果がそこまで期待できなかったり、効果が限定されてしまっていたりすることがあります。今回は、そうした"神話"について、見ていこうと思います。

神話1.成功事例をできるだけ多く共有する

「上手くいったことを共有したい」。私も常々そう思います。その一方で、上手くいかなかったこと、いわゆる失敗は、個人で反省することはあるにせよ、組織(または業界)内で共有することに抵抗感を感じてしまいます。

こと、NPOなどの寄付金を扱うファンドレイジング活動においては、その活動の原資(の一部)は寄付金であることもあって、最適に活用しないといけない、というプレッシャー(または「べき」論)も相まって、上手くいかなかったケースを検討する機会は少ないように感じます。

現実:成功とともに、失敗もできるだけ多く共有する

そうしたなか、例えば、重要なデータが入ったUSBメモリーを紛失したある団体のスタッフが、同じことを業界としても繰り返さないように、その紛失の経緯とその後の対応までをまとめ、他の組織の人に伝えていました。私も当時、その話を聞きましたが、失敗に真摯に向き合い、それを業界の発展につなげようとする姿勢に、多くの人が感銘を受けていました。(実際に、そのときまとめられた対策ポイントは、セキュリティー専門家の意見にも基づいており、実務的にも大変参考になるものでした)

また、海外でも、ファンドレイジングとして大きな話題を呼んだ「アイス・バケツ・チャレンジ」ですが、その後しばらくして組織は大きな低迷期を迎えました。しかし、彼らはその背景や原因をまとめ、公開しました(これについては、こちらでまとめていますが、実務的にも参考になる点は多くあります)。

成功事例を参考にすることも大切ですが、失敗事例もまた、極めて共有する価値のある資産だと私は思います。

神話2.できるだけ多くの人に伝え、多くに人から寄付をいただく

ファンドレイジングにおいて、できるだけ幅広いチャネルを設けて、不特定多数の人に寄付のお願いをする。例えば、無作為にダイレクトメールを送付する、名刺交換した人をすべてメーリングリストに登録する、など。誰かがどこかで、私たち組織の活動を見たり聞いたりすることを期待して、多くのメッセージを拡散するアプローチがあります。

こうした方法は、もちろんある目的下で、またある条件下では、取り得る選択肢になります。例えば、様々な種類の告知を行い、その中から効果が高い種類の告知方法を見つけ、そこに集中する、という目的で行う、など。

成長している組織では、支援者が共感するポイントを徹底的に深堀した上で、戦略的に寄付のお願いをしています。人が寄付するとき、多くは「心 → 頭 → 金」という順番になります。最初に見聞きした活動に"心"が共感し、"頭"で自分のできることを考え、寄付という"お金"を支払う行為を選びます。まず人々と"心"が繋がるかが、大切になります。

そしてもう一つ大切なことは、"心"を変えることは難しい、ということです。例えば、素晴らしい国際協力活動をしていても、海外の出来事に関心がない人に「悲惨な○○国のために寄付をお願いします」と言っても共感しにくく、ましてわずかな接点で関心を芽生えさすことは困難に思えます。

現実:共感する人を探し、彼らに伝えて、寄付をいただく

そのため、もとから関心がある人にメッセージを届けるか、または、別の関心軸で訴えかけるか、という方法になります。

上の例では、○○国に関心がある人に訴求できるとメッセージに共感する可能性は高く、また「子ども」というメッセージを打ち出すことで別の関心軸が提示できる、などが考えられます。

神話3.洗練されたブランドイメージを保つ

パンフレットやニュースレター、webサイトはファンドレイジングにおいて今では欠かせないツールとなっています。

これらツールですが、近年はプロボノの協力も得やすく、大変クオリティの高い良いものが多く見られます。一方で、支援者から見たときに、一部のパンフレットやwebサイトでは、実際のスタッフや活動とで印象の違いが大きく、戸惑うことも少なからずあるようです。

現実:本物で正直であること

ブランドイメージを大切にすることは必要ではありますが、それが等身大の延長であったり、しょっとした背伸びぐらいが、ちょうど良いのかもしれません。

~営利・非営利のソーシャル事業の成長が、社会課題の解決を加速させ、より良い社会を築くと信じて執筆~

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