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【図解入門】シンプルな図の作り方

3年前に、図解の基本をまとめた本『図で考える。シンプルになる。』を書きました。その内容から、エッセンスを抽出したのが本noteになります。

(1)「幕の内図解」と「イチオシ図解」

図には、大きく分けて、2つのアプローチがあります。

ひとつは、幕の内弁当のように、いろんな要素を盛り込んだ図で、もうひとつが、唐揚げ弁当のように、イチオシのおかずにフォーカスした図です。

たとえば、桃太郎の話を「幕の内図解」のアプローチでまとめてみたのが、つぎの図です。

桃太郎_幕の内@2x

登場人物とエピソードをフラットに扱って、網羅的に盛り込んでいます。

この図を使って、人に説明しようとすると、「まず、お婆さんですが……」「つづいて、お爺さんですが……」といった具合に、「お婆さん」「お爺さん」「桃太郎」それぞれの視点に切り替えが必要になり、話す方も話しづらければ、聞く方もまどろっこしく感じてしまいます。

相手がじっくり聞く耳を持ってくれている時にはよいですが、そうではない時には印象に残りません。

では、つづいて「イチオシ図解」のアプローチでまとめてみます。

桃太郎_イチオシ図解@2x

「幕の内図解」に主役はありません。一方、「イチオシ図解」では、桃太郎を主軸にまとめています。

この図であれば、桃太郎が鬼退治をする話だと相手にすぐに伝えることができます。木で言えば、幹と枝がはっきりしていて、時間がなければ、枝の話を割愛し、反対にもっと説明が必要だと感じたら話を付け足すことができます。

「幕の内図解」と「イチオシ図解」を並べて見ると、その違いは一目瞭然です。「イチオシ図解」には、これを軸に伝えようという視点があります。

桃太郎_図解比較@2x

ただ誤解のないように書いておくと、シーンによっては「幕の内図解」が求められる場合があります。

「幕の内図解」のよいところは、網羅的であることです。たとえば、システムの詳細を話し合う時や、何かを契約する時、深い研究をする時には、詳細まで描き込まれた図が必要になります。

詳しい人、専門家にとって、「イチオシ図解」は物事を単純化し過ぎているように感じることがあります。

理想的なのは、「イチオシ図解」で大まかな内容を伝えて、詳細を「幕の内図解」で確認するという流れです。

ですので、「イチオシ図解」がシンプルで絶対的に正解、「幕の内図解」はまどろっこしいからダメというわけではありません。どちらを利用するかは、用途によるし、組み合わせて使うことで補完し合えます。

と断った上で、ここから先は「イチオシ図解」に関する話をしていきます。それには2つ理由があります。

【1】まず求められるのは「イチオシ図解」のことが多い

何かを知りたい時、何かを人に説明する時を想像してみてください。そもそも詳しくないことを知りたいのに、いきなり細かい話が出てくると、ハードルが高くなります。

情報の受け手は多くの場合、専門家ではありません。製品を売り込む相手がまず知りたいのは、ポイントや全体像です。そして必要なのはコミュニケーションです。

ここで先ほどの桃太郎の「イチオシ図解」をもう一度見てみましょう。

桃太郎_イチオシ図解@2x

この図を見た人の中には「あれ、おじいさんがいないじゃないか」と言う人がいるかもしれません。

意図的に省いた箇所がツッコミ対象になるのはよくあることです。でもあえて省いてあるのであれば、そのツッコミを受け止めることで「実はこの図ではあえて、おじいさんを省略しています。それよりもここがポイントで……」といった具合に、対話が生まれます。

図をきっかけに議論やコミュニケーションが起これば、その場でお互いの理解が深まります(注:SNS投稿など、なぜ省いたのか細やかな説明が難しいシーンでは、多少丁寧に注釈を入れておいた方が安全です)。

「イチオシ図解」が余白によってコミュニケーションの入り口になりやすいのに対して、「幕の内図解」は隙がないため、説明を受けても「ふうん、そうですね」と表面的に納得してしまい、一方的に情報を渡しているだけになりがちです。

【2】ほおっておくと「幕の内図解」になっていく

「幕の内図解」をつくるのに作り手の強いメッセージはあまり必要ありません。丁寧に物事を分析して積み上げていくことがもっとも重要なことです。

裏を返せば、「イチオシ図解」のような図をつくりたくても、「これを伝えよう」という意志を持たずに作ると、「幕の内図解」に近づいていきます。

さらに、内容の合意形成をするために、いろんな人の意見を図に盛り込もうとすると、これまた「幕の内図解」になってしまいます。A部門の意向を聞いたら、B部門が「自分のとこの扱いが違う」と言ってみたり。結果、完成した頃にはてんこ盛りに。

アートボード 4@2x

では、実際に「イチオシ図解」、言い換えると「シンプルな図」をつくるにはどんなことを意識したらいいでしょうか?

(2)シンプルを実現するには?

この話をする時に紹介したいのが、1908年のロンドン地下鉄路線図です。通りの名前や公園といったリアルな地図が描いてある上に、各路線が描き込んであります。

画像5

それに対して、1933年にハリー・ベックさんがつくったのが、つぎの路線図です。

画像6

背景にリアルな地図はなくなり、唯一テムズ川だけが、大まかに位置をとらえるために入っています。そして、もとの路線図がくねくねと曲がっていたのに対し、45度とまっすぐのみに単純化しています。

ベックさんは、地図の利用者にとって地上の情報や地理的なリアリティが必要ないことに気がつきました。路線図に求められるのは、どこで乗り換えればいいのか、この路線はどこまでいくのかといった情報です。

そこで、乗り換えにフォーカスして、不要な情報を削ぎ落とすことに成功しました。これこそが、「イチオシ図解」に通じる考え方です。

誰かがもしかしたら「あれ、○○公園はないの? ○○公園への行き方がわからないじゃないか」と言ったかもしれません。でも、その情報を省いたのには意志があるので、「ええ、それは乗り換えに必要ではありませんから」と答えたでしょう。

結果はみなさんも知っての通り、リアルな地図の役割を兼ねた路線図よりも、シンプルにした路線図の方が今でもよく使われています。

僕はこの路線図の話を『ビューティフルビジュアライゼーション』という本で、知りました。TEDでも取り上げられているので、ぜひ見てみてください(3分ほどの動画です)。

さて、シンプルにするには、目的を明確化して、意志をもって焦点を絞ることが重要だとわかったかと思います。

ここからは、それを図に反映するには、どんな方法があるかを話していきます。

(3)図解の基本パーツ

ロンドンの地下鉄路線図では、45度とまっすぐだけで表現していました。同じように、使える表現を制限してしまうことが、余計なことを考えずに、目的にフォーカスするのに有効です。

図解は「四角」「丸」「三角」「矢印」「線」の5つの基本パーツを使って書いてみましょう。

基本パーツを使うことで、思考プロセス自体も単純化できます。また、シンプルなパーツの組み合わせなので最終成果物もおのずとシンプルに、無駄なく仕上がります。

図の基本パーツ@2x

(4)図解の定番パターン

使えるパーツを制限することで強制的に表現をシンプルにするだけでなく、「イチオシ図解」を作る上でもっとも重要な「視点の導入」に関しても、定番があるので紹介します。

【1】「関係性」をクリアにしたい =「交換の図」
人間関係やビジネスの構造など、「どのような登場人物がいて、何と何を交換しているのか」という視点でまとめる時にこの図を使います。

交換の図@2x

2】「要素」をクリアにしたい =「分類の図」
要件の洗い出し、仕様設計など、「どんな要素があって、何に分類されるのか、ヌケ・モレはないか」という視点でまとめる時にこの図を使います。

分類の図@2x

3】「要因」をクリアにしたい =「深掘りの図」
課題解決策の検討や問題の特定など、「どのような課題があって、なぜ起きているのか」という視点でまとめる時にこの図を使います。

深掘りの図@2x

ひとつ前の「ツリー図」と似ていますが、「ツリー図」は情報の洗い出しからはじめてボトムアップで束ねていくのに対し、「深掘りの図」は「残業がなくならないのはなぜか?」「製品が売れないのはなぜか?」といった具合に問いを先に立てて、上から下に向かって内容を考えていくアプローチのため、あえて分けて紹介しています。

4】「違い」をクリアにしたい =「比較の図」
商品・サービスの競合比較や過去と現在の立ち位置の比較など、「どのような比較対象があって、それらはどう違うのか」という視点でまとめる時にこの図を使います。

比較の図@2x

5】「プロセス」をクリアにしたい =「段取りの図」
作業の流れや今後の計画など、「どんなステップがあって、どうそれがつながっているのか」という視点でまとめる時にこの図を使います。

段取りの図@2x

桃太郎の「イチオシ図解」は、この「段取りの図」をメインに、一部「交換の図」を組み合わせてつくっています。このように、定番の図がわかったら、今度はそれを組み合わせて、バリエーションを増やしていきます。

桃太郎_イチオシ図解@2x

6】「組み合わせ」をクリアにしたい =「重なりの図」
製品のコンセプトや会社・個人の強みなど、「どんな要素で構成されていて、それらがどう組み合わさっているのか」という視点でまとめる時にこの図を使います。

重なりの図@2x


7】「目的」をクリアにしたい =「階層の図」
ビジョンやミッション、顧客ファネルなど、「どんな山を、どんな道筋で登ろうとしているのか」という視点でまとめる時にこの図を使います。

ピラミッドの図@2x

以上が、これだけ押さえておけば多くの場合に対応できる定番の図解パターンです。

まずはこの7つで考えてみて、表現しきれなかったら定番の組み合わせで考えるようにします。それでも表現しきれない時に、特殊な図を使うという考え方がよいと思います。

ここまでで図解表現の基本は押さえました。つづいては、図をデザインするという観点で見た時に、こだわるとよいポイントを述べます。

(5)図解デザイン上達のコツ

デザインと言っても、細かい話をするわけではありません。5つの要素に気を配りましょうという話をします。

【1】サイズ
サイズの違いは、存在の大きさの違いを表します。

大小をつければ、大きい方が存在感が出ます。たとえば、つぎの図では、社員と会社では会社の方が立場が大きく、対等な感じがしません。

サイズ違い@2x

それに対し修正を加えて、同じサイズにしたのが、つぎの図です。

サイズ同じ@2x

最初の図と比べて、だいぶ印象が変わったかと思います。図に使うパーツのサイズは意味を持ちます。同じ立場のものを描くときは同じサイズにします。

【2】形
サイズの違い同様、人は形の違いでもモノゴトを区別しています。たとえばつぎの図の形を一部変えてみます。

アートボード 18@2x

四角で表現しているうちの両端にある「社員」「株主」を円にしてみましょう。

アートボード 19@2x

こうすることで、「会社」の存在と、「社員」「株主」を区別して捉えやすくなります。

【3】色
サイズや形以上に違いがはっきり出るのが、色です。薄いより濃い方が重要で、さらに目立つ色にすれば存在感が際立ちます。

アートボード 20@2x

たとえば、重要なところに色を使うようにすれば、直感的にそこがポイントだと見てわかります。

アートボード 21@2x

ただし、色をたくさん使えばいいというわけではありません。色の数を増やしてしまうと、それはそれでノイズになります。モノクロの濃淡 + 1色を目安にするとよいでしょう。

【4】線
線の太さや種類を変えることで、重要性や関係性に違いを出すことができます。太い線は重要性が高まり、点線は不確かな関係を意味します。

アートボード 22@2x

【5】距離
人は近くにあるものを関係が深いと感じ、遠くにあるものを疎遠だと認識します。

たとえば、距離を変えた2つの要素を用意してみると、その違いが感じられると思います。

アートボード 23@2x

このように、「サイズ」「形」「色」「線」「距離」に意味を持たせるだけで、作り手の意志を図に反映することができます。

(6)もっと学びたい人へ

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

冒頭で述べたように、本noteに書いた内容は拙著『図で考える。シンプルになる。』の要約です。書籍では、定番7つの図それぞれについて、練習問題を用意しています。

もっとくわしく図の作り方を知りたいという方は、書籍版も手にとってもらえたら幸いです。

それから、書籍以外にもうひとつ、案内があります。

noteのサークル機能を使って、クローズドなコミュニティ『ビジュアルシンキング・ラボ』を運営しています。

『ビジュアルシンキング・ラボ』では、これから図解やインフォグラフィックをはじめる人や、もっとステップアップしたいという人にとって、必要だと思う情報をお届けしています。

具体的には、以下の3つの情報をコミュニティメンバーに限定配信しています。

・制作の舞台裏
・インフォグラフィック事例のポイント解説
・日々の気づきや気になった情報のおすそわけ

書籍とあわせて、こちらのコミュニティもチェックしてもらえたら嬉しいです。

その他、最新の僕の取り組みや案内などをチェックしたい場合は、TwitterInstagramをフォローお願いします。

図解本以外には、インフォグラフィック、スケッチノートに関する本も出しています。あわせてどうぞ。


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情報の理解と伝達にビジュアルを活用することに取り組んでいます。『ビジュアルシンキング(https://visualthinking.jp)』運営。コミュニティ『ビジュアルシンキング・ラボ』主宰。📚著書に『たのしいインフォグラフィック入門』『図で考える。シンプルになる。』他

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コメント (4)
この本大好きで本当にオススメです!
資料作るときに繰り返し読み直してます。
字も多くなく、読みやすくて助かります。笑
大変共感できます。特に幕の内図解というネーミングがいいと思いました。
勉強になりました。
抽象化をしていく。ということだと理解しました。ありがとうございます。
とても分かりやすかったです!
本の方も読ませていただこうかと思います。
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