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ともだちインタビュー05みすずさん:母親なんて、嫌われるものだと思っていた

ご本人の希望により、写真はありません。画像はすべて参考イメージです。
今でも仲間にからかわれるのが
3日間のスクール最後に彼女が発した言葉
各自3日間の学びに関してマジメな感想を述べる中
「一番驚いたのは、じゅんが別人のように明るくなった事」
それだけ第一印象悪かったらしい(ほぼ全員に言われる)。

小柄な身体から発するはっきりとした声が印象的な人だった。
最初気持ちを張っていた彼女が、3日を通して柔らかく
周囲に安心していく姿は今でも覚えている。

元から内省をよくしていたみすずさんは
インタビュー時に大量の資料を共有してくれた。
これまでの人生を振り返ったメモやキーワード抽出
幸不幸を表す詳細なグラフなどだ。

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そのグラフで一際落ち込んだ時期。一人目の子を産んだ後。

一番欲しかったのは「繋がり」

心身共に大きく疲弊する出産。
喜びと不安が人生最高潮に同居する産後。
自身の体も辛いが、目の前で放っておくと生きていけない命がある。
感情も身体も不安定な中、一番辛かったのが
言葉を話さない赤ちゃんとだけ
一日中過ごす事の「閉塞感」。

「世の中と繋がりを感じられない事が自分にとって、ここまで辛いとは思わなかった。」

そして毎日amazonで買い物をするようになった。
その理由に驚く「家族以外の人と話したかった。宅配に来てくれる人と「ハンコください」「ありがとう」の会話ができるから

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うんうん、とうなずく経験者と、驚く未経験者に分かれるだろう。

「産後あるあるだと思うよ。知り合いはコンビニでヨーグルトを買いに行ってた。店員さんに「スプーンつけますか?」って聞いてもらえるから。」
もちろん夫はいるが普段は仕事で夜遅く帰る。
他人との繋がりに飢えていた。

その辛さを解消できたのがコミュニティ
産後のママが集まり、バランスボールで体調を整える会に参加。
外との繋がりができ、徐々に楽になった。
元々人付き合いにハードルがありママ友ができにくかった彼女にとって

「自分の弱い所を出してもいい場所ができた」

「人と会うとか、運動するのもいいけど、とにかく大人として話ができるのが良かった。」
僕は次の一言を大事に受け取った

「○○ちゃんのママ、じゃなくて、私、として扱ってくれた」

もちろん、様々なコミュニティ、公共施設などを試した結果の話だ。自分にとって居心地の良い場所を見つけるまでは苦労した。

1人目の経験から
2人目は「他人に頼る」事にした。
意識的に他人と接触し外部サービスも使うことで、手間よりも「接する」機会を作った。

産後辛かった気持ちの1つに

自分が社会に何もしてない

世の中に、何も生んでいないというあせりがあった。
元々誰もが知る外資系大手企業の広報。
辛い事も多かったが、熱心に働いた。
「自己肯定感を、仕事で保っていた」
彼女には、仕事ができない事が辛さだった。

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仕事復帰後も時短を選ばず働いた
「給料減るのにやらなきゃいけない事は一緒。
全然良い選択と思えなかった。」

育休の間に変わった上司の元
「子どもが足かせになっていると思われたくなかった」
仕事をバリバリして、それを感じさせない事が
自分にとってのプライドだった。

「子どもがいるから仕事ができないと思われたくない」

いつでも連絡つく、海外出張にも行くなど、
今振り返ってみても「そういう鎧をかぶって」
家庭より仕事を優先した。
それが仕事にも育児にも空回りだと気づき
少しずつバランスが取れるようになった。

「今なら時短や、育児のために仕事セーブするのも理解できる」

自己肯定感を仕事に依存したきっかけを聞いた。
「高校の時かもしれない」
高校受験で第一志望の都立に落ち、
都内の自宅から遙か離れた郊外の私立高へ通った。
けして裕福でない家に私立の負担をかけた上
周囲の生徒に馴染めなかった。
「間違った所に来てしまった」
加えて「もっとできる」と言いたかった母親から
事あるごとに言われ続けた
「あなたはまだ全力を出してない」という言葉も
自己肯定感の低下を招いた。

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母親と、母親になった自分

子どもが生まれてからの悩みがもう一つあった。
「子どもがかわいいと思えない」
そういう自分に長く罪悪感を持っていた。

その理由として発せられた
今回一番驚いた言葉

「母親なんて、どうせ嫌われるものだから」

嫌われたくなくて、
学校の同級生から距離を取る人がいるように
嫌われたくなくて、子どもと心の距離を取ろうとしていた。

それは、自分がそうだったから?

「そうだと思う」

母親は「尊敬もしていたけど、違和感もあった」
特に強かった違和感は
「女性はこうあるべき」という考え。

遊んでいる兄達を尻目に
自分だけが家事を手伝わされた。
家事は女がする事、
そんな考えに違和感を持っていたが
反発しても変わらなかった。

長く続いたその「呪い」を解いてくれたのは、夫だった。

実家で食事をした際
炊飯器のそばに座らなかったみすずさんを母親が怒鳴った。

「あれはおかしいよね」
初めてそう断言してくれた人に会えた事で
「そう思っていいんだ、って」

母親ともわかりあえない気持ちに対しても
「無理しなくていい。距離取れば」
親は好きにならないといけない、
という強迫観念も解いてくれた。

理解者

夫は幸いにも男尊女卑もなく
育児にも積極的な人だった。
元ラグビー部にしては保育園のママ友ともうまく付き合える
その文化が根付いていない会社にいながら
自ら進んで育休を取った。

そういう人で幸運だったと思う反面、
無意識に選んでいた可能性もあると。
「多様性とか、固定観念の少ない人を選んできたかも」

努力もした。
夫婦でパートナーシップセミナーにも
参加するなど努力もした。

分担を決めた家事をやっていない時も
絶対に自分でやったりしない。
相手が自発的にやるまで待つ。
「夫は一番近い他人だから、
 きちんと話し合って納得しあっておくことが大事」

旦那さんと結婚を決意した理由を聞いてみた。
ご参考までに。
・人として尊敬できるか
 「長年住んで、例え愛情がなくなっても尊敬できていたら大丈夫」
・私より辛い経験をしているか
 「そういう経験がない人だといざという時に考えの甘さがでる」

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今、これから

2人目ができて、現在は2度目の育休中だ。
今回は自分なりに工夫し、「ストレスは少ない状態」
子どもの事は?
「今はね、二人共かわいいって思える。
 心の余裕ができたからかも」

例のグラフでは、今は高い方だ。
仕事に関しては、少し楽に考えられるようになった。
でも「自己肯定感はまだ低い」

「友達からも「恵まれている方だよ」って言われるけど」
キャリアも家庭も対外的には文句のつけようがない。
しかし
「成功者や、人気者を見ると比べちゃうし
まだ認められたい、って思いが強い。なんでだろ」
自己肯定感が低い、というより、
最近は自分への要求が高すぎるのかもとも思う

子どもの頃から優秀で
その上母親にハードルを上げ続けられた結果生まれた
自分に対する要求のバランスを今は考えている。

探求の旅は続く。

あとがき

プロのコーチになりたいと思っていたり
人事研修で来る人が多いコーチングスクールに
みすずさんは「自分を知る為に来た」という人だった。
仕事ができる事とプライドが高いのはすぐ伝わったが、
同時に「夫」という単語がよく出てくるのがかわいいな、とも思っていた。

親になって誰もが向き合うのは
子供だった自分と、その親。
今は親である自分と、子ども。
長い子供時代を経て染み付いた価値観と向き合い
更に長く付き合っている自分自身と向き合う。

ずっと持っていた「べき」から少しずつ開放され
自分の家族やキャリアに向き合っていく姿は
僕やあなたの姿でもある。

サポートされたら、俺はその倍額を寄付する。倍返しだ。