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#BLM 「人種差別は日本に無い」という勘違いを打ち壊す 日本語ラップの歌詞200701

日本に差別が存在しない、のではなく
差別意識が存在しない。
そして、差別している人のほとんどには
その差別意識が存在しない

SNSで社会的トピックが受けないのもわかるし、一生懸命書いても読まれないのも想像つくのだけど、そもそも思った事を書くためにnoteもSNSもやっているので、やっぱり書くしかない。Hip Hop好きとしての責務でもある。

この記事を書いている今日、この曲が発表された。RYKEYと仏師。

アメリカで始まり、世界中へ飛び火し大きなムーブメントとなっている人種差別撤廃運動「#BLM」。日本でも一瞬話題に上がったが、芸能人スキャンダルだなんで打ち消されてしまった。そもそもこの件を「自分達の話」と思う人は少ないのかもしれない。僕も海外に住んだり旅をして自分が差別される経験がなければ、もっと無関心だったのは間違いないので、それは間違っている、とは言えない。しかし実感がないのは幸運なのと同時に「自分が差別する側」にいる可能性がある事も知ってほしい。

特にあなたが
「外人」という言葉を使った事があるか
もしくは今聞いても、なんにも思わない場合は。

無駄な命が 一体どこにあるのか
色や性別 人種が違う それがどうした
真っ只中 真っ逆さまに落ちるアメリカ
あの人は言った 私には 夢があるとか
俺たちも変わらず その夢を語りながら
明日歌う曲の 打ち合わせをするのさ
目の前にはいつも 前途多難な事柄
約束の場所には まだまだ届かないが
歌う事は辞めないでいるよだってこれから
騒ぎ出した世の中 には必要な言葉さ
身をもって教えてくれた 自由のあり方
1968年 4月4日

あの人とはもちろんマーティン・ルーサー・キングJr牧師。
最後の日付は彼が撃たれた命日だ。
「約束の場所にはまだまだ届かないが」
約束の場所とは、演説「I have a dream」の中で
語られた彼の夢、人種差別の無い世界。
「騒ぎ出した世の中には必要な言葉さ
身を持って教えてくれた自由のあり方」

ちょっと裏読みをすると、I have a dream
人種差別を無くす為に必要な言葉
と夢を持つことはこの世の中には必要さ
というダブルミーニングだとカッコいいな
と思ったりする。

今日はこの歌をきっかけに、二人のラッパーが歌う日本での人種差別体験の歌詞を紹介したい。

RYKEY

は八王子出身のラッパーだ。日本人の父親とケニア人の母親の間に生まれた。暴力や大麻で捕まった事もあり、けして品行方正ではないが、それが彼の曲を聴かない理由にはならない。まず声やフローがめちゃめちゃカッコいいラッパーなのだが、今回はちょっと置いといて。彼は自分の差別体験を歌詞にしているラッパーの1人。

君も知ってんだろ俺の噂
のハーフとは遊んじゃだめの噂 
人の価値を耳と目で図る街が東京

肌の色が違う、「見かけが日本人ぽくない」と
言われて様々な思いをした人は
誰もがうなずく歌詞かもしれない。
こういう事でしょうね↓

そのRYKEYのバースがめっちゃめちゃカッコいいのが
ボリビア人と日本人の間に生まれたラッパーSIMON
KANDYTOWNのIOと一緒に出したのがこの曲。

Eyesと題名が付き「そんな目で俺を見るな」で3人のバースが始まる。
人種差別というより世界平和を歌っていると思うが。
今でもベスト5級のオススメ曲。

Moment Joon

2020年前半、間違いなく1番「心にくる」
アルバムが彼の「Passport & Garçon」。
全体を通じて彼のアイデンティティを歌うが
ほぼイコールで日本での人種差別のアルバムだ。
このアルバムから人種差別の歌詞を取り出すと
ほとんど全部載せないといけなくなるほどだ。

1曲目「KIX」から
その記号となっている関西国際空港で
入国拒否される様子が描かれる。
その後もタイトルと角度を変えて
日本で受けるきつい差別をありありと描写する。

顔にタトゥーを入れたい「税金払ってます」って
あらためて自己紹介 初めまして
名前はモーメントジュン でもあんたにはただのチョン
韓国語苗字は金 いや、ちゃいますよ 孫
あの社長と共に日本をあやつる
いや、ふざけんじゃねぇよ
そんな金あったら引っ越すよ 今すぐ

俺らってお前には貧乏だったり
でも非難したい時はいきなし イルミナティ
ね、どっち? 答えろよ どっち?
お前らは何の資格で俺らをジャッジ?

良い人生を手に入れたいってそれだけだよ
そのためお前と同じ命をかけたよ
その陰謀って儲かる?
そもそも経済活動って何なのか分かる?
じゃ否定してみろ 俺の確定申告
お前の存在自体が残酷なジョーク

5曲目「HOME / CHON」より

彼は韓国生まれ韓国育ちのMoment Joon。
大学のため来日し、覚えた日本語でラッパーになったという異色の経歴。
韓国語と英語も話せるが、ラップは日本語中心にこだわる。
アルバム12曲をかけて1本のテーマからぶれない。
それはもちろん「彼自身」の事だが
でもその中にいかに強い差別体験が
刻まれているかが浮き彫りになる。
めちゃめちゃカッコいいトラックが流れているのに
気軽に聴き流せる曲はほとんどない。

先日した彼のTweetが、また問題の根深さを浮き彫りにする。アルバムを絶賛するリスナーとのやりとり。

彼に悪気が無いのはもちろんわかる。
だからこそ根深い。
洋楽と邦楽、洋画と邦画、という別け方をして
文化に線を引いてきた事1つとっても
日本に人種や国籍(以外も含め)差別が無いわけがない

洋楽邦楽と別けているのが悪い、という話ではなく
人々の意識にそのカテゴライズがあるという事は
日本とそれ以外って何かを
意識しながら生きているという事だよね
という意味です。

今回は2つの私欲が混同している事を認める。
カッコいい2人のラッパーを紹介したいという事。
それと、残念ながら他のほとんど全ての国と同じように
この国でも人種差別はあるという事。
人種でなくても、男女、性指向、年齢、
あらゆる差別がある。

少なくともそれが無いことにして
目を背ける事だけはしないよう、自身にも問いかける。

「人種」ではないが、
まだ聴いたことが無い人は、
最後にこの曲を「必ず最後まで」聴いて
差別の幅広さと根深さに関して考えてもらいたい。


約束の場所には まだまだ届かないが
歌う事は辞めないでいるよだってこれから
騒ぎ出した世の中 には必要な言葉さ
身をもって教えてくれた 自由のあり方

サポートされたら、俺はその倍額を寄付する。倍返しだ。