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「アバランチ#1」闇と色気の煮凝り。

「アバランチ」1話に寄せて。


 こんにちは。
 いつもはドラマの1話を見たくらいでは感想をnoteにしたためたりはしないのですが、なんか今回は友人に「毎話更新しろ」「それくらい踊るだろ」と言われて何だバレてんだったら仕方ねえなという気持ちでnoteを更新していくことにしました。
 過去履歴を見てもらったらわかると思いますが綾野剛出演作とドイツ映画の話ばかりしている珍妙なアカウントなので、みる人を選ぶどころか誰が見てるんだよコレという開き直りの元に運営しています。ここを読んでる人は紛れもなく同志だろうと思っています。暫しお付き合いのほどよろしくお願いいたします。

 さて固い挨拶はこのくらいにして見ました? アバランチ。

 やばかったですね。
 いやこのクオリティで毎回地上波で見られるのか〜と思うと期待しかないし生きててよかったなって思いますね。
 健康と生命に感謝。そしてこの時世にドラマを撮影、放映してくれる奇跡にも感謝。カンテレ(元)火10枠に最大の信頼を寄せるぼくとしては「枠的にもスタッフ的にも最高なのはわかってたけど自分らで上げまくったハードルふっつーに超越してきて流石すぎるわ」とめちゃくちゃ幸福感高かったです。

 以下やばかったポイントを挙げていきます。


・主演 綾野剛のやばさ

 語るに及ばずという感じなんですが、綾野さんの演技幅が今回も爆走してたな。おおよそ考えうる限りの最もやばい綾野剛が爆誕してしまったと浮かれ騒ぎ喜び庭駆け回っています。忙しい。
 冒頭からガチガチの暗い過去持ちで藤井監督は綾野さんに暗い過去を背負わせたがるヘキでもおありですか? とお伺いしたくなる所存。元公安部の警察官(多分)で同僚やら何やら亡くしてるっぽい。この同僚というのが駿河さんで小憎い〜! 綾野さんと共演する駿河さんは高確率で亡くなる説ある。この存在感の作用、配役の妙ですね。
 現代に至ってもトラウマと傷が深く刻まれており、それをオーバーサイズめの分厚い装いで内側に覆い隠す「羽生誠一」の造形、開幕5分でもう好きでした。ありがとう。ちなみに開始4分でタバコ吸ってたし終幕3分前にもタバコ吸ってました。地上波で。
 羽生さんは人を食ったような立ち居振る舞いをするけど基本的には無邪気さというより大人の余裕で核心をはぐらかす底知れなさのある人なので、これまでの綾野さんの演じてきた役幅から考えると実は近いのが安室なんじゃないか……コレはもはや脚本当て書き状態なのではないか(多分そう)とヘラヘラしながらドツボを踏まれて、何ならツボの上でタップダンスかまされてるくらいの刺さり具合で大変よろしかったです。そしておそらく物語が進むにつれて底の部分が垣間見れるのだろうなあ。一皮剥いたら山本に似た狂気があったりするんでしょ。でも本質は公務員の空井や諏訪のような部分があるんでしょ。もう好き。好きしかない。
 似たところで言うと犬養や伊吹はあくまで組織内部で傍流、アウトサイダー寄りでありながら「組織所属」の前提は覆らないという立ち位置にいたのに対し、羽生さんはドロップアウターであってすでに「組織所属」の前提を超越しているところに最大の違いがあって、ここがその後の正義だったり行動指針だったり、判断だったりの基準になると思うと物語の深みに期待が募ります。超えた人と超えなかった人はおそらく邂逅を果たさない。そういう意味では「超えずに」「属さない」立ち位置の木村さん演じる山守さんが物語の結末で担ってくる役割が大きいのではないか。そして超えるであろう(おそらく実績としては一度「超えてしまった」)福士さん演じる西条くんとの対比にもなるのだろうな。周辺キャラクターも含めてなかなかの深みを感じさせますね。

 とにかく立ち姿とスイッチ入った時の暴れっぷり、笑顔で人を殴る躊躇いのなさ(一種のスイッチの切り替えかもしれない)、根から狂っているのか敢えて狂気に身を窶したのかまだわかりませんが、そういう表層から核心を垣間見せてくる造形が大変ツボでした。いい。好きだ。どうか最後まで生きてほしい。あと普通に可愛かったのでやばい。ある程度歳をとった男性に特有の可愛さがあったのであれは気を抜くとやばい。中の人があやのごうというのを差し引いてもやばい。年下のイケメンに「超イケメンじゃん」って声かけるヘラヘラした男、上司の女性を躊躇なく「あんた」って呼ぶ男、すきです。闇と色気の煮凝りだよ。

・扱う題材のやばさ

 藤井監督は「ヤクザと家族」を見た後に「新聞記者」を見たんですが今回テーマ的には結構そっち寄りというか、内調とか普通に出てきたのもあって社会のきな臭い部分を洗い出してエンタメにしようとしてるんだなと思いました。
 いわゆる勧善懲悪の傾向を1話からは感じたんだけど、ただその糸引いてるのもまた権力背景の後押しというか、あくまで実働部隊のアバランチは警察、ひいては政府中枢とも何らかの関係があるという基盤を序盤から打ち出してきたのが印象的でもありました。
 羽生さんの正義のモチベーションは何に起因し、山守さんのモチベーションはどこに起因するのか。ほのめかしとして亡くなった公安職員と恋人だった? 写真が最後にチラッと写りましたが、それが私情による復讐なのか、真実を解き明かし溜飲を下げたいというエゴなのか、はたまた意志を継ぎたいのかは現段階ではまた不明でもある。誰が一番得をして、誰に泡を拭かせたいのか、まだ1話ではよくわかりませんね。多分ですが、藤井監督の作風として体制側に安易な正義を持ってくることはないと思うんですけど、それはそうとして主人公には寄り添う(ハッピーではないがベストエンドをちゃんと持ってくる)スタイルだと思っているので、主に羽生さんの行動指針を丁寧に追っかけたいと思います。多分そこに物語の持つメッセージ性とか、「正義」の軸とかが乗っかってくる。このドラマが化けるかどうかはそこにかかってる気がします。少なくとも役者は揃っている。表も裏も。
 もちろんすでに面白いドラマではあるんですが、それ以上に伝説的側面というか人を惹きつけて離さないいつまでも考えさせる要因のようなものがある作品って、話の軸のような部分が強固で示唆に富むものだと思うので。そういう伝説的な化け方をするかどうか。五年経っても人の情緒を揺さぶり続けるかどうか。少なくとも「ヤクザと家族」はそういう映画だったと思うので、「アバランチ」もそうなってもおかしくないな、という希望的観測を込めて見守っていきたいところです。

・画面の華やかさ、造り込みの丁寧さ、曲の良さ

 今回もカメラは今村さんなんですが、いや〜〜〜映像いいわ。地上波で見ていいクオリティなのかな。金払わせてほしい。
 夜の路地とか階段の戦闘シーンとかのやや暗いショットがもう映える映える。やや青みを帯びた画面の色彩もいつも通り素晴らしかった
 deleからこちら今村さんの作る画面にはもう惚れ込みしかないので、この映像美を見れるだけでも割と満足みたいなとこあるんですよね。ちなみに自分は一回目はリアタイできなかったのでFODで見たんですけど、配信でもちゃんと繊細な画質が再現されていておお〜と思いました。次回は大画面で見たいな。
 あとコレも詳しく調べたわけじゃないけどアクション絶対監修入ってますよね。狭い通路でなぎ倒すところもそうだけど室内で日本刀振り回してる相手とボールペンで戦うとこ、潜入捜査員みを感じて大変興奮しました。どういう状況下でも殺さない程度に反撃できなきゃ危なくなったときに逃げきれないもんな。そういう細かい立ち回りと身の捌きの鮮やかさ、メアリージュンさんと綾野さんの身体能力もさることながらコレを映像としてこのクオリティに仕上げてるのは明らかにプロの仕事だと思いました。最高。
 また劇伴もめちゃくちゃよかったし、OPは吐きそうなくらいかっこよかったし、最後に入ってくるUVERworldは期待したUVERworldだったわ。いやUVERはド世代なので。こういうダークでシリアスで結構救いのない世界観にめちゃくちゃ合致すると思うよ。フォロワーさんがノイタミナかって言っててめちゃくちゃ笑ったけどノイタミナかもしれません。

 とりあえず考えうる限りでの現時点の最良が詰まってる気がしたのであとはこの作品がここから何段階化けるか、何回情緒を揺さぶられるかがポイントになってくる気がしています。次回は転落死の真相を追うらしいです。政府が噛んでいる説があるとかいう。もうほぼドキュメントの様相を呈している気がするな。そういうの私は大好きだけど地上波で今のご時世にやっちゃうの最高だな。あと最高といえばゲストが磯村勇斗だったの真面目に最高すぎましたわ。さすがに叫びました。ありがとう磯村くん。ずーーーーーーっと綾野さん好きって言ってたもんな。わかる。綾野さんの隣で嬉しそうに笑ってる磯村くん見るだけで私の寿命も伸びる気がします。

 以上です。
 とりあえず次回も書きたいところではありますが確約はできるかわからん。暇な方は見てやってください。
 またよろしくどうぞ。では。

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