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「環境」でサッカー選手を育成する。①

こんばんは、森山 潤です。

優秀な選手・監督を輩出し続けるアルゼンチン。どのようにプロ選手・監督が生まれ、なぜプロサッカー選手を続けていくのか。

彼らの育つ環境と、その考え方に迫りたいと思います。サッカーの上手い、下手といった技術的な話は次回以降にして、今回は環境的要因に目を向けていきたいと思います。

選手数と確率

アルゼンチンのサッカー競技者人口は、約270万人(サッカー協会登録選手数 約30万人)。総人口が約4300万人なので、約6%がサッカーをプレーしていることになります。                      

プロサッカー選手数は、2018年のデータで約2700人

協会登録選手数が30万人なので100人に1人がプロ選手になれる計算です。

日本は、競技者人口が約480万人(サッカー協会登録選手数 約90万人)、総人口が1億2000万人だとすると約4%となります。 

プロサッカー選手数は約1700人

協会登録選手数が90万人なので500人に1人がプロ選手になれる計算です。(高卒で1000人に1人と言われています。)

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数字でみると、日本よりも競技人口比率が高く、また、100人に1人という高い確率でプロ選手になれる環境である事がわかります。

育成環境

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次に、育成環境を見て行きます。*(上の写真は14歳カテゴリー)

ここでは、各カテゴリーの保有選手数と試合数に目を向けます。

下の表は、アルゼンチン育成年代のカテゴリー分けです。本格的な育成は13歳から始まり、20歳まで続きます。 

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各カテゴリーの内訳

保有選手数:約20~25人

指導者数:監督1人、コーチ1人、フィジカルコーチ1人

年間リーグ戦:約25試合

アルゼンチンでは、20~25人の選手を2・3人の指導者が見る。そして年間25試合のリーグ戦に出場する。1部クラブの下部組織では13才からクラブバスで800km移動し、年間リーグを戦い帰ってくる。といったプロと同じような環境で育成しています。

「1人1人に指導が行き渡る人数」、「豊富な試合数」で経験を積み重ねる。このサイクルがうまく回っている環境が育成年代には必要です。

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戦力外通告がある環境

年間リーグ戦やトレーニングで目立った活躍が出来なかった選手は、戦力外となり新しいチームを探す事になります。戦力外通告は、毎年リーグ戦終盤の11月頃から行い、13歳の選手も例外ではありません。

一方、若い時から戦力外を意識させる事で過剰な競争が起り、勝利至上主義になる危険性があると言われています。

しかし、私はこの戦力外がある環境は、2つの大きなメリットがあると思っています。

① 戦力外とわかる事で、自分の適性レベルからやり直すことが出来る。例えば、1部リーグの実力に合わず試合に出られない。そうであれば2部リーグに移り、試合に出る環境を作る事が成長につながります。

② 勝利至上主義となる可能性はあるが、選手全員が競争相手なるトレーニングは自然と白熱し、個の強い選手が生まれやすい。

日本の育成年代では、試合に出られない選手達がサポーターのように、スタンドで声を出し応援している姿を見ることがあります。
部活動におけるスポーツの位置付け等 考慮すべき所はあると思いますが、日本サッカーが世界と肩を並べる為には、変えるべき環境なのかもしれません。


アルゼンチンの苦悩

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アルゼンチンでも優秀な選手を見つける事に苦労をしている。

マラドーナやリケルメなどを輩出した、1部クラブの育成責任者に話を聞いてきました。

責任者は、「アルゼンチンでは、角を曲がればそこそこの技術を持った選手に出会う事が出来る。しかし強烈な個性とハングリー精神を持った選手に出会う事はとても難しくなってきている」と前置きをしてから、「ストリートサッカーと呼ばれる、道や空き地で子供から大人までがボールを取り合い、ケンカや工夫を繰り返しながら技術を磨いてきた環境がなくなり、小さな頃からチームに所属し、指導者の下で与えられたトレーニングをこなしていく事に原因がある」と教えてくれました。

では、多くの素晴らしい選手を生み出したストリートサッカーが良いとわかっていながら、なぜその環境が無くなってしまったのか。

そこには、サッカーのビジネス化と深い関係がありそうです。

つづく。





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