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「環境」でサッカー選手を育成する。②

こんばんは、森山 潤です。3月末のリーグ戦開幕へ向けての準備が着々と進んで。。。。。。いないんですよね、実は。南米なら「想定内」、でも日本ではあり得ないようなハプニングの連続で、笑いながら頭を抱える日々です。アルゼンチン人ってホントに。。。

(気を取り直して)

さて、さっそく前回の続きからスタートしていきましょう!まずは、

*ぜひ前偏もお読みください。

サッカービジネスの低年齢化

です。日本ではJリーグのジュニアチームに所属できるのは主に4年生(10歳)から。Jリーグクラブで選ばれた子ども達がプロを意識し練習を始めるのがこの年齢です。では、アルゼンチンは何歳からだと思いますか?

なんと1年生(6歳)から。近所のサッカー教室に通いだす年齢じゃありませんよ。才能を見込まれた子どもが交通費を支給してもらうことを条件にクラブに入団し、早い子で6歳にしてプロを目指す競争に取り込まれていくのです。多くのアルゼンチン1部クラブが年間にスカウトする子どもは約6万人とも言われています。日本とアルゼンチンで、本格的なプロ育成のスタート地点として単純に4年の開きがあるんですね。

では、アルゼンチンではなぜ幼い子どもをスカウトするのでしょうか?

6歳で見出されるサッカー選手としての才能って、いったい何なのか?体格?技術?転んでも泣かないとか??

生まれて6年の子どもに将来のプロ選手の素質を見て、交通費を払ってまで才能を「予約」してしまうアルゼンチンのスカウティングシステム。さすが世界のサッカー強豪国!やることが違うなぁ、と思ったら大間違い。実は非常に単純な考えからなんです。それは。。。

**「取らなきゃ、取られる」

**

そうです。自分のチームで獲得しなければ、他のチームに取られてしまう。約束された才能で無くても、育てたプロ選手を移籍させることでクラブ運営が成り立っているアルゼンチンでは、将来的に活躍できる選手を早くから確保しなければ、クラブを存続させることが難しくなるのです。キラリと光る何かを感じたら即アタック!難しく考える前に行動を起こすのがアルゼンチン流なんですね。

もう一つの重要なファクターが、収益構造の違いです。主な営業収入の違いを見てみましょう。

<日本> 広告・入場料・物販
『おらが町にもJリーグ(ホームタウン活動)』がコンセプトでスタートしたため、どこまでいっても地域密着型思考が抜けません(良い意味で!)。確かに地元で育ったチーム/選手の活躍は嬉しいですよね。選手たちも地元のイベントに参加したり、奉仕活動を通して地元の人たちとの交流を大切にします。より身近な存在としてファンができ、試合に足を運んでくれるようになれば入場料という形で収入に直結するわけです。より多くの人に足を運んでもらい応援してもらう。チームとして試合に勝つことで恩返しをする。これがジャパニーズスタイルです。

<アルゼンチン> 広告・移籍金・放映権+クラブ会員会費
日本で大事にされている入場料収入が、無い。。。いえ、あるんです。入場料は確かに取るのですが、熱烈なサッカーファンが多いアルゼンチンでは、試合毎にいともたやすく観客が暴徒化すため、スタジアム周辺での暴動を避ける目的で数年前からアウェイサポーターの入場を禁じています(対戦カードによっては入場できる場合もあります)。なので入場料による収入は期待できない。そうなると必然的に、金の卵を発掘し(スカウティング)、大事に育て(育成)、一人前にしてから高く売る(移籍)ことで、安定したクラブ運営を維持することが出来ると考えているのです。

前項『環境で選手を育てる①』の最後でも触れた『多くの素晴らしい選手を生み出したストリートサッカーが良いと分かっていながら、その環境が無くなってしまったのはナゼなのか?』の答えとして、現在のアルゼンチンではスカウティングが低年齢化し、幼少期よりプロになるための指導を受けて育つ選手が多い為、ストリートサッカーを通じて自由な発想で台頭するマラドーナのような特別な選手が生まれにくい状態になっています。良い選手を早くから獲得するために、ダイヤの原石が自分の力で輝きだす瞬間を待っていられないというサッカービジネス界の苦悩も透けてみますね。

なぜ、アルゼンチンの育成環境は評価されるのか?

今回のタイトルでもある、サッカー選手を育成する「環境」としてなぜアルゼンチンなのか?ということを考えてみましょう。

前述の通り、ストリートサッカーの本場アルゼンチンでも、何かとシステマチックな指導で選手を育てているために自由な発想を持つ突出した選手というのが出づらくなっています。とはいえ、アルゼンチンが世界有数のプロ選手輸出国であり続けていることは揺るがない事実なのです。

2015年 Euroamericas Sport Marketing が配信したレポートによると、2015年1月~9月の移籍期間で13,995人 ラテンアメリカの選手が国際間移籍をしています。 各国を数字で見ると以下の通りです。

1.アルゼンチン:4025人
2.ブラジル:3465人
3.メキシコ:1766人
4.コロンビア:1223人

日本のJリーガー(J1,J2,J3)が約1700人なので、アルゼンチン人選手の移籍数の多さがわかると思います。

もともとヨーロッパの移民から始まった国なので、ヨーロッパ移籍で苦労する言葉や文化がなじみやすいのが理由の1つです。そして、彼らはヨーロッパ移籍をする前に、まずは、自国の育成カテゴリーを突破しなければなりません。この育成カテゴリー突破するというのが、プロになるよりも難しいと言われます。

なぜなら、クラブは、毎年6万人のスカウティングをし、入団セレクションでは各年代600人以上がクラブ入団を目指しアピールしています。そんな彼らと比べられるだけではなく、クラブ内での生存競争もあります。これが毎年のことだと考えるとどうでしょう。育成カテゴリーを突破した選手がどれだけすごいのかがわかりますね。

つまり、この育成カテゴリーを持つ環境こそが他国との差別化になり、他国よりも数多くのプロ選手を輩出している一因だと言えると思います。

「環境」だけで選手は育つのか。

では、その育成環境に日本人選手が入るだけで成長するのか?その答えは、YES!と言いたいところなのですが、そうとばかりは言えません。

今までに300人以上、日本人留学生にたずさわってみると、うまく順応できる選手と、できない選手を見てきました。どうやらそこには、ある能力が関係しているようです。

言葉、文化の違い、生活環境の違い、どれも本当に苦労します。サッカーでも能力不足で悔しい思いもいっぱいすることになるでしょう。その中で、順応できる選手は、仲間・監督と話をする為に、言葉を必死で勉強したり、文化の違いを知る為に、彼らを理解しようとします。それはお互いの信頼関係を築こうとする力、「コミュニケーション能力」が高い選手なのです。

一方、そうでない選手は、出来ない事や、うまくいかない事は他人が自分を理解してくれないからと考えてしまいます。1回この考え方を持ってしまうと、そこからリカバーすることはとても難しくなります。自分の力がたりないからではなく、自分を支える周りの力が足りない。だから、プロになれなかったと考えています。

まとめます。環境だけで選手が育成出来るかと聞かれれば、それはNOとなります。そんなに簡単であれば、きっと日本でもプロデビューできるような逸材ですね。

環境を利用して、選手を育成出来るかと聞かれれば、YESとなります。コミュニケーション能力が高い日本人選手が、アルゼンチンの育成環境で育つと、日本よりも成長速度を速める事が出来ます。しかしそれでもプロ選手になれるのは簡単ではないでしょう。

そこで、日本人選手の育成を目的とした無双Argentinaというクラブを設立しました。日本人が有利となるクラブがあればプロ選手になれる可能性を変えられるかもしれません。

プロとは何か?

プロサッカー選手やプロ監督、かれらの何をプロとして評価し、プロであり続けられるのか。

とにかく彼らは負けず嫌いです。例えば、テニスで遊んでいてライン上?かわからない場所でバウンドし、ジャッジに困るばあい日本だと「じゃあ、ノーカウントにしてもう1回」となります。でもアルゼンチン人は、入っていても絶対に入っていないと言い張り、ノーカウントでもう1回とはなりません。(全てのアルゼンチン人ではない事を祈ります。)

一般人でもそうなので、サッカーを職業とするプロ選手や監督は、負けないために、自分の時間を圧倒的にトレーニングに落とし込みます。

「人間の生き方は、仕事に取り組む姿勢と同じにしかなり得ない。仕事で気高さを持った人間はプライベートでも気高く、苛立っている人間はどんなときも苛立ち、働き者は働き者、裏切り者は裏切り者、エゴイストはエゴイスト、そして前に進んでいく人間はどんなときも前進を止めないんだ。」シメオネ監督の言葉です。

失敗、成功はあるにせよ、仕事に全てをかけた取り組む姿勢が、プロであり続けられる唯一の方法であると、アルゼンチンでトップチームコーチをしていた時に教えられました。

今後、日本サッカーが発展するためには、現状を変える必要があると思っています。しかし、日本の育成年代の試合環境や組織を変えていくには相当の長い時間がかかってしまいます。そうであれば、海外で日本人選手や監督・スタッフを育成するといった違ったアプローチが面白いと思います。

アルゼンチンリーグ初、日本人が経営するサッカークラブ「無双Argentina C.F.」の挑戦をぜひ応援してください。

宜しくおねがいします。 

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