junmurata / 村田純
6月は中国へ長期出張。現地視察と工事開始、新プロジェクト。
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6月は中国へ長期出張。現地視察と工事開始、新プロジェクト。

junmurata / 村田純

先日、とあるメディアの知人に中国の話を少ししたら、面白いのでブログ書いてみては?とのススメで不定期で書くことにしました。あと、年を重ねたときに、過去の自分が何をしていたか思い返すためにmemoとして残すために。すでに、この2,3年前のことが思い出せない状況に危機感を覚え、雑文ではありますが。

ここ数年、中国での設計活動がたまにある。なぜ中国かというと、日本から近いのと、学生のころから海外で設計したいなと漠然と思っていたから。あと、スタッフ時代に展覧会を開催するために北京を訪れた経験もあること。結局、結婚した相手も中国の人でした。ということで、何かと縁があるので、わりと身近に感じますが、中国大好きというわけでもありません。むしろ苦手かもしれませんが、50/50という感じで日本と中国の建築・インテリアの設計をしています。ちなみに中国語はほぼ話せないので、出張には妻が帯同しています。


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【北京へ】

来月は関空から天津入りし、翌日は陸路で北京へ。実に10年ぶりの北京だ。なぜ天津入りかというと、MVRDVの図書館を訪れようかなと思い、そして何よりも北京行きのチケットがバカ高い。天津-北京は列車で30分、800円で行ける。

前回の北京ではOMA設計によるCCTV本社屋が完成した頃。H&deMのスタジアムや建外SOHO(山本理顕)や三里屯(隈研吾)も見学した記憶があるが、さらに進化を遂げているに違いない。ZAHAの建築に加え、MADの曲面を持つ建築やNeri&Huのインテリアが楽しみの一つ。


北京では、新しいカフェ&ギャラリーのインテリアの現場視察予定。不動産会社社長のMさんは、オープンハウスの時に知り合った長年の友人で、これまでに何度もお仕事をしてきた。敷地はZAHAが設計した銀河SOHOというショッピングモール内のテナントらしい。かなり人通りが多く、カフェに加えて、日本向けの不動産投資やツアーのガイドを行う商談用ギャラリーが要求されている。


昨年は、上海で隈研吾氏が設計された商業複合施設で2店舗(懐石料理店とカフェ)を設計させていただき、最近はスター建築家の空間に触れる機会が多い。


北京では、妻の友人に会ったり、マッサージに行ったりする予定。ベタではあるが故宮や胡同にも行ってみようと思う。


【浙江省舟山へ】

その後、陸路で南へ行く予定。6時間の高速列車。行先は浙江省寧波。数年前にプリツカー賞を受賞した中国人建築家 王樹が設計した寧波博物館などの建築がある。ここを訪れるのも今回の出張の楽しみの一つ。

そこから車で1時間半、舟山という海沿いの都市。今年1月にも訪れたが、とにかくシーフードが美味い。ボクが滞在したエリアは、新しくできた町でショッピングモールや別荘が立ち並び、中国が持つ不潔なイメージは全くない街。数年前に行ったドバイにも似た感じ。用意していただいたホテルはサービスも良く、50㎡ほどの大きさのオーシャンビュールームだった。


この舟山では、とある海産物貿易会社社長のYさんのご自宅を設計予定。(日本でもこの舟山の海域で獲れた魚介類が日本に主出されているとのこと。)すでに外側の箱はできている。いわゆるヨーロッパ風の外観を持つ豪邸(地上二階+地下1階)で、シンプルな木質インテリアをデザインする予定。夏は湿気が多く、冬は寒いらしいので断熱を重視してほしいと。クライアントご夫婦、高齢のお母さま、アメリカに留学中の娘さんも帰国予定で、この4人(+孫)が同居し、地下にはトレーニング室と茶室も設計予定。前面には300㎡ほどの大きな庭を持つ。当然この庭のデザインも任され、いわゆる枯山水的な庭園が求められている。



【Made in JAPAN】

中国では分譲された住宅はインテリアが未施工のままで、購入後はデザイナーや建築家にデザインを任せることが多い。富裕層の中には、外国人建築家やデザイナーに依頼することも珍しくない。今回のクライアントはかなりの親日家で、この4月にも大阪に来られていた。ちょうど「令和」になった瞬間、彼を連れて日本製の家具やキッチンを扱うショールームを案内していた。社長なのに民泊に宿泊され、格安チケットで来たそう。物腰も柔らかく、長身でユーモアにあふれている。社長自身は京都や庭園が大好きだそうだが、奥様にはデザインに関しては一切口を出させない亭主関白な部分も見え隠れする。ヨーロッパ調のデザインがお好きな奥様は、ボクが提示する和テイストのデザインを気に入っていただけるのか一抹の不安が残る。



洗面台や照明器具、タイルや壁紙などの建材にもこだわりを持っており、品質の良さで、その全てをMADE IN JAPANで統一したいらしい。中国でも日本製品は売っているみたいだが、値段が2倍から3倍以上とのこと。輸送費を考えても、相当数を扱う場合は日本から送ったほうが安いらしい。電圧が違うから日本製品が使えないんじゃないかという疑問もあったが、このクライアントはクレバー。中国の220Vとは別に100Vの電圧も導入することをすでに計画済み。(※変圧器をかますと、故障しやすいらしい。)

ということで、再来月にはそれら家具や日本製品をコンテナに詰め込んで、大型船で日本から現地に運ぶ予定。MADE IN JAPANブランドの家具や電化製品の人気は中国では未だに高く、デザインにおいても人気が高まってきている。中国各地にこういったジャパニーズ・デザイン需要は潜在しているはずなので、日本の若手デザイナーにも勝機があるのでは。


【中国での仕事】

出張時何度も行くのが、建材市場といわれるエリア。一つのビルに照明・、家具・フローリング・石材など様々な小売店(代理店)やショールームが100以上立ち並ぶ。そういうビルが密集しているエリアがある。国産だけでなく、日本・ヨーロッパ・アメリカなど各有名ブランドがしのぎを削っている。おそらく、量だけ言うと日本を凌ぐ。(もちろん、悪質なものも数多く存在する。)トップブランドだけでなく、中国製でも良質で面白いものがある。また、植栽や岩・盆栽・砂利を販売しているエリアも、どんだけデカいねん!というぐらいのエリアに数千枚・数万種類の見本が中国全土・世界各国から集まる。

中国で仕事をし始めて、何よりも、クライアントの横のつながりが強いことに驚いた。前述の舟山のプロジェクトもそうである。(詳しく言うと、上海の懐石料理店の左官を担当した会社の社長からのご紹介)

彼ら、企業のトップや投資家たちは、いい意味で競い合いながらも、頻繁に情報交換を行いながら協力している。ライバル関係以上に、どこか兄弟としての関係も自然と築かれている。

「重慶のアイツは最近日本人の設計で自宅を設計したらしいよ。」と噂がなれば、「今度上海で自宅を設計するからオレはもっといい設計をしてほしい。」と依頼が舞い込んできたり、

「安徽省でオレは日本人にSPAの設計を頼んでるぞ。」と自慢すると、「おれは山西省でホテルを作りたいから、そのデザイナーを紹介してくれ!」と突然、中国へ出張することになる。

少しでも遅れを取らず、周りについて行こう、そして助けてあげよう。あわよくば抜け駆けしてやろう、でも何かあったら頼ってほしい。様々な思考が彼らの脳内には入り乱れている。「中国人は中国人を信用しない」という全く別の思想も同時に存在するようだ。非常に複雑だが、面白い。

デザインを受注するこちら側としても、こういう独特の人脈に触れながら、いいサイクルでお仕事させてもらうのはありがたいし勉強になる。ただし裏を返せば、一度失敗すると一気に悪いウワサが流れてしまい、干されてしまうんじゃないかと日々、相当な緊張感を持って仕事に取り組まなければならない。今のところ、リピーターの方も何人かいらっしゃるので、非常に助けられている。

舟山の滞在は3日ほど。一つめのプロジェクトも着工しないうちに、同じ舟山で別のクライアントを紹介したいとの申し出を受けている。とりあえず、キャパオーバーにならない限り、そして素性のわからない怪しい人でない限り、大小関係なくどんな仕事でも受けるというのが僕のスタンスである。



【上海へ】

最終日、クライアントに会いに上海に行く予定だ。これまでに二度(彼の自宅のインテリアと店舗のファサードデザイン)お仕事を受けた上海のGさんは、もともと何かのWEB MAGAZINEを見て依頼してきた方で、年齢も近く日本語もできる。もともとはアメリカで生まれ育ったために、英語が堪能というだけでなく、思考もスマートでジェントルマンであり、視野が広い。話していても、品の良い人生観が体から滲み出ている。

今回は、新しい店舗をまた作りたいということらしい。タイミングよく、今回の出張が決まったときにそういう連絡があったので、予定を一日延ばして上海にも寄ることにした。出張時は日ごろの感謝といろいろなケアも含めて、妻の出身地である重慶の四川料理を食べることがルーティンとして決定している。日頃、孔雀という店だが、四川山椒が効いたタンタン麺が格別に美味い。辛い物が苦手なボクでもおいしく食すことができる。(ちなみに、八角とパクチーとシイタケはどうしても受け付けられない。)


【AlipayとUBER的なヤツ】

中国でビックリすることの一つに、アリペイが挙げられる。中国では、このアリペイとかwechatという超便利なツールが欠かせない。電子マネー決済、日本でいうLINE、とかPAYPAYといったところだろうか。これらが日常の様々な局面でサポートしてくれる。UBERと同様の配車サービス、小売店からレストラン・チケットの支払いなど、すべて携帯で行える。日本も便利になってきたが、その比じゃない。中国全土で普及し、どこでもどんな局面でも使える。中国出張の際、現金支払いをすることは、まずない。2014年ごろから中国に出張していたころは、まだまだといった印象もあったが、現在はほぼ完璧に近いぐらい普及し尽くしている。これを使って、様々な食事をデリバリーしてもらうのが超便利。

出張期間中、昼間はそれこそ現場や打ち合わせで外に出ていることが多い。クタクタになってホテルに戻るのだが、そこからまた外に出て晩飯を食べにに行く気力も体力もない。かといってホテルの高いレストランにも行く気にはならない。そんなとき便利なのが、デリバリーアプリ。いわゆるUBER eatsと同じようなものだが、これもアリペイで支払えるし、普及率が半端ない。上海だけでなく、(よほどの田舎町じゃなければ)すでに全国的に普及しているのではないだろうか。ホテルの部屋で注文し、シャワーを浴びて出てきたらロビー、場合によっては部屋まで届けてくれる。中華をはじめイタリアン・ファーストフード・和食・デザート・ドリンクなどメニューは様々で、スーパーでやコンビニで頼んだものを買い物もしてくれるサービスさえある。(手数料はごく少額。)

あと、妻の好み(主に四川料理や辛いもの)とボクの好みが大きくかけ離れているので、それは中国では特に顕著なので、それぞれが好きなものを注文できるのも、このデリバリーサービスは有効である。

昨年設計した店舗でも、実店舗で食事をするダイニングスペースだけでなく、このデリバリーエリアも重要視することが求められた。このデリバリーカウンターは多くの店舗で設置されている。常に10人から20人の配達人が途切れることなく集まり、配達先に行っては戻り、また注文をwebから受けては注文者へと商品を届ける。とにかく、このデリバリーでの売り上げのほうが店舗での食事の売り上げをはるかに上回るらしい。(忙しすぎて、店舗拡大・人員補充のため、新店舗開店で今回もボクに設計依頼という運びになったようだ。)町中の道路にはこのデリバリーサービスを提供する会社のロゴが記されたバイクで溢れかえっている。こういう超便利な中国の生活に慣れると、帰国し大阪の片田舎に戻ったとたん、安堵すると同時に一気に不便な日常にさらされる。我が家はUBERもなければ飲食店も少ない僻地なので。日本では、なかなか定着しないのはコストと様々なレギュレーションが厳しすぎるのであろう。


もう一つ便利なのがTaobao、WECHAT。

日本の楽天とかAmazon。とにかく安く早くいろいろなものが手に入るネットショッピング。建材・照明器具や家具も手に入る。ボクは中国には事務所を持っていませんので、サンプルでタイルや照明器具・家具なんかを出張前に注文しておくとホテルまで届けてくれる。滞在はいつもだいたい同じホテルなので、フロントの人には少し迷惑がられる。「あなたはいつも大量の荷物を注文してるわね。」的な感じで。スーツケースとともに10個以上の箱を持ち、部屋に入ることになるわけですが、それでよさそうな製品は実際に現地で使ったりする。

妻もハンドメイドでピアスやアクセサリーを作っているので、中国でパーツなどを買って日本に持ち帰ったりもする。日本よりも格段に安くバリエーションが多いことは、建築もこういう雑貨も同じ。このタオバオ、実は中国で設計の仕事を獲得するときに多用していた。僕の場合売る商品はないので、サービスを売っていました。”㎡単価〇〇人民元で設計します”という文言に加えて、今までの作品とともに、CGや設計図のサンプルをWEBにアップしていた。日本人デザイナーというだけで、ローカルなデザイナーより設計料が高くても一定の理解はしてくれ、依頼していただき実現したプロジェクトは10件にも満たなかったが、問い合わせの数は結構あった。設計料が高い!とか、現場には月に何回来てくれるのか?とかいろいろ厳しい意見やオーダーもあったが、なかなか地道で面白い経験でした。(現在は、行っておりません。)

現在有効なのは、WECHATというチャットツールで自身のページを作り、宣伝することですね。おそらく日本の雑誌に掲載されるよりも反響は大きいかと。中国のネットツールを介して、(ボクの場合は、)仕事につながる可能性が今のところ高いですね。


上海では、数年前まで一緒に大学の研究室で教えていた学生が上海で独立しているので、彼らのオフィスに久しぶりに遊びに行こうと思っている。競争の激しい上海で、着実に良質のプロジェクトを獲得し、実現している設計ユニットである。スタッフも多く、オフィスも素晴らしい。これまで、彼らに学び、お手本にさせていただいたことは多く、中国で活動する上で非常に参考になっている。それは建築やインテリアだけにとどまらず、多岐にわたる。クライアントの皆さまや工事関係者にも同じように感謝したい。おそらく、日本だけで活動していては経験できないこと、知りえないことをこの数年間で吸収することができているハズ。

とにかく、今年も中国出張は月に1~2回ぐらい決まっている。一回の出張では、現地視察・監理を行い新しい建築やインテリアに触れるようにしている。せっかく行くのだから、交通費と時間を浮かせるために、いくつかの都市を回るようにしている。今回は、天津ー北京ー舟山ー上海。その合間を縫って、数年ぶりにヨーロッパにも遊びに行けたらな。


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junmurata / 村田純
大阪で建築・インテリアの設計をしています。中国でも活動。■ https://www.junmurata.com/■プロフィールjam.主宰。1976年大阪生まれ。1999年近畿大学工学部卒業。設計事務所を経て、2012年独立 jam.設立