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ベビーリーフがくれた、豊かさ。

アパートの小さな庭に、数年前から植物を育てている。

私は家庭菜園に憧れていた。3年前、「家で育てた野菜を食べるって、最高じゃない?」という気持ちで、まずは簡単に育てられるベビーリーフの種をまくことにした。

毎朝、水やりをして「早く芽が出ないかなー」なんて言って。芽が出たら、「わー!!やっと芽が出たよー!」と夫に報告したりして。ベビーリーフの成長が楽しみの一つになっていた。

ベビーリーフの成長はあっという間で、「もう収穫したっていいんじゃない?」と言うくらいにまで育ったが、私はここまで一生懸命に生きてきたベビーリーフを刃物で刈り取るなんて残酷な気がした。

生命あるものを頂いて私たちは生きている。そう、生きるとは残酷なものなのだ。だからこそ、生かされた私たちは精一杯生きる必要があるのだ、なんて哲学的なことを考えていたが、私はベビーリーフを前にして

「ベビーリーフくん、私は君たちを刈り取って食べることは出来ないのだよ……」と、ベビーリーフの成長を見守ることにした。

すると、どうだろう。細くて長い茎がすーっと伸びて、黄色いかわいい花が咲いた。ベビーリーフの花。  

「刈り取らないでくれて、ありがとう。お礼に花を咲かせましょう」

ベビーリーフたちの声が優しい風に吹かれてそっと聞こえた。

私は、お腹いっぱいじゃなくて、心が優しさでいっぱいになった。

ゆたかさ、ってこういうことなんじゃないかな。

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