ジョルジャ・スミス@豊洲PIT
2024年10月23日(水)
豊洲PITで、ジョルジャ・スミス。
2018年のサマソニ出演以来、6年振り。しかも単独での来日公演はこれが初。ようやくでしたね。(僕を含めて)待ちわびたという人は多かったはず。
サマソニ出演時は21歳だったジョルジャも、現在27歳。21歳のときからある種の落ち着きというか貫禄めいたものがあったけど、同時に年齢相応のかわいらしさもあって、それは今もあり続けてるなぁ……なんてことを、6年前に取材で会い、そして今回のライブを観ていて思ったりした。
↓こちらが6年前にしたインタビュー。
読み返して思い出したけど、サマソニでは彼女と同世代と思しき若い女の子たちがものすごく熱狂していたのが印象的だった。日本ではその音楽性からけっこう先鋭的でアート性要素の高い音楽やってる人というイメージ持ってる人も少なくないと思うけど、若い女の子たちが親しみと憧れを同時に抱く、我々が考えるよりもジョルジャは彼女たちにとって近い存在なんだなと、そんなふうに思ったものだ。
今回の単独公演における観客の熱狂ぶりも同様。ジョルジャが年齢を重ねた分だけ観客の年齢層も少しだけあがっていたけど、でもやっぱり彼女と同世代かそれより下の女性客が多かったように思う(ARIWAらASUNDのメンバーも近くで観ていて、やっぱこのへんの世代に好かれるシンガーなんだなと思ったり)。
で、今回のライブはどうだったか。まずオープナーの「Try Me」で、ありゃっ?となった。熱狂的な声援で迎えられてステージに登場したジョルジャのヴォーカルは、しかしバンドの音よりもずいぶん小さかったのだ。そもそもビヨンセやらアデルやらのディーバな人たちのように豊かな声量でどーんと歌い上げるタイプではないけれど、それにしても小さい。それ、彼女の声が出ていなかったのではなく、音響バランスが悪かったからだということは、あとあと徐々にそれが調整されていったのでわかったけれど。
2曲目でもう出世曲「Blue Lights」をやったから、おおー!っとなりもしたのだけど、それでもまだこのあたりは歌が小さかった。この曲は自分としてはもっとあとのほうのここぞという場面で聴きたかった。
バンドは大所帯で、コーラスも3人。前回来日時はエズラ・コレクティヴのメンバーがふたりだったか入っていたが、今回のメンバーがどういう人たちだったのかはちょっとわからず。鍵盤のひとりがアマネ・スガナミさんだったことは確認できたけど。その鍵盤音と、それからドラムとパーカッションが、トライバルなリズムを強調した曲でとりわけ効いていた。それとコーラス。3人ともめちゃ上手くて、序盤はジョルジャの声が小さかった故に、コーラス3人の声の出のほうが際立って聴こえたほど。とりわけ男性の方が、ソロでも活動してるんじゃないかというほどに味のあるコーラスだった。
ライブはじっくり聴かせるスロー曲ばかりが続いていった。ミディアム~スローの曲を歌うジョルジャは、尊敬しているシャーデー・アデュを見習ったと思しき雰囲気たっぷりの歌唱法とも言えるのだけど、堂々としたシャーデー・アデュに比べたらだいぶ繊細で、それだけで通すにはまだ経験不足かなと感じられた。もちろん曲ごとに演奏の変化(それこそトライバルなリズムを入れ込んだり)もあるのだが、作品を聴きこまずに観に来た人には、だから少々単調に感じられたかもしれない。実際、自分の前にいた男性は明らかに退屈していて、途中でビール買いに行ったりカノジョに喋りかけたりと落ち着きがなかった。僕でさえも、このへんで少しアップめの曲を入れてほしいな、もう少し緩急があればなと正直思ったりもした。がしかし、ほぼスガナミさんの鍵盤だけでじっくり歌われたスロー曲(タイトル忘れました)にはおもいきり引き込まれた。あれは絶品だったし、彼女の声の魅力、歌唱の魅力が大いに発揮されていたと思う。あと、昨年の2ndアルバムばかりというわけじゃなく、思っていた以上に1stアルバムの曲を歌ってくれたのも自分的には嬉しかった。
ミディアム~スロー系の曲ばかりでライブは長く進んでいったのだが、終盤で大きくムード・チェンジした。その号令の役割を果たしたのがハウス的な新曲の「High」。ここで、キター! 待ってました! と自分はなった。
それから1stアルバムから代表曲の「Teenage Fantasy」を挿みはしたが(当然のことながらこの曲で観客みんながシンガロング!)、そのあとの「Be Honest」から最後まではアップめ曲の連打。とりわけ凄まじい盛り上がりを生んだのが今じゃ懐かしくもある「On My Mind」だ。もう、「High」にも増しての「キターっ!!」感。UKガラージ好きでこれで盛り上がらない人はいないっしょ、っていう。その勢いをキープしたまま最後は「Little Things」。去年の最高部類の1曲で、エズラ・コレクティヴもカバーしていたそれだ。 アンコールはなく、締めがその「Little Things」となったのだが、とにかく「High」からそこまでの流れが最高すぎて、アンコールなくとも文句なし。結局のところこの後半5曲の流れで完全に気持ちをもっていかれてしまった。実際彼女のヴォーカルも後半にきてグッと艶が増したようにも感じられた。
というわけで、ミディアム~スローを長く聴かせて最後にアップテンポのダンス曲をまとめるというかなり思い切った構成であり、これをやれる度胸もなかなかのものだよなと感じた日本初の単独公演。アルバムは去年出たばっかだけど、ここからの展開次第…というか楽曲次第で、彼女はもっともっと上へ行くアーティストだと実感できた。