記事に「#ネタバレ」タグがついています
記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
見出し画像

【75.水曜映画れびゅ~】『シン・ウルトラマン』~庵野秀明版『2001年宇宙の旅』?~

『シン・ウルトラマン』は、現在公開中の映画。『エヴァンゲリオン』の総監督である庵野秀明が企画・脚本・総監修等を務め、『シン・ゴジラ』(2016)にて庵野監督とともに共同監督を務めた樋口真嗣が監督を務めています。

あらすじ

「禍威獣(カイジュウ)」と呼ばれる謎の巨大生物が次々と現れ、その存在が日常になった日本。通常兵器が通じない禍威獣に対応するため、政府はスペシャリストを集めて「禍威獣特設対策室専従班」=通称「禍特対(カトクタイ)」を設立。班長の田村君男、作戦立案担当官の神永新二ら禍特対のメンバーが日々任務にあたっていた。そんなある時、大気圏外から銀色の巨人が突如出現。巨人対策のため禍特対には新たに分析官の浅見弘子が配属され、神永とバディを組むことになる。

映画.comより一部抜粋

エヴァ好きも、ウルトラマンファンも、たまんないっ!!

昨年堂々の完結を迎えた『エヴァンゲリオン』シリーズを世に送り出した庵野秀明率いるスタジオカラー製作で、『シン・ゴジラ』以来6年ぶりとなる、往年の特撮を改編した『シン』シリーズ第2弾『シン・ウルトラマン』。

昨年の公開延期を経て、今月13日に待望の公開となりました。

公開前から話題沸騰で、実際に初週の観客動員数は『シン・ゴジラ』超えを記録し、現時点での今年最大のヒット作ともなっています。

私も、先日劇場にて鑑賞してきました。

『シン・ゴジラ』同様に世界観を現代社会に置き換え、ウルトラマンという虚構と、日本の政治システムという現実を融合させたストーリー性や、エヴァ感全開の中毒性のあるカメラ割など…。ファンにはたまらない、庵野秀明らしさが存分に感じられる一作に、完全に魅了されました。

また、大幅に脚色しつつも、『ウルトラマン』シリーズへのリスペクトを払ったキャラクター構築は、往年のファンも大満足ではないでしょうか。事実私も、幼い時はウルトラマンっ子だったので、知ってる怪獣や星人が出てきたときは鳥肌もんでした(笑)。

『2001年宇宙の旅』

そんな『シン・ウルトラマン』ですが、そのストーリー展開は、私にある名作映画を彷彿とさせました。

それは、映画界最高の監督と謳われるスタンリー・キューブリックによる『2001年宇宙の旅』(1968)です。

大名作として名高いこの作品。ただ、実際に観たことのある方はお分かりだろうと思いますが、正直ストーリーは訳わかんないんですよね。それもそのはずで、キューブリックが大事なところをカットしまくった故に、史上最も難解な映画とも称されています。

この解読に関しては、映画評論家の町山智弘さんがWOWOWのYouTubeチャンネルにて1時間半ほど解説をしてくださっており、私もこの解説を観て、この映画のストーリーを理解することができました。

で、そのストーリーとは端的に言えば、人類の繫栄というのは異星人の出助けによって行われていたという内容。しかし人類は、その発展の過程で兵器開発など破滅の道に突き進もうとしました。それを見かねた異星人は、一人の宇宙飛行士を呼び出し、人間をもう一段階上の新しい人類に進化させて地球を救おうとする、というにが話の大筋です。

※詳しくは上に貼った町山さんの解説を観ていただければ、と思います。

庵野秀明と、『2001年宇宙の旅』

そして、庵野監督の作品というのは、この『2001年宇宙の旅』に多大な影響を受けていると、多々指摘されます。

例えば『エヴァンゲリオン』。
劇中で度々出てくる、碇ゲンドウが画策する人類補完計画とは、使徒(=異星人)と人類を超越させることで、人類をより高次元の生命体へと進化させるというもの。これは、『2001年宇宙の旅』で用いられた超人理論・キリスト教進化論をベースにしていると考えられ、実際に旧劇場版では人間は綾波レイの姿をした使徒と接触し、L.C.L.化した精霊となり、新たな生命体へとなりました。

そして本作『シン・ウルトラマン』も、『2001年宇宙の旅』のストーリーが投影されている箇所があります。

それが、山本耕史演じる異星人メフィラスの場面から。

メフィラスは、人類の進歩の何十歩も先をいく武器技術を、日本政府に売り込み、世界の技術的な発展に対する貢献に寄与しようとします。しかし一方で、その技術は人間同士の争いの火種ともなり、人類破滅へのきっかけにもなる代物でした。

それを阻止するために、立ち上がったウルトラマン。
地球という美しい惑星を守るために、むやみな武器開発ではなく、正しい人類の発展に導くため、人類を信じてある行動に出ます。

こういった、異星人による人類の進歩への貢献と、戦争への発展、そして人類の破滅を救うために再び手を差し伸べる異星人の介入までが、実に『2001年宇宙の旅』と酷似しているんですね。

庵野監督自身は言及していませんが、『エヴァンゲリオン』や本作を観る限り、『2001年宇宙の旅』は、おそらく彼の原点に近い作品だと思います。

そして、今回の『シン・ウルトラマン』は、『シン・ゴジラ』同様の、日本特撮の原点回帰という意味合いがあるとは思いますが、裏テーマとして庵野監督は、「庵野秀明版『2001年宇宙の旅』」を作りたかったんじゃないかな、なんて私は思ってしまいました。

次なるは、『シン・仮面ライダー』

ということで今回は、現在公開中の話題作『シン・ウルトラマン』と、映画史に残る大名作『2001年宇宙の旅』の共通点を探ってみました。

そして、スタジオカラーが送る『シン』シリーズは、まだまだ終わりません。『シン・ウルトラマン』の公開日に、庵野秀明監督・脚本の『シン・仮面ライダー』の特報映像が、YouTube上で公開されました!

これまでの『シン・ゴジラ』、『シン・ウルトラマン』にはない、哀愁漂う映像。主演の池松壮亮と、ヒロインの浜辺美波との恋愛模様も予感させる部分もあり、また一味違った印象を持ちます。

公開は、2023年3月とのこと。
庵野監督あるあるとして公開日が延期される可能性も大ですが、今からでも待ち遠しいですっ!


前回記事と、次回記事

前回投稿した記事はこちらから!

これまでの【水曜映画れびゅ~】の記事はこちらから!

来週は、2021年カンヌ国際映画祭パルムドール受賞作の激ヤバ映画"Titane"TITANE/チタンを紹介させていただきます。
お楽しみに!


この記事が参加している募集

映画感想文