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【164.水曜映画れびゅ~】『化け猫あんずちゃん』~森山未來がおっさん化け猫に!~

『化け猫あんずちゃん』は、先月から公開されているアニメ映画。

日仏共同制作により「ロトスコープ」という手法で作られた作品です。

あらすじ

雷の鳴る豪雨の中。お寺の和尚さんは段ボールの中で鳴いている子猫をみつける。その子猫は「あんず」と名付けられ、それは大切に育てられた。
時は流れ、おかしなことにあんずちゃんはいつしか人間の言葉を話し、人間のように暮らす「化け猫」になっていた。
移動手段は原付。お仕事は按摩のアルバイト。現在37歳。そんなあんずちゃんの元へ、親子ゲンカの末ずっと行方知れずだった和尚さんの息子・哲也が11歳の娘「かりん」を連れて帰ってくる。しかしまた和尚さんとケンカし、彼女を置いて去ってしまう。
大人の前ではいつもとっても“いい子”のかりんだが、お世話を頼まれたあんずちゃんは、猫かぶりだと知り、次第にめんどくさくなっていく。
かりんは哲也が別れ際に言った「母さんの命日に戻ってくるから」という言葉を信じて待ち続けるも、一向に帰ってこない。母親のお墓に手を合わせたいというささやかな望みさえ叶わないかりんは、あんずにお願いをする。「母さんに会わせて」
たった一つの願いから、地獄をも巻き込んだ土俵際の逃走劇が始まるんだニャ。

公式サイトより

11歳の少女と、37歳の化け猫

数年前に母を亡くした11歳の少女かりんは、、父親の哲也とともに、東京から哲也の実家のある田舎町にやってくる。若い頃に家を飛び出したっきりだった哲也だが、借金取りに追われて仕方なく里帰りしたのだ。そんな体たらくに哲也の父は大激怒。結局哲也は「母親の命日までには必ず戻ってくる」と言い残し、借金を片付けるためにかりんを残して東京に帰っていった。

残されたかりんだったが、外面はよく、哲也の父からは可愛がられた。しかし、そんなかりんの本性を見抜く存在がいた。

それは、寺に住みつく化け猫のあんずちゃん。あんずちゃんは、37歳。フツーに人間の言葉を話し、二足歩行で原付にも乗る。あんずちゃんは、かりんのお世話役を言いつけられた。一方でおっさん臭いあんずちゃんをかりんは毛嫌いし、早く東京に帰りたかった。しかし待てど暮らせど哲也は帰ってこず、ついに母親の命日を迎えた。

かりんは、お目付け役のあんずちゃんとともに東京に行って哲也を呼び戻すことになった。しかし哲也は見つからない。しかも、料金滞納で母親のお骨のある納骨堂にさえも入れなかった。

かりんは「母さんに会いたい」と強く願っていた。不可能に思える願いだったが、化け猫のあんずちゃんはかりんの気持ちに応えようとする。

ロトスコープ

いましろ たかしの漫画が原作の本作。

今回のアニメ映画化に際して用いられた手法は「ロトスコープ」です。

ロトスコープとは…
実際に撮影した映像をトレースしてアニメーションを制作する手法。
実写の動きをトレースしているために大変精巧な動きを見せることが出来る。

デジタルハリウッドより一部改編

まず実写でを撮ってから、その画を基にアニメーションへと変えていくという手法をロトスコープと言うらしいです。「アバター」などで用いたれている、役者の動きに合わせてCGでアニメーションを付け足していくモーションキャプチャとは異なるものです。

1915年に確立された手法とその歴史は古いです。ただ現在では、実写を撮って、さらにそこから1コマずつアニメーションにしていくという手間がハードルとなり、あまり用いられてはいません。

しかし今回は芝居のリアルさにこだわるために、ロトスコープでの制作を敢行。音声収録も兼ねた実写撮影には『リンダ・リンダ・リンダ』(2005)や『カラオケ行こ!』(2024)の山下敦弘が監督を、アニメ制作には気鋭のクリエイター久野遥子が監督を務めるという異例の2段構えでの制作となっています。

細かいリアルさ

そんなロトスコープで作られた本作の印象は、“細かいリアルさ”。

3Dアニメーションのいわゆるヌルヌルした動きは感ず、しっかりとオーソドックスな日本アニメの絵柄ではあるのですが、細かいところでハッとさせられる部分がありました。

例えば、あんずちゃんが原付を止めるシーン。ブレーキの切り方など、普通は端折はしょってしまい動きなんかが細かい再現されていて、結構面白かったです。

そして何より、キャラクターたちの表情がリアル。目を見開いたり、細めたり、眉を顰めたり、クシャッと笑ったり…これまでのアニメではなかなか観られなかった、リアルな人間味のある表情を感じました。

森山未來が化け猫に!

そしてなんといってもこの映画の面白いところは、化け猫のあんずちゃんを森山未來が演じていることですね!

昨年公開の『ほかげ』をはじめ、素晴らしいキャリアを残し続けている森山未來。もともと「モテキ」の大ファンだったこともあり、森山未來は出ている作品で面白くないわけないって思っちゃうくらい、私は森山未來が好きなんですね。

そんな森山未來が猫になるなんて、もう最高ですよっ!しかもしっかり実写でガッツリ演技して、音声まで撮って、そのうえで化け猫にされているっていう過程自体が面白すぎます(笑)。

そういった前情報を詰め込んだうえで観に行ったので、あんずちゃんの背景に森山未來の姿が透けて見える感じがして、すごく楽しかったです。

作品全体は、『となりのトトロ』や『千と千尋の神隠し』を感じさせるジブリっぽい暖かな雰囲気。その一方で、あんずちゃんの一挙手一投足が完全におっさんだったり、かりんが実は性格があまりよくなかったり、物語後半では完全にヤクザの世界みたいなシーンが出てきたりと、暖かさなかにアイロニーな部分も見え隠れしていました。ファンタジーなのにリアルさもしっかりあるというのは、ロトスコープだけではなく、ストーリーにもいえることかもしれません。

漫画家の藤本タツキがXにて絶賛していたことをはじめ、各界で絶賛されている本作。本当に面白いので、ぜひ観に行ってください!


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