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伊東深水の模写

絵の勉強のため、肉筆画をデジタルで再現するという自分への課題で、
ときどき日本画家「伊東深水」の絵を模写しています。

なぜ伊東深水なのか、なぜ模写しようと思ったのかというと、昨年の9月に東京へ営業に行った際、時代小説の装丁を多く手がけられている某デザイン会社の装丁家の方に、
君の絵、伊東深水の雰囲気に似てるね
とのお言葉をいただいたことがきっかけです。

絵の勉強にもなると思うから、伊東深水の絵をデジタルで再現できるか模写してみたらいいよ。」とご助言いただき、「なるほど、やってみよう」と思い立ちました。

もともと絵を描く上で、日本画で活躍された絵師・画家の絵を参考にはしていたものの、「模写」というものをしたことがないな…と思い返し、PCを使ってデジタルで再現することができれば、その手法をきっと今後の自分の絵にも活かせると思いました。

美人画の巨匠・伊東深水の絵に似ていると言っていただけて嬉しいと思う以上に大変恐縮でした(汗)
実は以前から絵の参考にしていたのは上村松園だったので、このお言葉は正直意外だったのですが、模写する上で伊東深水の画集を何冊か(古本ですが)買って見ていると、いつのまにか深水の絵の魅力にはまっていました。

女性の美しさはもちろんなのですが、その中に力強さというのもあって、当時の女性の生き生きとした健康的な魅力が表れているものが多く、あぁこういう風に描きたいなぁととても刺激を受けました。



実際に今まで模写した絵が以下の2枚です。


画像1

模写:伊東深水「鏡獅子」
画像は縮小しているのでわかりづらいかもしれませんが、白い着物の部分にも細かい柄や模様が描かれていて、さらに帯や獅子に付けられた布の柄なども深水はこだわりを持って描いていたようで、模写するのに一番苦労した部分です。



画像2

模写:伊東深水「楽屋」
特に日本髪の描き方がとても勉強になりました。
筆の濃淡を使って鬢(びん)の髪の毛を表現しており、こちらも再現するのに少々苦労しましたが、今後の自分の作品を描く上でもぜひ参考にしたいと思いました。
あと、本物は人物の表情がもっと凛々しくキリッとしてるんですが、どう描いてもそういう表情にならないんですよね…む、難しい…!



私がデジタルで絵を描いているのは、効率性や表現の幅広さなどの良さがあるからですが、それを活かしつつ日本画独自の質感や風情を表せるような作品を制作することを目指しているので、模写でもデジタル特有のパキッと線や色が決まってしまうことの無いよう、肉筆画の筆のかすれ具合や色の濃淡などをなるべく再現しようと意識しています。

もちろん私の今の技量では忠実に再現することはできませんが、詳しく観察することで参考になる学びを多く得られました。

着物の柄を面倒臭がらないでこだわって描いてみようという反省や、髪の表現のように自分の絵でも取り入れてみようと思うような発見があったのはとても良い経験でした。

何より、先に述べた通り深水の美人画の魅力は、女性の美しさの中にある力強さや生き生きとした健康的なところだと思っているのですが、模写することで、自分もそういう魅力ある人物画を描けるようになりたいと強く感じました。



少し話が逸れますが、新型コロナウイルスで外出自粛になる前に、ちょうど東京に行く用事があったので、太田記念美術館の「鏑木清方と鰭崎英朋」の木版口絵の展示も見に行き、そこでもとても良い刺激を受けました。

鏑木清方は伊東深水の師匠ということもあったので、見に行きたかった展示でした。

木版口絵は肉筆画ではなく木版画ですが、当時の文芸誌などの挿絵や表紙絵の役割をしているものであったため、私がやりたいお仕事に通じるものがあると感じてとても興味深かったです。

また、清方は後に挿絵や口絵の世界から離れて肉筆の日本画に専念していく一方、鰭崎英朋はそのまま挿絵や口絵画家として生涯を全うしたことで、日本画で有名な清方に比べ、英朋の名は現在はあまり知られていないそうなのですが、自分がイラストレーターだからなのか、生涯ずっと口絵や挿絵画家を貫いた英朋の生き方に親近感が湧きました。



今後も勉強のために模写は続けていきたいですし、現在はまだ遠出をすることに抵抗を感じる情勢ですが、そんな中でも多くの作品を見たり観察して良い刺激を受けることを大事にしたいと思います。



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