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第85回応用物理学会秋季学術講演会@新潟に現地参加してみた話

こんにちは、じゅんです。
Hokkaido MotionControl Network (#DoMCN)というHoloLens・VR技術好きの技術者コミュニティの勉強会を運営していて、開発者の知見の交流を促進しています。また、元・物性研究者として、研究機関に所属する若手研究者でxRに興味を持つ人を見つけてはHoloLensを被せに行き、開発者コミュニティへの橋渡しを行う事を続けています。これらを適切に表現する職名が無いので、勝手にScientist/Developer Relations と名乗っています。最近はCommunity Relationsとも勝手に言っています。

 私の所属学会の一つ、応用物理学会の秋の全国大会が9月16~20日の期間開催されました。今回は新潟県新潟市の朱鷺メッセで行われ、現地開催とオンライン配信のハイブリッドという体制でした。運営・参加者の皆さんお疲れ様でした。参加レポートを例年通り備忘録的に残しておこうと思います。また、XRミーティング新潟現地会場の設置(後述)にあたり情報を教えてくれた .@fubuky35 さんもありがとうございました。

 22日に新潟から帰還しており、23日時点でCOVID-19に感染しているかどうかはわかりませんが体調は普段と変化なく過ごしています(後日追記)。

 前回の年次大会(春)では、開催地企画の企業見学みたいな新企画もあり、その中にソリッドレイ研究所というXR企業も含まれていたので参加して仲良くなり、ソリッドレイ研究所のスタッフが札幌に来た際の地元の施設見学をアレンジするなどの関係が作れました。秋学会でもそのような縁が作れるといいなと思って参加しました。あと札幌でイマイチ接点が作れていないラピダス社の研究者と知り合いになれないかなと思っています。結論から言うとどちらも未達成に終わっています。残念。

過去の参加記事


オフライン会場の様子

 朱鷺メッセ会議棟、朱鷺メッセ展示ホールA,B、ホテル日航新潟の会議室などを使って行われました。建物同士はつながっていて自由に行き来する事が出来ました。南北に長い構造なので、北側の展示ホールに居ると反対側のイベントに気づきにくい感じでした。
 展示ホールでは各企業の展示ブースが設置され、その外周を取り囲むようにポスター発表用のスペースが設けられていました。2時間のポスターセッションが次々と行われ、発表者は割り当てられた時間にポスターを貼って対応した後、剥がして次のセッションの人に引き渡していました。
 展示ホールの一角に、ご当地グルメを食べられる購買ゾーンが出来ました。お昼時間にはこのカウンターに大行列が出来ておりすごい迫力でした。


オンライン配信はconfitのポータルサイトからzoomで接続

 今大会もハイブリッド開催は維持され、zoomの配信視聴が可能でした。学生の早期申し込みに限り、オンライン視聴のみのチケットは無料でしたので、分野に興味ある学生さんにとっては非常に良いシステムだと思います。
 私も観たいセッションと観たいセッションの間が離れている日にオンライン配信をホテルで見たりしていました。

無くなったもの・復活したもの

 METAVERSE体験会が無くなりました。2023年の春学会(上智大)から始まったVR/ARメタバース体験会から3回の開催でしたが、今大会ではそのためのエリア設置はされませんでした。それに加えて、過去3回開催されていた一般公開シンポジウムの応用物理×メタバース活用セッションも今回はありませんでした。体験会ブースのスタッフとも仲良くなって、これからどうお手伝いに繋げていこうか考えていたので、今回の変更はだいぶショックでした。
 地元企業への見学ツアーも残念ながら春の一回の実施で止まってしまったようです。こちらは会期中に会場外で半日使ってしまっていたのでどうかなという感じが当時もしていましたが、やはり会場内での交流を最優先に据えての変更ということでしょうかね。
 春で復活するのかどうか注目しています(関東圏開催だとXR系の業者のアクセスが良いのでありうるかもしれない)。

5日間の過ごし方

 朱鷺メッセに徒歩で行けるホテルを選び、そこから毎日通いました。新潟駅エリアから会場へのバスが増便されていましたが、混雑していたので結局乗らず、密室のリスク回避も兼ねて頑張って歩きました。最終日の午前はスコールに降られてひどい目にあったので、この日だけはタクシーでも良かったような気がします。

文化を乱さない参加方法

 応物学会の参加者の傾向に倣い、服も比較的真面目なものを用意して様子を見ていました(悪目立ちして出禁にはなりたくない)。
 会場内のルールは確認し、他の参加者・運営に迷惑をかけない態度で過ごしていました。
 去年の事を憶えてくれてる方が居るかもしれなかったのでHoloLens2を首掛けした状態(電源はOFF)で歩き回っていました。前回はキャリーケースを連れまわしていたおかげで最終日付近になるとキャリーで認識されていましたが今回は天気の悪い日が多かったので置いていきました。
 参加票にくっつける用の状態表示タグは今年もありましたので適当なものを選んでつけていました。私はカラフルで気に入っているのですが、周りを見渡す限りではあんまり使っている人いないかもしれないです。


成果(足跡?)

初日(16日)

大会初日は昼前に会場にたどり着いて、ロビーで汗を乾かした後で展示スペースに向かい、各ブースの様子を見て回りました。応物学会ではあまり見かけないロボットアームの展示があったのでつい話しかけてしまいました。

 フラフラしていたら研究室時代の先輩に見つかり、そこでしばらく近況の話をしました。
 夕方のポスター発表セッションでは北見工大酒井先生のグループによる今大会で唯一(たぶん)のVR展示の発表がありましたので挨拶に行き、実際にその教育コンテンツを体験させてもらいました。毎回進歩があってとても素晴らしいと思います。事前にメールで伝えていた通り、酒井先生にはLooking Glass Goを見てもらい、立体視デバイスの進化について情報共有をしてきました。

2日目(17日)

 午前中からオンライン配信のセッションを視聴していました。昼過ぎくらいから会場に向かい、企業展示ブースの残り半分を見て回りました。

3日目(18日)

 午後から半導体グリーンファブ研究会の一般公開シンポジウム「生産技術の醍醐味 ~モノづくりシステムの現場で応用物理は何ができるか?~」に参加してきました。工場のお話が多く、普段あまり自分が考えない領域のお話を聴くことが出来ました。世話人の秋永先生とはここで挨拶できれば良かったですがタイミングが作れずメールのみのやり取りでした。残念。
 夕方に切り上げ、急いでホテルに戻ってXRミーティング新潟会場の設置(後述)に向かいました。


4日目(19日)

 札幌からの問い合わせ対応にしばらく費やし、結局予定通りの5日目を過ごすことが決まってから会場に行ってうろうろしてました。ほとんど終了時間に到着した上に4日目夕方の待ち合わせにも失敗したので、空虚な気持ちで終わりました。

5日目(20日)

 最終日は午前中に局地的な大雨に見舞われ、道路が全部水たまりみたいになってる中徒歩で会場入りしました。靴下を絞ったりして時間を無駄にしたのでタクシーにすべきでした。
 最終日にもなると展示ブースもだいぶ撤収モードになっており、初日からお話してもらってた企業に最後の挨拶訪問などをして過ごしました。夕方からは展示エリア全体の撤収作業が始まったので、邪魔にならない位置からしばらく作業を見学して、寒くなる前に離脱して今回の学会を終えました。

会を通じて話しかけられたらブースに入ってお話を聴いてみるスタイルで過ごしていました。名刺をいただいたり、印象に残った展示のあったブースは以下です(去年よりちょっと増えた)。

・あとで書く



新潟エリアのXR開発者との交流も試した

 今回の新潟出張にあたって、新潟周辺のXR地域のコミュニティとも交流できるかどうか模索してみました。具体的にはXRミーティングの現地開催を軸に色々要素を増やしていく感じです。

XRミーティング北海道 in 新潟

 毎月第三水曜日に大阪・東京・神戸・福岡・北海道・信州の6拠点で連携開催している情報共有会がXRミーティングです。各拠点でライトニングトーク登壇者を出し合うようになっており、6年くらい続いています。今回は出張中にXRミーティングの開催日が重なっており、オンラインでの運営のほかに新潟でも現地会場を作る事で新潟エリアでのイベント開催の素振りを行う事にしました。


イベントの立て方① 現地のエンジニアさんを巻き込む

 まず開催場所が必要になりますので、新潟エリアのXRエンジニアのフォロワーさんを軽率に巻き込んでみる事にしました。@fubuki35 さんが以前から私のつぶやきに時々いいねを付けて行ってくれていたのを思い出し、表で名指しでつぶやいてみたところ現地情報を提供していただけました。一人反応してもらえれば十分だったので、あとは流れ次第というところです。


イベントの立て方② 場所を実際に確保する

 実際の選定に関しては自分の宿から近いかどうかが結構重要だったりもして(18日の目当てのセッションが19時までだったので)、もしかしてホテルのロビーとかでできるか?みたいな事も考えていました(物理の同業者が同じ宿にたくさん宿泊しているので意外とアリと思いました)。
 私が相談の仕方を間違えたせいで宴会場利用の話になってしまい予算オーバーしたので白紙にして、@fubuki35 さんの紹介の中にあったコワーキング新潟弁天さん(@cwniigatabenten)を利用する事にしました。
 利用の決め手は宿泊先から徒歩5分で行ける事と、24時間営業の無人入退室管理システムがXRミーティングの開催時間20:00-22:00と相性良かった事です。平日深夜に使えるコワーキングスペースってあんまりないんですよね。
 開催直前は学会会場にいるため挨拶タイムが作れず、19:30くらいからコワーキングのドロップイン利用でXRミーティングの配信終了まで過ごし、その後にXRガジェットの体験交流会を行える時間を設定しました。体験交流会の時間にもし人が多く残っていて私が邪魔になるといけないので、22:00-23:00の枠で4人定員の個室防音ブースを予約しました。会場費としては300円/30分×240分+ブースレンタル1000円/h で3400円でした(うち1000円は諸事情で後で返ってきた)。


イベントの立て方③ やって発信する

 会場の様子、ガジェット散らかしの様子、体験用に並べている様子などを現地からも発信しました。もともとのXRミーティングの実況と並行して混ぜていました。会場内の様子についてはコワーキングスペースの管理の方に事前に確認したうえで投稿しています。ツイートのまとめは翌日には管理者に共有しました。
 モバイルモニタ、モバイルwifi、マイクスピーカ(4人用)、スクショ用stream deck、ケーブルなどを持ち込んでおけばオンラインイベントの運営はどこでも十分できます。参加者0の時用に骨伝導ヘッドセットもあります。


イベント素振りをする事の意味

 今回は残念ながら新潟会場への飛び入り参加者は居ませんでした。XRエンジニアの人たちと現地で交流するという目的自体は果たせていませんが、割と想定済みの結果なので特に問題はありません(fubuky35さんに来場の確約すら取らずに開催してました)。
 突貫でイベントを現地で開催するにあたって、事前準備がこれくらいで当日に会場たてて費用がいくらくらいという情報を残すことがまず運営者にとっては重要だと考えているので、この記事の公開をもって本来の目的が果たされる形になります。他の地方の開催の時にも参考になるお話だと思っています。

 コワーキングスペースの管理担当者さんには、XRの情報交換会をリモートでやっている事と、XRガジェットの体験会も併設して交流している事を説明して、実際に現物を少し見てもらいました。こうしておくことで、XRコミュニティの生態をインプット出来たので、次回以降の利用者が仮に体験会イベントを開きたくなった時に説明の手間が省ける事と思います。

 参加者0人の勉強会は主催者の心を折る事例としてときどき見かける事があるのですが、XRミーティングに関してはトークネタが他の地域から出てくることが十分期待できるため(別の月は自分も出す)、わずかな会場設営費が飛んでいくだけのダメージで済み、イベント建ての練習の場としては良い気がしています。
 もちろん平日の22時以降にコワーキングスペースにガジェット目当てに突撃しに来る人がなかなかいない事は分かりますが、もし万が一居た場合にはその人こそが地域で大事にすべきキーパーソンです。

 言う→やる→発信する→言うのサイクルを意識した取り組みについては、以前NT札幌2020でお話したイベント継続の手口パートと共通するので再掲しておきます。

 一連の発信を続けた際の出張先地域の反応を見る事で、お知らせツイートの一次拡散がどれくらいか?二次拡散があるのか?地元企業からの協力が得られそうか?視えてない技術者コミュニティが実はあるのか?などを探っていました。

出張先イベントにドラを乗せるチャレンジ

 今回の出張で運よく縁を作れればいいなと密かに思っていたのはgugenkaさん(新潟市)、小柳建設さん運営のMicrosoft Base Niigata-Kamoです。
 gugenkaさんは9/14に開催されたXR転職合同相談会(#XR転職)で会社紹介の登壇があったので、そのイベントの実況を手伝う傍らで新潟出張をこそっと混ぜ込んだりしてみました。
 Microsoft Baseは平日に行ける用事が元々なかったのですが、札幌からのとある連絡をきっかけにより訪問の可能性が一瞬出来たので学会5日目の切り上げなども検討しながら進めていたのですが、途中で断念してそのままになっています(学会5日目は集中豪雨で電車が止まりまくったので行かなくて正解ではあった)。
 出張中にうまく関係が作れていれば、新潟で草の根でできる事の幅を少し拡げていけてたと思うので、次回の別地方への出張の際にはアプローチを新しく考えていこうと思っています。


参加者のSNSの発信が学会内部に波及しないことによる非同期交流の難しさが増している

 今回の学会では、教育セッションでのVR活用のお話を聴くことが出来たので当初の目的は果たされました。企業展示ブースもたくさん回れたので満足しています。
 一方で、twitterを開くと、札幌で同時に開催されていた日本物理学会年次大会のエピソードがたくさん流れてくる状況でもありました。応用物理学会参加者の話は全然流れてこないという新潟参加者のつぶやきが見られ、私もまったく同様の感想を持ちました。

  #応用物理学会 ハッシュタグを使っている人が最多で、企業の展示を出していた会社が #JSAPEXPO タグを何社か使っていて、 #応物学会 タグを使っていた人は大会公式アカウント (@JSAP_EXPO)以外0でした。@JSAP_EXPOは出展社の #JSAPEXPOタグツイートをリポストして拡散しています。応物講演会アカウントはリポストはしない運用のようです。平和を最も重視した運用と思いますし堅実さを感じます。
 大会アカウントだけをフォローしている人は、他の参加者が #応用物理学会 タグでつぶやいていてもそれを知ることはできません。能動的に #応用物理学会 タグツイートを検索した人だけが他の参加者の存在を知ることができるという感じです。
 私は会期中に投稿されたタグツイートをリアルタイムで一通り見ていて、夜にいいねを付けたりRTしたりしながら会話の糸口を作っておいて企業ブースでもつぶやきに言及するなどしながら、非同期・同期のコミュニケーションをしています。しかしつぶやきの絶対数自体がとても少ないので、これがあまり有効なアプローチとは言えず、やはり現地にガッツリ滞在して会場内での一発勝負で仲良くなる方が賢そうです。個人の参戦ツイートがあまり役に立たないとなれば、新たにツイートしようとする人も増えないので、ここからの交流の輪はとても限定的になりそうです(応物学会員のそもそもの性質や属性を考えるとしょうがないよね、という気持ちはあります)。


前後のコミュニティイベントなど

さて、今年も前後に色々なイベントがありましたので、これも来年の自分への備忘録がわりに残しておきます。
・9/14-15 #NT札幌Mini

今回、NoMaps GEEK 2024の併催企画として開催されたようです。
DoMCN関係者からも展示が数件あったり、イワケンさんが札幌にやってきたりとだいぶ面白そうだったのですが昨今の札幌での感染症のサイレント流行を鑑みて参加自粛しました。

・9/14 DevRel/Japan CONFERENCE 2024 #DevRelJP

同時期に東京ではDeveloper Relationsの大規模カンファレンスイベントが行われていました。


・9/20-10/6 TGS Digital World #TGSDW2024

 東京ゲームショウのVR会場が今年も公開されています。応物学会と時期が近いこともあり毎年参加できないですが、VR会場があることによって遠隔地でも雰囲気を感じることができるのでありがたいです。

・9/17,23 DevRel/Radio (#DevRelJP)

Developer Relations職の情報番組(?)、DevRel Radioは毎週火曜日放送です。今年は滞在期間中に配信があることをすっかり忘れて展示を見ていました。

・9/21-22 Maker Faire Tokyo #MFT2024 

ものづくりを愛する人たちの見せびらかしっこなお祭りが東京で開かれていました。20,21日に北陸地方の大雨で何もできなかったので、それより新潟からこちらに移動しても良かったかなと若干後悔しています。来年は忘れないようにしたいと思います。

まとめ

 応用物理学会秋学会でVRの教育活用の研究者と議論をしてきました。並行してXR関係者との関係作りも試し、これからに活かせそうなものを新潟の地域に少し撒いてきました。ほんのちょっとの手間をかけるだけで成立する技術イベントがある事を知ってもらえたらと思います。関係者の皆さんありがとうございました。
 残念ながら応物内でのオフィシャルなVR/AR関連企画は春を最後に終了したような印象を受けます。非オフィシャルで活動させてもらえるなら全然やるのですが、学会年次大会の主目的を妨げるようなことはできないので、私としては何かきっかけ待ちの状態です。
 あとちょっとここで書く事か分からないんですがラピダスさんとはどこで会えるのか全然わかりません。講演検索でRapidusで調べた時のヒット数が4件でうち2名だけ社員さんという状況で、今回も何の接点も作れませんでした。半導体分野の研究者が今後必要な会社という私のイメージが間違っているのかなんなのか。。
 私が応用物理×VR/ARの文脈で相乗効果を活かせる事がほとんど無くなった回になり、春参加をどうしようか今から悩むところではありますが自分にできる事を探して頑張ります。

以上です。
(2024/09/23 初稿 8187字 900min ) 

おまけ

・旅費、滞在費について
飛行機 25160円
宿 1泊+4泊+2泊: 14400円+31400円+14400円=60200円
空港までのバス 1300円×2 (札幌-新千歳)、470円×2 (新潟駅-新潟空港)
食費・おみやげ等 15000-20000円くらい
参加費 12000円

大会のスケジュールが分かった段階で5月に宿を確保、飛行機のタイムセールで9月が買えるようになったタイミングで旅程と追加の宿を確保、8月に1泊足りてなかったことに気づいて確保(割高)という感じでトータル12万円弱に抑えられました。8月末の段階で予約当時の2倍になっていたので、対応が遅れていたらと思うとドキドキしますね。

・道中の様子


新潟ごはん(↓以外は全部コンビニ調達してホテルで食べた)