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【読書】今なお論争を呼ぶ驚愕の作品、エクストリームSM描写「家畜人ヤプー」が持つメッセージとは?

家畜人ヤプーとは?

『家畜人ヤプー』(かちくじんヤプー)は、沼正三による長編SF・SM小説であり、1956年から『奇譚クラブ』に掲載され、その後さまざまな誌に発表されました。

しかしながら、本作品にはマゾヒズム、汚物愛好、人体改造を含むグロテスクな描写が含まれています。 初めに連載された頃から、文学界で話題を呼び、三島由紀夫氏を始め、澁澤龍彦氏や寺山修司氏らによって高く評価されました。

連載と出版の経緯

『家畜人ヤプー』は、『奇譚クラブ』に連載された後、加筆修正が行われ、都市出版社から単行本として出版されました。

しかし、その出版を妨害するような右翼団体による事件が発生し、1人が逮捕され、2人が指名手配される事態となりました。

物語が打ち切られたため、『奇譚クラブ』連載分の後に、都市出版社版、角川文庫版、スコラ版、太田出版版、幻冬舎アウトロー文庫版などが多く出版されましたが、補正加筆が施されたため、版によっては内容に食い違いがあるかもしれません。

ストーリー

婚約中の日本人青年留学生麟一郎(りんいちろう)とドイツ人女性クララは、未来帝国EHS(イース)の人ポーリーンが乗ったタイムマシンの墜落事故で、
ドイツの山中で事件に巻き込まれます。即座に救援に駆け付けたEHS貴族たちは、元貴族であるクララを同胞として迎え入れます。

彼女は、恋人を救うためEHSへの旅に出ましたが、セッチンを使い、ソーマを飲み、音楽や矮人決闘を愉しむ喜びを知ります。徐々に、彼女はヤプーの存在を肯定していき、また、ヤプーと日本人が同一の存在であることも認めざるを得ませんでした。ジャンセン家の別荘に到着すると、彼女は自分の恋心を麟一郎からウィリアムへと移し、彼をヤプーとして拒絶するようになっていました。

麟一郎は「クララが捕まえたヤプー」の一匹として処置を受け、クララが現代地球への帰還を拒否したため失望し、無理心中を試みますが、失敗に終わります。

二人の関係は完全に破綻しましたが、クララは「立場が異なっても、二人は決して離れない」という誓いを忘れず、麟一郎はクララを救いの女神として心の支えにしました。

クララは、ポーリーンやアンナ・テラスに導かれ、EHSの貴婦人としてふさわしい教育を受け、ヤプーの扱い方や主人としての心得を学んでいきます。

そして、麟一郎はヤプーとして、またクララの従属者として自我を洗脳され、やがて自分の立場を認めるようになっていきます。それは地球を出発してからたった3日の出来事でした。

筆者と周囲の反響


少年たちの、SFとSMの下地があって受け入れられた本作

小学生で、児童向けの江戸川乱歩などポプラ社の推理小説やミステリー、
同じくハヤカワ文庫で、ベルヌやウェールズなどのSF作品。
また、仮面ライダーやウルトラマン、NHK少年ドラマシリーズなどの特撮もSFであり、また、サンダーバードなどのイギリス作品からの影響も大でしたね。

一方、ハリウッド映画では、スピルバーグやジョージ・ルーカスが70年代に登場して、SFは昔から大人気でした。「スターウォーズ」はこの時期から世界を変える映画でした。

それと同時にSMに目覚めてしまった小学生も多数いて、そのキッカケは漫画家の永井豪でしょう。少年マガジンの「バイオレンス・ジャック」の人犬。同じくマガジンの「イヤハヤ南友」のSM体育試合。月刊少年ジャンプの「けっこう仮面」の高橋真弓のハリツケ拷問シーンなどに今では問題視されるようなSMシーンが満載です。10歳にも満たない男子らがこぞって読んで性的に興奮するような影響を受けていましたから、つくづく罪な漫画家だと思いますよ。永井豪先生は。中学生になると、SM雑誌などで、団鬼六の読者もかなりいました。

そんな理由から、SFとSMのリンクした「家畜人ヤプー」は高校生の少年でも読んでいる人がいました。
筆者は、「家畜人ヤプー」を「Domestic  Yapoo」と英文字で書き、金箔で彫り込んだ鉛筆を友人と大量生産して、かなり稼ぎました。
1ダース3000円くらいでしたかね。
この鉛筆がなかなかオシャレだと評判でした。
商魂たくましいとはこのことです。

高校、大学、社会人となっても、ヤプー人気はとどまるところを知らず、
男性だけどなく、女性にも大きな評判を得ていました。
みなさん、本当にSMが好きな方が多い。男女ともにM気質な人が増えている。時代的な影響があるのかも知れません。
特に男性のM化や女性への依存が著しく、「お貢(みつぎ)奴隷」なる精神的M気質男性の存在にも着目されています。
もはや、SMは異常な性的倒錯ではなく、普通の趣味の部類なのでしょうか。


謎の覆面作家・沼昭三

沼正三(ぬましょうぞう)という小説家は、日本文学の最重要人物の1人です。彼は『奇譚クラブ』で連載された小説『家畜人ヤプー』で名声を手にしました。また、沼正三は覆面作家として活動していました。このため、沼正三の正体には、三島由紀夫、奥野健男、武田泰淳、澁澤龍彦、会田雄次、遠藤周作、倉田卓次、そして代理人であると称する天野哲夫など、様々な説が存在しています。沼正三の正体は、未だに正確に明らかにされていません。

戦後の文学界に衝撃 マゾの奇書「家畜人ヤプー」覆面作家は高裁判事 東大卒のエリート

昭和四十五年の単行本発行と同時にロングセ一ラーを続け、戦後文学界に衝撃を与えた奇書「家畜人ヤプー」の作者は長らくナゾとされ、関係者の間で熱心な作者探しが行われているが、二日発行される「諸君」十一月号に、この覆面作家は、東京高裁の現職裁判官倉田卓次氏(六〇)である旨の記事が掲載された。同書は「難解な観念小説」との評価の一方、性錯倒のマゾヒズムの世界を主題にした小説だけに、「作者はエリート裁判官」とする同誌は話題を呼びそうだ。  2019年の記事より


フランスで翻訳され、「マルキ・ド・サド賞」を受賞


沼正三著『家畜人ヤプー』を出版したローレンス・ヴィアレ氏に聞く(2)・・・週刊読書人:2008年(平成20年)10月10日(金曜日)より


沼正三著『家畜人ヤプー』を出版したローレンス・ヴィアレ氏に聞く(2)

沼正三著『家畜人ヤプー』を出版したローレンス・ヴィアレ氏に聞く(2)・・・週刊読書人:2008年(平成20年)10月10日(金曜日)より | 康芳夫 official HP (家畜人ヤプー.club) (yapou.club)

---はじめに、『家畜人ヤプー』という作品の存在を知った時のことをお聞かせください。

ヴィアレ 今から五年前、二〇〇三年のことです。出版関係の仕事をしている日本人の友人と、ロンドンで話をしている時に、『ヤプー』の話になりました。彼女は『ヤプー』に対して、以前から強い興味を抱いていたようで、ストーリーの細部にはじまり、ひとつひとつのキャラクターに関してまで、長時間にわたって、情熱を込めて語ってくれました。わたしがこれまで携わってきた本が、彼女にとって興味を引くものが多く、相談を持ちかければ、おそらく出版にまでこぎつけることができるのではないかと思ったんじゃないでしょうか。

---かなり特異な世界を表現している作品だと思いますが、拒否反応のようなものはなかったのですか。

ヴィアレ まったくその逆で、物語への興味の方が強かったですね。白人女性の世話をしながら喜びを感じるマゾヒズムの話なんですけども、マゾヒズムの言葉の元となった作家マゾッホに似ているというよりは、どちらかと言うと、マルキ・ド・サドに近い世界ですね。サディズムに関して、日本人独自に表現したものであり、作者は、日本のマルキ・ド・サドではないかと感じられました。

---フランス語に翻訳して出版されるまでには、どのような経緯が?

ヴィアレ まずインターネットで、『ヤプー』に関する論文をいくつも読みました。調べていくうちに、この作品が、日本文学の歴史の中で、非常に重要な位置を占めていることを知ったわけです。内容自体は、最初に話を聞いた時から気に入っていましたから、それから翻訳者を探しはじめました。しかし、引き受けてくれる人は誰もいなかった。文体は難しいし、万葉集やいろいろな日本の古典が物語の中に織り込まれていますから、翻訳には向かない。言ってみれば、編集者から編集者へたらい回しの状態です(笑)。最終的に、カルドネル・シルヴァンさん(龍谷大学助教授)にお願いすることにしたのですけれども、彼は、相談を持ちかけると、すぐに翻訳の承諾をしてくれました。

---実際に翻訳が決まってから、第一巻の刊行に至るまでの期間が一年という異例の速さで、『家畜人ヤプー』のプロデューサーを務める康芳夫さんが、「分業したのではないか」とさえ思ったそうです。また、元々フランス文学を専門とする、ある日本の卓越した文芸評論家が翻訳された文章を読み、絶賛したともうかがってます。

ヴィアレ シルヴァンさんは日本語が堪能で、これまでにも、村上龍さんの『ライン』や『共生虫』『トパーズ』『エクスタシー』といった作品をフランス語訳されている方で、西田幾多郎の『場所的論理と宗教的世界観』まで訳している、優秀な翻訳者だと思います。わたし自身、読みながら、大変興奮を覚えましたし、出来上がりには非常に満足しました。大作を翻訳出版する初めての機会で、手探りでやってきましたが、正直、ほっと安心しています。

---二〇〇五年の九月に第一巻が刊行された時の反響はいかがでしたか。

ヴィアレ 最初は知り合いのジャーナリストや書店の人たちに読んでもらったんですけれども、概ね好意的な感想を述べてくれました。新聞などの評論記事にも恵まれましたし、「ル・モンド」の一面で取り上げてくれたんですよ。「日本の戦後小説の代表作が翻訳された」と紹介され、「スイフトの小説世界のようである」と、テキストの面白さが強調された論評でした。第一巻のあと、翌年に第二巻が発売されて、その時には、サド賞をいただきました。

・・・次回更新【沼正三著『家畜人ヤプー』を出版したローレンス・ヴィアレ氏に聞く】に続く

さまざまな形での発売


小説、マンガ、他、各種媒体が存在しています。

Amazon.co.jp : 家畜人ヤプー 小説





この記事では、沼正三による長編SF・SM小説『家畜人ヤプー』について説明しました。その題材がマゾヒズム、汚物愛好、人体改造を含むグロテスクな描写であるため、物議をかもした作品であります。初めに連載された時から文学界で話題を呼び、多くの作家に高い評価をされました。しかし、右翼団体による事件が発生し出版にも影響がありました。そのため、多くの版が出版され、また補正加筆も施されています。『家畜人ヤプー』は、物議を醸す作品ではありますが、一方で文学的には高く評価されています。


最後まで、お読み下さり、ありがとうございました。よかったらスキ、フォローよろしくお願いします😉

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