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(フィンランド視察2日目)地下シェルターで見たこの国の本気度

二日目の1月12日(木)は、リー・アンデルソン教育文化大臣やマッティ・バウハネン国会議長を表敬訪問したり、プレ・スクール(小学校入学前の1年間の準備クラス)や国会議事堂などを見学したりしたが、最も印象に残っているのが地下シェルターだった。

まず、市内のあちこちにある地下鉄の入口のようなところから、エレベーターで地下約20メートルへ(電力が止まった時のために階段でも降りられる)。
降りてみると意外とポップな感じで、普段は子供の遊び場やグランドホッケー場(4面以上確保)、駐車場などに使われていて、今日もたくさんの人たちが利用していた。
この施設は6000人を収容可能とのこと。
フィンランドでは法律で1200㎡以上の住居等には設置が義務付けられており、この施設も近くにあるオフィス街を建設する時に造られたもので、その建設コストはオフィス街の建設事業者が負担しているという。

しかし、事前に予習していたとはいえ、実際に設備を見ると圧倒された。
・2週間分の自家発電の燃料を備蓄し、電源も冗長化
・2000人分のベッドを用意(8時間ずつ、3交代で寝る想定)
・トイレを設置するための広大なスペースも用意されていて、黄色い枠にトイレ1台を設置するよう表示してあり、手洗い場も設置(冒頭の写真)

さらに、地上で核爆発が起こることも想定し、
・外気を完全に遮断しても6〜8時間は耐えられるような自律空調システム
・衝撃波を和らげるために空気を取り入れる縦穴が何度も90度に曲がっていて、シェルターに空気を取り入れる直前で衝撃を止める衝撃吸収装置が設置してある
・放射能で汚染された人が入ってくることを想定し、シェルターの入り口手前で衣服や体を洗い流す設備を用意
などなど、戦争や核攻撃の際に実際にどんなことが起こるか詳細に想定し、そのために十分すぎるほどの準備をしている。
さらに、普段からボランティアも含めて、実際に設備を稼働させたり、出入り口を封鎖したりする訓練を定期的に行なっている。
このシェルターは決して特別ではなく、むしろ標準的なもので、こうしたシェルターがヘルシンキだけで5500箇所、73万人分あるという(ヘルシンキの人口は60万人)。

ロシアによるウクライナ侵略や北朝鮮によるミサイル攻撃の激化を受けて、日本でもシェルターを増設すべき、という議論が始まっているが、「大都市の地下街や大きなビルの地下駐車場、地下鉄のホームなどをシェルターとして指定すべき」といった議論に留まっている印象がある。
フィンランドのように、明日にでも隣国から攻められたり、突然核攻撃に遭うことを想定し、その際に国民を救うために何が必要かを詳細に議論し、そのための設備を実際に準備し、定期的に訓練している様子を見ると、戦争に対する危機感や覚悟の違いを痛感させられた。

そういえば、フィンランド大使館員は最近、「日本の備えは大丈夫なのか?」「ロシア、中国、北朝鮮に囲まれて、どうしてそんなにのんびりしていられるんだ?」と聞かれるという。

昨日オンカロでビジターセンターの所長が言っていた以下の言葉が、改めて耳に蘇ってきた。

Don’t be afraid,
Don’t be scared,
But, be prepared.

(心配するな、恐れるな、でもしっかり準備しろ)

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