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歴代受賞者インタビュー 第18回 半田畔

JUMP j BOOKSの小説賞を受賞した作家に編集部がインタビュー!!
これまでのインタビューはこちらから(公式サイトへ)
今回はジャンプ小説新人賞 jump Novel Grand Prix '13 Winterにて銅賞を受賞した半田畔先生に
プロデビューまでの道のりと、作品作りのために心がけていることなどを伺いました!!

最新作の短編「テールスライドを食らえ」も是非ご覧ください!!

それではインタビューをどうぞ!!


――小説を初めて書いたのはいつごろですか? きっかけと内容を合わせてお聞かせください。
大学に入ってからと記憶しています。高校時代までゴルフをやっていて、プロゴルファーを目指していました。その夢がとん挫し、挫折して、趣味が一気にインドアに向きました。もともと漫画や映画、小説は好きでしたが、その「好き」のタガが外れたように、さまざまな作品を摂取していきました。

たくさんの物語に触れるうち、自分も書いてみたくなり、始めました。出来上がったのは拙い短編で、東京から京都に行く間の夜行バスで、乗客が一人ずつ消えていくお話でした。スティーヴン・キングの『ランゴリアーズ』に、モロに影響を受けてしまっていますね。

――プロデビューを志したのはいつ頃からですか? 最初からプロ志向だったのか、何かのきっかけがあったのか教えてください。
まず、自分は二回ほどデビューを経験することになりました。矛盾した言い回しに見えますが、ペンネームを変えて作家を続けているという意味です。
一度目はジャンプ小説大賞で音七畔としてデビューさせていただきました。二度目は他社さんの新人賞で半田畔としてペンネームを変えてデビューさせていただきました。
一度目のジャンプ小説大賞では、明確にプロの作家になるぞと志して、応募したわけではありませんでした。
音七畔としてデビューしたものの、就活も始まろうとしている時期で、さらに家庭の事情も重なり、なかなか次の新作にとりかかる時間が取れませんでした。そうこうしているうちに期間が空いてしまい、担当編集の方とも連絡を取りづらくなっていました。

就活のときは、自分が何をして生きていきたいのかを見つめなおす期間になりました。小説を書くことがやめられないと気づき、再び新人賞の応募を決意しました。なので、二度目の新人賞応募の際、半田畔としてデビューするときは、作家として活動していくことを念頭に、応募しました。

二度目の新人賞でペンネームを変えてデビューすることになったとき、j-booksの担当編集さんに久しぶりにご報告の連絡を取りました。怒られるかもしれないと身構えましたが、喜んでくださいました。いまでも頻繁に連絡をくださり、仕事のお話もいただけたりしてます。

――小説賞に応募する以前、周囲の方に小説を読んでもらうことなどはありましたか? あった場合は他人に読んでもらうことの影響を教えてください。
友達が少なかったので、誰も読んでくれるひとがいませんでした。もしいなかったとしても、たぶん読ませられなかったと思います。ただ、作品のクオリティを上げるための手段のひとつとしては、有効だと思います。応募する新人賞のレーベルの本を購読したことがあるひととかだと、理想的だと思います。

――なぜジャンプ小説大賞に応募しようと思ったのかを教えてください。
週刊少年ジャンプの愛読者で、たまたま掲載ページを見つけたのがきっかけでした。受賞結果でジャンプに自分の名前が載ったら嬉しいだろうなと思い、応募しました。

――応募作はどれぐらいの期間をかけて書かれたのでしょうか? また、応募するとき自信や手ごたえはあったのでしょうか?
たぶん、一か月くらいだと思います。自信はありませんでした。走り始めて、自分がどれだけ進んだかを、初めて他人に評価してもらう機会が、ジャンプ小説新人賞でした。

――受賞の第一報を受けとったとき何をされていたのか、また当時の気持ちを教えてください。
最初にジャンプ小説新人賞に応募したのが2013年だったと記憶しています。その年の賞では受賞を逃しましたが、ご縁あり、現在の担当編集さんがついていただけることになりました。「来年、改稿してまた応募する気があるのなら、アドバイスをする」と背中を押され、担当編集さんのサポートをいただきつつ改稿していきました。

翌年、改稿作で受賞の報告をいただきました。第一報を受けたのは、集英社の4階にある担当編集さんのデスクの前だったと思います。オフィスのど真ん中で、飛び跳ねて喜べるはずもないので、リアクションは不愛想な感じになりました。すみませんでした。

――初めて担当編集者と話をしたときどんな印象を持ちましたか? 編集者から受賞作にどういった評価をもらったのかも聞かせてください。
初めてお会いしたのは、受賞を逃したあとに、改稿方針を話し合うために集英社に訪れたときでした。一階のロビー奥にあるブースのひとつ(『バクマン』で真城くんと高木くんが初めて持ち込みをしたときに描かれていた場所です)で、担当編集の方とお会いしました。

応募原稿をプリントアウトして持ってきてくださっていて、しかも無数に付箋が張られていました。ああ、ちゃんと読んでくれているのだなと、嬉しくなりました。テーブルに原稿を置くときも、丁寧で、大切に扱ってくれる方なのだと思いました。対面で会話を交わす前から、信頼できる方だと、安心できました。

――作品を書く上でどういったことに気を付けていますか? 自分のなかで大切にしていること、読者にどのような気持ちになってもらいたいと考えていますか?
小説、漫画、アニメ、ゲーム、ドラマ、映画。数あるエンターテインメントのなかでも自分が一番多く触れてきて、かつ影響を受けたのは映画でした。
なので、読者の方が文章を読んだとき、そのシーンが頭の中で映像としてしっかり再生できるかどうかは、常に意識しながら書いています。

小説の特性を活かしたもので、読者を喜ばせたいという思いが強いです。
少し脱線しますが、エンターテインメントはいくつかのカテゴリに分けられるという持論があります。カテゴリ分けの基準は、①「物語のビジュアル」と、②「物語を追う速度」の二つです。これらに対して、お客は常に主か従、どちらかの立場になります。
例えば漫画は、キャラクターや風景はすべて描かれているので、読者はそのイメージを受け入れる(受動的になる)状態です。つまり、ビジュアルに関しては読者が「従」の関係を持っている媒体。一方、物語を追う速度、つまりページをめくる速度は読者自身が調整できるので、こちらは読者が「主」(能動的になる)の状態です。
ゲームも漫画と同じ特性を持っています。ビジュアルに関してはお客が「従」で、物語を進める速度はプレーヤーが調整できるので、こちらは「主」。
アニメや映画、ドラマは、ビジュアルに関してはお客が「従」。そして物語の速度も、基本的には放送(放映)される娯楽なので、お客が「従」になりがちの媒体。
このカテゴリ分けのなかで唯一、小説だけはビジュアルと物語を進める速度、どちらもお客が「主」(能動的)でいる娯楽です。シーンやキャラクター、風景を自分で想像でき、かつ、自分の好きな速さでページをめくり、物語を追える。これは捉えようによっては弱点にもなり、そして十分な強みにもなります。
この特性を生かさない手はないので、小説だけが持っている強みを引き立てられる作品にしたいと、書いているときはいつも思っています。

――作品を書く上で、資料はどのようにして集めていますか? また、集めた資料はどの程度作品に反映されるのでしょうか?
企画やジャンルによって資料の集め方が変わります。予備知識、事前知識だけで書けるものもあれば、何ページにもわたってネット検索したり、図書館に赴いたり、現実的に可能であれば作品舞台の現地に向かったりもします。すべて経験しました。
そうやって集めた資料のうち、執筆で描写として反映されるのは2割くらいだと思います。残りの8割が無駄かというと、そんなことはありません。知っていて書かないのと、知らなくて書けないのでは、大きな違いがあると思っています。

――創作をしているなかで原稿に行き詰まることもあるかと思います。そんなときはどのように気分転換をしていますか?
行き詰まりが軽度であれば、映画を観たり、漫画を読んだり、と、ほかの物語に触れて気分転換をします。
重度であれば、物語に触れること自体を避けるようにします。近所の河原をランニングしたり、高校時代までゴルフをやっていたので、ゴルフ練習場に行ったり、体を動かす方向で気分転換をします。

――これがなくては仕事にならない! というものはありますか? 普段の執筆環境について教えてください。
午前中の紅茶と、午後のコーヒー。中間の昼寝。これらを失うと、ちょっとつらいです。
執筆環境は、仕事部屋にデスクトップパソコンが一台。持ち運び用のノートパソコンが一台。100パーセントの集中力で執筆する必要があるときはデスクトップ、80パーセントくらい(企画プロットを立てるとき、改稿方針を決めるとき、著者校ゲラのチェック時等)の場合は、ノートパソコンを使って原稿に向かいます。

――小説を書く際に、小説を読むこと以外で役にたったことがあれば教えてください。
父の職種の関係で、映画が常に身近にありました。映画鑑賞が生活の一部に組み込まれていて、その習慣は小説を書く際にも生かされました。たとえば、なにか描きたいシーンがあったとき、それを頭の中でスムーズに映像化できるのは、日ごろから映画に触れている恩恵だと思っています。

――今後どのような作品に挑戦したいか、また構想中の作品などあれば教えてください。
新作は定期的に発表していきたいと思いつつ、せっかくJUMPjBOOKSさんとお仕事としてかかわる機会があるので、いつかノベライズに挑戦させていただきたいなと思っています。漫画家さんや、ほかの先生がつくられたキャラクターを小説で動かせるのは、大変光栄だし、刺激的だと思います。

――これからJUMPjBOOKSの小説賞に応募される方に応援メッセージをお願いします!
受賞すると、週刊少年ジャンプに見開き2ページで、どかんと結果が掲載されます。そこに自分の名前が載ります。この興奮を味わえるのはJUMPjBOOKSの小説賞だけです。
自分の名前と、受賞結果が載ったときのジャンプは、いまでも大切に保管してあります。
あと、受賞後に書籍が刊行される際は、ジャンプの広告ページにもしっかり載せてくれます。これも大きな特権だと思います。頑張ってください。


読んでいただきありがとうございました。

ジャンプ小説新人賞 2022募集中!!