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我が家のおせち

年末、職場で皆の家ではおせちを作るのか。作るなら何が入っているのか。そんな話になった。うちの実家は貧しいわけではない。経済的には普通の家。だが、料理が苦手な母が作るおせちは、

三段のお重の蓋を開けた最初の段は一面に敷き詰められた白いかまぼこ。のみ。隙間なく敷き詰められていて箸を入れるのが難しいくらいぎっちり入っている。続く二段目は上側がピンク色のかまぼこ。のみ。隙間なく敷き詰められていて箸を入れる難しさの難易度は一段目と変わらない。二段に続いて繰り広げられたかまぼこワールドを突破し、現れる最終ステージの三段目はなぜか煮汁が無くパッサパサのチャーシュー。溢れ出る肉汁などなく口の中の水分を奪われる。

おせちは昔の人が普段、食べられない贅沢なものや、おめでたい色合いのものを詰め合わせたものと聞いたことがあるが、母のおせちはそんな常識にとらわれない。使っているお重は内側が朱色。外は漆っぽいっ黒。金色で海の波や船が描かれ、白で木も描かれている。お重に使われている色が4色で食材の色が白、ピンク、茶の3色。食材に使われている色の数が容器のお重に負けている。

この話を上司、同僚2人の4人で話してたら会話に入ってない少し離れた場所にいた先輩が飲んでいたコーヒーを吹き出し、

『ごめんなさい。でも、嘘でしょ?』

その先輩に訊かれたけど事実だ。口に飲み物を含んだまま笑うと、こんなに飛散するんだと皆と掃除しながら思わされた。小5か小6の時、

『お婆ちゃんのおせちにはエビとかあった』

と、母に言ったことがある。翌年のおせちの内容は変わらなかったけど、オプションでお皿にのった甘えびが付いてきた。日本人歴は圧倒的に僕より上なのに尾頭付きのエビでも、お寿司でもない甘えび単体をオプションで出してきた母にイカれ過ぎてんな。この人。と信じられなかった。

明日、実家に少しだけ顔を見せにいく予定だけど、今年もあのシンプルな色合いのおせちが食卓に鎮座していると思う。

ジュースが飲みたいです('ω')ノ