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『禁じられた歌声』 Timbuktu

「俺たちの映画祭り豪華3本立て」バトンリレー2日目は「没入感がすごい映画」です。
万人にお勧めはしません。この映画に没入できる日本人は非常に少ないと思います(笑)
でも自分にとっては心の一部のような映画です。

禁じられた歌声
原題:Timbuktu
初公開:2014年5月(カンヌ)
監督:アブデラマン・シサコ
音楽:アミーン・ブハファ
主題歌:ファトゥマタ・ジャワラ
製作国:モーリタニア・フランス

映画『禁じられた歌声』予告編 | YouTube

僕の妻はトゥアレグで、映画の舞台トンブクトゥの近くで生まれ育ちました。僕も結婚前、トンブクトゥの町の近くで主人公の家族のように遊牧民のテントで暮らしていました。この地で妻と出会い一旦帰国していた時、民族紛争とそれに伴う軍の迫害が激化し、妻の家族は家も持ち物もすべてを捨てて砂漠の中に逃げました。
その知らせを聞き、仕事を辞めて妻を探しにマリに行くことにしました。幸いマリに着く前にNGOのお陰で彼女と首都バマコで再会できました。再会した妻の体重は40kgを切っていました。
結婚後数年して治安も小康状態になりマリに戻りました。
映画の冒頭のように穏やかな時間が流れる中、妻や子どもたちとこの地で過ごした日々が懐かしいです。

写真は、その頃、妻の両親と暮らしていた時のものです。

しかしその後、国際情勢に飲まれ民族紛争は大きく変容し一国の問題ではなくなり、映画に描かれるような事態が起こりました。
地雷による被害や散発的な攻撃の犠牲が今も続いています。人々は社会不安と苦しい経済状況で大きな不安を抱いたまま暮らしています。世界遺産の町はかつての活気を完全に失っています。

英語で ”as far as Timbuktu”と言うと「想像できないくらい遠いところ」という意味だそうです。20年間以上通い、暮らし、故郷のように身近に感じていたトンブクトゥは今、その言葉の通りとても遠い場所になってしまいました。

この映画は、僕たち家族の未だ終わらない物語です。
いつかトンブクトゥに戻れる日を祈っています。

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最後に、この映画にも触れられている、日本には馴染みのないイスラーム圏の映画が紹介されている本を紹介しておきます。
映画で旅するイスラーム 知られざる世界へ

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