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ブルース・ギルデン氏はよくて鈴木達朗氏はだめなのか

富士フイルムが2月5日、配信を開始した新しいカメラのプロモーション用動画で、写真家鈴木達朗氏が路上で通行人を撮影しているスタイルに批判が殺到し、即日配信を停止し謝罪しました
結果、ひとりの写真家を、そのスタイルを、完全に否定してしまいました。
その存在を広く知らしめておいて叩き潰したようなものです。

また、批判を浴びるとすぐにお詫びを出して動画を削除したことは、彼のみならずキャンディドフォトを、一歩進んでストリートフォトグラフィーを否定する風潮に同意してしまった可能性もあります。(この文章改訂しました)
富士フイルムには写真文化に関わる企業としてこの責任をしっかりと認識し、改めてしっかりと対応していただけることを望みます。

動画を見て、こんな撮られ方は嫌だという撮られる側の気持ちはよくわかります。
しかしこれは盗撮だ、肖像権の侵害だ、こういう撮影は禁止だ、と何の議論もなく、どんどん進んでしまうことはおかしいと思います。
・これは盗撮なのか、キャンディドフォトはすべからく盗撮なのか
・ストリートフォトグラフィーは肖像権を侵害しているのか
・こういう撮影は禁止すべきなのか
何が問題なのか、それは本当にだめなことなのか、しっかり議論してほしいと思います。

僕は鈴木氏のような撮り方はしませんが、そのスタイルに確固たる信念を持ち戦う覚悟を持って撮影されておられるならそれを否定しません。
自分自身、路上でキャンディドフォト(相手の許可を得ずに撮影すること)を撮ることはよくあります(文章を訂正しました)。いろいろな写真家や弁護士の写真の法律などに関するの本を読み、お話を伺った上でそれが法律違反とは考えていないからです。
ただしキャンディドフォトであっても被写体へのリスペクト、人の尊厳を尊重にすることを自分のルールとしています。常に撮らせていただいた方が見て喜んでいただける写真を撮っているつもりです。

今回、批判に対して写真家からの反論がまだほとんどありません(説得力のある文章を練っておられるのかもしれません)。
黙っていることイコール批判を是としているとして、写真家や写真を撮る側も含めて誰も彼を認めていない、あのスタイルを否定しているという認識になってしまうことに危惧を抱きました。そこで(写真を職業としていない:追記しました)僕などが声を出しても何の影響力もありませんが、少なくともしっかりと意志を表明しておくべきだと思いこの記事を書きました。

参考:東京カメラ部2016写真展 アサヒカメラトークショー
肖像権時代のスナップ撮影 〜番外編〜
アサヒカメラ編集長・佐々木広人xみずほ中央法律事務所代表弁護士三平聡史x東京カメラ部10選鈴木達朗

追記
誤解のないように書いておくとこの記事の主旨は、鈴木氏の撮影スタイルを世の中が認めるべきだということではありません。
写真を撮る行為、もっと言えば撮影に限らずあらゆる行為の許容範囲がとどんどん狭められていく世の中の流れに対する不安の表明です。
LGBTなど多様性を認める世の中になってきたように見えますが、実はそれはごく一部の限られた価値観についてのみではないのか。特定のことでのみ多様性を認めろという風潮も含めて、総体的には価値観の固定化がむしろ進んでいるのはないかという不安です。

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