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銀化9月号より

脛に来て蠅は鰥夫と知つている  大嶋康弘 『銀化 9月号』

季語 蠅 (夏)
なぜ脛なのか。
膝や肘ではなく。肘は蠅にとっては止まりにくい。
膝だと一か所に特定される。
脛なら範囲が広いから蠅はそこを少し移動したのかもしれない。
鰥夫はやもお、もしくはやもめ。独身の男性。または妻を失った男。
この句の場合はどちらだろう。
私は後者を想像したけれど。
句の印象は、少しの寂しさと少しのおかしみを感じさせる。
蠅と人とが対等だ。

風鈴や訃音はいつの他人の死 橋本喜夫  『銀化9月号』

季語 風鈴 (夏)
風鈴の音を誰か知らない人の死を知らせる物、悼む物として聞いている。 訃音はふいん。訃報と同じ意味ではあるが 音の文字が風鈴の音と似あっている。 たまになるその涼やかな音は悲しさを含んでいる。


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