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『変わり続けていくこと』と『変わらないもの』【ニコニコ動画15周年に寄せて】

2021年12月12日に「ニコニコ動画」は15周年を迎えたそうです(見出し画像は15周年特設サイトにあったイラストです)。

YouTubeには全く敵いませんが、「ニコニコ動画」はいちおう国内最大級(国産)の動画共有サイトです。
そもそも「ニコニコ動画」の成り立ちが、YouTube初期に日本から投稿されていたアニメ色の強いマニアックな動画群(MAD)の避難先(隔離先)なので、世界規模であるYouTubeには全く敵わないのは当然です。
元々YouTubeに投稿された動画を引用した「ランキングサイト」のようなものでしたが、日本から「変な動画」ばかり多く投稿されてブランドイメージ的に困ると思ったのかYouTube側が引用を絶ちきったために、専用の動画投稿ツールを開発したのが「ニコニコ動画」の起こりです。

投稿された動画上に視聴者がコメントをリアルタイムで流せるのが最大の特徴です。
その動画の内容に合ったコメントアートを流す人は「コメント職人」、その動画の曲に合った歌詞コメントを演出的に流す人は「歌詞職人」と呼ばれています。
過去に流れたコメントは、量が増えると表示されなくなります(現在は「ニコる」機能で少し改善されていますが)。
間違って流したコメントを自分で削除できる機能がほしいと個人的に思います(打っている途中で流したり、タイミングが遅れることがあるので)。【追記:いつのまにか自分のコメントを削除できる機能が追加されてました!!】

コメントによる独自の文化が「ニコニコ動画」(ニコ動)にはあります。
あるボカロPの方がインタビューで言ってましたが、再生数が少ない時でも、自分が作った曲や動画のワンシーンに反応してくれるコメントが流れるのはとても嬉しく励みになったそうです。
YouTubeにもコメント機能がありますが、どちらかというと映画館で映画を観た後の感想のようであり、YouTubeには動画を黙って観賞する文化があると思います(生配信だと違いますが)。
一方で、ニコ動はコメントが動画上に流れるので、ライブやショーを観て雑談したりザワついたりするようであり、ニコ動には動画をワイワイしながら観賞する文化があると思います。

ドリフの「全員集合」とか、昔の観劇型のテレビ番組では、観客がワイワイしている(多くの子供が「志村うしろうしろ」と言ってる)のが見れますが、それにニコ動は近いのかなと思います。
今でも「笑点」では、木久扇師匠の大喜利に観客が先に答えを言ってしまうことがあるようです。私が以前テレビで偶然その場面を視聴した時には、木久扇師匠がリアクション芸で場をすぐに笑いで収めており、さすがの名人芸でした。

ネタバレをされたり、ツマラナイ・ヒドイ内容のコメントも流れますが、その動画自体が面白ければ、私は気になりません。
むしろコメントによってその動画の持つ面白さ(ポテンシャル)に気づかされることのほうが多いので、ニコ動のコメント機能は素晴らしいと私は思っています(ある意味「集合知」です)。

15周年を迎えたお祝いとして、長期コンテンツにとって大切だと私が考えることを、文章で書いてみようと思います。

変わり続けていくこと

ニコ動は時代ごとにバージョンを変更しています。主にUI(ユーザーインターフェイス)についてですが、デザインの変更や機能追加・削除をしています。
現在まで、
(仮)→(β)→(γ)→(RC)→(RC2)→(SP1)→
(夏)→(秋)→(冬)→(ββ)→(9)→(原宿)→(Zero)→
(Q)→(GINZA)→(く)→(Re)
とバージョンを変更しています。
最初のうちは動作環境の不具合もあってか数ヶ月で変更していましたが、(ββ)から1~2年周期になりました。(GINZA)が5年くらいで長かったと思います。

バージョン変更はよく「改悪」と言われてました。
確かに馴れ親しんだデザインが変わるので、慣れが必要になります。
ただ、私は2年周期くらいでユーザー目線からUIを変えていくのは賛成です。ニコ動のプレミアム会員数の減少など目に見えて勢いが落ちたのは、長くUIを変えなかった(GINZA)の頃だったと思います。

世の中には他にもコンテンツ(競合サービス)が存在する以上、ユーザーにとってより使い勝手が良く、ユーザーがより多く集まる「目新しさ」のあるコンテンツに、人は自然と流れていきます。
「馴れ親しむ」ことには、安心感をもたらしますが、「飽き」も同時にもたらします。時間がたてば「目新しさ」も失われていきます。
「飽き」させない工夫として、コンテンツは時代に応じて『変わり続けていくこと』が大切だと思います。

100年前からある伝統の和菓子でも、お客さんの味覚に合わせて、時代ごとに少しずつ味や食感を変えているそうです。
「三ツ矢サイダー」も、50年前の味のサイダーが販売されていました(私はサイダー通ではないので、細かな味の違いまで分かりませんでした)。
長く続いているモノであっても、時代に合わせてよりよいモノに、少しずつ変わり続けています。『変わり続けていくこと』ができているからこそ、長く続いているのだと思います。

ニコ動のコメント文化で良いところは、同じ動画でも多くのコメントが集まることで、動画の見え方も変わってくることです。
1週間無料アニメでも、投稿直後と1週間終わりでは全くコメントの内容が変わっていることで、面白さも変わる時があります。

始まりは  いつだって  本当に突然で
気がつけば 何もかも変わってく (Brand new wave)
何気ない一言で  空が輝いたり
いつもより  前髪を気にしたり
まるで恋みたい  (恋みたい)
あふれるドキドキで  (ねぇ)  トキメキで
視界ごと 世界ごと  キラキラ
Wow wow  今  Changing!
・・・
私を変えるのは   世界を変えるのは
他の誰かじゃない 『自分自身』
胸を張り 踏み出そう  それだけできっと
Wow wow  今  Changing!

Hello  brand new myself
Hello  brand new smile and start
ここから はじめよう
Brand new wave   Brand new wave
七色 最先端   街中を巻き込んで
Wow wow  今  Changing!
・・・
あと一歩   Step-Step-Step
踏み出して  One Two Three
I change in  Ultra-Colorful


変わらないもの

時代や人は変わってくいくものです。その時々で流行も生まれます。
その中で『変わらないもの』をしっかりと持ち続けていることが、長期コンテンツにとって大切だと考えます。そのコンテンツの「コンセプト」や「基本理念」は『変わらないもの』です。

ニコ動において『変わらないもの』は「投稿動画ランキングサイト」であることだと、私は思います。

ニコ動には100位まで表示される総合ランキングがあり、1時間・24時間・1週間・1ヶ月と、細かく「時間」を分けてランキングを見ることができます。

また、カテゴリー別のランキングでも100位まで見ることができます。
大枠のジャンルカテゴリーと個別の固定カテゴリーがあり、細かく「カテゴリー」を分けて1時間・24時間でランキングを見ることができます。
固定カテゴリーは定期更新され、更新時の人気動画の「タグ」がカテゴリーになります。
ジャンルカテゴリーは総合ランキングと同じように1週間・1ヶ月で見ることもできます。

こういったランキングの充実が、ニコ動で『変わらないもの』であり、魅力だと思います。
再生数の少ないボカロ曲でも、投稿後すぐの1時間であれば、VOCALOIDカテゴリーの100位以内に載る可能性があります。「広告」機能を使えば、発掘される可能性も高まります。
また、ランキングを席巻するようなブームが起きているのもすぐに分かります。ブームに乗っかった動画を作って、狙いのカテゴリーに入るよう「タグ登録」すれば、自分の作品を普段よりも多くの人に視聴される可能性も高まります。

ニコ動のランキングは、昔から「変な動画(日本以外の世界視点で)」を増幅させていると思います。
15年変わらず、有名人ではない一般人が作った動画やニッチな映像作品が、ランキングを通して表に出ることで、ワイワイ楽しむことができました。

ファンメイドの二次創作が多いので、権利者削除との「おいかけっこ」がほとんどでした…。寛容な権利者はありがたいです。
貴重な一次創作である「ボカロ」は、ニコ動にとってありがたい存在だと思います。

15周年特設サイトでも各年代の5位までのランキングが載っていますが、ほとんど「ボカロ」です。2007年の「陰陽師」や「ハイポ」は懐かしいです。
その中で2020年の1位「たべるんごのうた」は輝いています。ニコ動の最初期から独自の動画群を形成した「アイマス」作品をランキングに載せることができました。
同じく「ニコニコ御三家」である「東方」作品も、「Bad Apple!!」が2009年の1位に載っていました(最初は「落書き」でしたが、「イラスト」化された動画が投稿され、集大成として「影絵」動画が投稿されました。今では「東方」を代表する動画です)。
「ボカロ」以外だと、やはり「ゲーム実況」と「歌ってみた」が強いなと思います。

例えば、100年前からある和菓子を形まで全く変えてしまうと「別物」になってしまい、古くからのファンは離れてしまうと思います。別の名前の和菓子(商品)として売るべきです。
味や食感を少し変える程度ならよいですが、リニューアルした結果「別物」として認識されてしまうものになると、そのコンテンツから人は離れると思います。「別物」であれば、元のコンテンツとは異なる別のコンテンツとして提供すればよいと思います。

さまよう時の中で  君と恋をした
・・・
形ないもの  抱きしめてた
壊れる音も  聴こえないまま
君と歩いた同じ道に
今も『あかり』は照らし続ける

変わらないもの  探していた
あの日の君を  忘れはしない
時を超えてく『想い』がある
僕は今すぐ 君に会いたい


まとめ

以上、長期コンテンツにとって『大切なもの』は何か、私の考えを書いてみました。
『変える』か『変えない』かの判断は非常に難しいです。だからこそ、判断に迷った時は「コンセプト」に立ち返ることがとても重要だと思います。
どんなコンテンツもいつか終わりがきますが、好きなコンテンツは長く続いてもらいたいものです。


長くなりましたが、最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

あたたかい  人の優しさに  僕は答えられているのだろうか
この旅が  終わる頃には  その答えも見えてくるだろう

この空の下  同じ星 見上げて 悩む僕らは
夢をにぎったまま  泣き笑い 支えあい  信じてく
・・・
変わりゆく日々が  僕らに不安の色をもたらそうとも
染まらずに 今は 歩く  自分の意志  道しるべに

この空の下…
この空の下  かけがえのない『大切なもの』

これからも、一般ウケは期待できないけど刺さる人には刺さる動画(謎の流行)や、ニコ動で地道に力をつけてYouTubeで大きく飛躍する動画投稿主(逸材)が出てくるのを期待しています。

ニコ動15周年おめでとうございます!!

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