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地盤の課題と可能性に関する声明

土木学会事務局です。

公益社団法人土木学会(会長 上田 多門)は、2022年9月20日、「地盤の課題と可能性に関する声明」を公表いたしました。

本声明は、土木学会会長を委員長とし、地盤関係者のみならず、地下水や地質の関係者、都市開発や法理論などの有識者など幅広な立場の人が参画した「地盤の課題と可能性に関する総合検討会」において、土木技術者や学生、ならびに地盤問題に興味を持つ一般の方々に向けて取りまとめたものとなっております。

以下、声明の全文を掲載いたします。

1. はじめに

戦後復興から高度経済成長、そして成熟期と、我が国では他に例のないスピードでインフラ整備と土木・建設技術が発展を遂げ、世界に誇る大深度・大土被り・長距離トンネルや巨大人工島などが建設されてきた。しかし、最近、トンネル陥没事故や盛土崩壊など地盤関係のトラブルが、技術的に高難度工事の増大や、設計・施工の合理化やコストダウンの追求、あるいは豪雨頻度の増加に代表される環境変化の結果として、少なくない頻度で生じている。

そうした地盤や地下が抱える問題には本質的に未知の要素や、予め知ることが困難な不確実な要素が多く、裏返せばそれら未知の要素は土木の将来発展と知的魅力の原動力にもなる。そこで、土木学会は、地盤の問題と可能性について俯瞰的に意見交換する場として、地盤関係者のみならず地下水や地質の関係者、都市開発や法理論などの有識者など幅広な立場の人が参画する「地盤の課題と可能性に関する総合検討会(委員長:土木学会長)」を設置した。

活動のマイルストーンとして、土木学会として将来に向けたメッセージを発信することを掲げ、2021年1月から本格的な活動を始めた。2か月に一度の頻度で地盤や地質,および関連分野に見識が深い方々による話題提供と議論を重ね、地盤の抱える特異性,問題点を再整理しつつ、あらためてその魅力や発展可能性を見出すに至った。

この度、その要点を土木技術者や学生、ならびに地盤問題に興味を持つ一般の方々向けの「声明」としてまとめた。

2. 地盤に関する現状認識と課題

1) 地盤の有する「基盤性」  地盤は、水や大気と並んで、人間も含めた多くの生物活動の「基盤」であり身近な存在である。特にインフラ施設にとって、地盤は構造物を支えるとともに構造物に荷重作用をもたらし、盛土や堤防などそれ自身が施設として機能を発揮する。また、エネルギー生産、エネルギー生成後の副産物の貯留・固定も含めた多様な利活用がなされている。これほどの基盤的存在は地盤をおいて他にない。

2) 地盤の利用需要とその意味  空間価値の高い都市部では地下をも積極的に利用するニーズが高く、また利用形態は重層的でかつ輻輳を極める。したがって、地盤構造や性状の理解と地盤利用および地盤情報管理の適切性は、 都市の合理的な空間利用の可否に決定的な影響を及ぼす。

3) 地盤の脆弱性と災害・事故  一方で、地盤は、盛土やトンネルあるいは自然斜面・自然渓流などにおいて、地震動や降雨などの自然作用あるいは施工に際しての人為作用によって、崩落や陥没などを発生させ、被害をもたらす可能性を有する脆弱かつ未知要素の多い存在でもある。実際、様々な災害や事故が発生しているのが実情である。

4) 地盤と工期・工費の変動性  地盤は、①基本的には自然物であること、②不均質性が高いこと、③地域性や多様性を有しており個性を持った存在であること、④その性状を予め細部にわたって知ることが極めて困難であること、そして⑤未解明要素が多いことなどの諸特性を有し、これらは地盤問題における不確実性をもたらしている。特に、大規模な土木工事においては、自然条件あるいは社会条件の影響に起因して工費や工期の大幅な増大・延長に繋がり大きな経済損失の主たる要因となっている。

5) 我が国の地盤とそれを取り巻く環境の苛酷さの認識  我が国を支える地盤とそれを取り巻く環境は、その成立における地質学・地理的条件から、大陸諸国に比較して異なることを認識する必要がある。海岸線が長く、急峻な山地が多く、人口密度の高い大都市域の多くは沖積低地部の軟弱地盤上に立地している。また、土や岩石が堆積して今日の地盤を形成するまでの間に、ヒ素、鉛、フッ素などの重金属などが混入される場合が見られる。世界有数の地震国であること、多雨で台風の襲来も多いことから盛土や造成、地下掘削が関わるようなインフラの整備に当たって、直面する様々な課題は、他国に例を見ないものも多い。

3. 地盤分野に求められる基本的姿勢

6) 土木工学におけるハブ『地盤』  上記2.で述べたように地盤問題は、国土・都市計画から構造物の計画・調査・設計・施工・維持管理まで、国土やインフラに関わるすべての分野に共通する重要事項であり、あらゆる分野の研究者や実務者がその重要性を深く認識し、その科学的解明と技術的・政策的展開による問題の改善に協力してあたることが強く求められる。

7) 汎土木工学フロンティア『地盤』  そのような意味で、『地盤』は現代の顕著な「汎土木工学フロンティア」である。土木学会はこのような認識に立って、学会内の多様な分野の統合的な協力を図ることにより総合力を発揮するとともに、地盤工学会をはじめ他の学会や技術団体ともこれまで以上に協力しながら、地盤分野における科学的解明と技術的・政策的展開を大幅に加速させることが強く求められる。

8) 土木工学の拡張フィールド『地盤』  その際には、『地盤』を単に土木工学の一分野と位置付けず、従来のような狭義の地盤工学の視点のみから捉えるのではなく、地形学、地質学、地球物理学などを含めて拡張的に理解し、土壌学、生物学、生態学などをも隣接領域として積極的に捉え直していくことが必要である。

4. 地盤を取り巻く課題に対する処方箋
 ―将来に向けた対応策―

4.1 研究・技術開発

9) 地盤工学への「知」の投資とリターン  地盤工学の分野は、明らかにされていない地盤現象も多く、さらなる大深度、大空間への展開など、未知への挑戦の余地がある。また、土の力学は土粒子、間隙水、間隙空気の三相混合体として記述されるものの、地盤のせん断強度、地盤の支持力に関して、実際の設計では間隙水や間隙空気の存在を無視した評価から脱却できていないなど、研究により学問を進化できる余地も多分に残されている。このような地盤工学は、研究・技術開発による大きな「知」のリターンが期待できる、魅力的な「知」の投資対象と言える。こうした投資とリターンのサイクルを回すような枠組みを考案・構築し運用する試みも、 若手技術者に対する魅力にもなり重要である。

【a. 地盤調査法・シミュレーション技術】

a-1) 見えない地盤を見える化する技術  種々の物理探査など地盤調査法があり、それらの情報から二次元での地盤情報の可視化が行われてきた。現在では、三次元での可視化技術も進んでいる。一方で、調査法が様々であり、それらを統合的に解析して可視化されることは希である。また、時間の経過を含めて四次元での地盤の可視化を実施していくべきである。

a-2) 地盤モデルの精緻化・高度化  日本は、先駆的に地盤の応答のモデル化に取り組んできた。設計・施工法が多様化する中、地盤の応答の精緻化が求められ、また、計測技術の高度化に伴い、これが可能となってきている。「地盤モデルの精緻化・高度化」は、いつの時代も言われているし、今後も追及され、地盤のみならず地盤と構造物の相互作用の解明にもつながるであろう。固体の力学だけなく、ダルシー則にとらわれない流体の扱い、熱輸送問題、長期挙動に対する化学反応など、これらの問題を統一的に取り組むひとつの方法が連成モデル、連成シミュレータの開発である。

【b. 脱炭素社会に対応した地盤関連技術】

b-1) 地熱エネルギー 地熱は、エネルギー資源が乏しい我が国の現状や、温室効果ガスが発生しないエネルギーであることを考えると、今後重点的に研究・開発されるべきものである。一方で、地熱源があるにもかかわらずエネルギー生産が伸びないのは、政府の開発エネルギー政策方針・法整備・生産計画が不十分であると考える。このようなエネルギー政策、法整備についても研究を進める必要がある。

b-2) 着床式・浮体式 洋上風力発電設備  再生可能エネルギーとして、今後我が国でも着床式・浮体式洋上風力発電施設の建設が進むと考えらえる。その実現のためには、波浪や風などの外力に耐える基礎や係留構造を構築する必要がある。この分野においては、ヨーロッパでの検討と適用が先行しているが、我が国沿岸域の地盤条件や地震による影響を考慮した設計法を確立していく必要がある。

b-3) 二酸化炭素の貯留・固定  脱炭素化の推進策として、二酸化炭素の排出量抑制とならび、二酸化炭素を回収して地中内に貯留する技術(CCS:Carbon dioxide Capture and Storage)が挙げられる。効率的に貯留を行う施工技術、安定的に貯留されるかの評価技術などの開発が、地盤工学が取り組んでいくべき課題の一つとなる。

b-4) エネルギー生成後の副産物貯留・固定  原子力発電所で発生した副産物の処分として、地中深くに貯留することが議論されているが、これは 待ったなしの課題である。

【c.  土構造物の再認識と積極的利用】

c-1) 土構造物の再認識と建設発生土のリサイクル  土構造物は、主に土、岩といった自然にある材料を用いて構築されることから、環境負荷が小さく、自然にやさしい構造物で究極のグリーンインフラといえる。一方で、地下空間の開発、各種インフラ整備に伴って発生する建設発生土を適正に処理することが必要である。また、津波や河川氾濫などの災害が発生すると、堆積物の分別処理にともない大量の土砂が発生し、その適切な活用は大きな課題となる。それらのリサイクルを推進するために、ICTの活用及びリサイクル材料としての特性や性能に関する研究開発を展開する必要がある。さらに、将来に向けて各種インフラ整備においても、土構造物の積極的な採用を検討することが重要である。

10) 地盤分野のチャレンジ体制  地盤分野の未知の要素を解明し、土木の将来に向けてチャレンジする姿勢が重要である。そのためにも、地盤分野の新技術の積極的活用、公共事業におけるパイロットプロジェクトの充実、大規模地下インフラによる技術のイノベーション(無人化、遠隔施工、AIなど)を進めながら、カーボンニュートラルに貢献する地盤・土構造物を創造することを実践する体制を強化することが重要である。特に、大規模なプロジェクトにおいては、「国家的プロジェクト」と位置づけ、人材の育成も視野においた検討体制、入札契約の特例、産官学による新技術の共同研究と開発された技術の導入などの方策を検討する必要がある。その実践に向けては、産官学が集う「学会」ならではの場が、統合的な協創を具現化する環境をもたらすことができる。けん引役としての土木学会の機能に大きな期待が寄せられる。

11) 新技術の積極的導入の実践  地盤関連の新技術に対し、コードライターやメーカーの理解・関心が低く、既存の技術の上で満足している面が否定できない。結果として若い技術者が挑戦しようとしない環境を醸成している可能性がある。合理的で経済的な構造の技術を開発しても、実現場への適用には長い年月と忍耐が必要で、そのような技術開発分野に若手技術は興味を示しにくい。その行く末として没落する技術分野となる懸念があることを認識して、他の産業分野の技術を積極的に取り込み、施工の高度化を進めることを躊躇してはいけない。

4.2 教育・資格

12) マニュアル化の有効性と限界の認識  地盤そのものや地盤の中に作られた構造物については、各種設計法とマニュアルが整備されてきたが、地盤をどのように取り扱っているかの理解が設計者に伝わらないようにマニュアル化されているものも多く、複雑な地盤や構造物が対象となる場合や、問題が発生した場合に対応できない。このような課題に対しては、土木学会が中心となって設計法などの背景が分かるような解説書を整備することが有効である。あわせて、地盤と構造物の設計に携わる者は、マニュアルの有効性と限界を理解すべきである。効率的かつ合理的な実務につながるようにうまく適用し、また設計法やマニュアルの適用外の場合でも適切な判断ができるように、地盤工学の知識を向上させることが重要である。

13) 地盤工学の知識向上と知識の認定  地盤と構造物の設計・施工に携わる者に、地盤の理解が不足しており、誤った考え方やそれに基づいた判断が横行していたり、発注者側の技術者に技術力が欠落し、発注した仕事が正しく設計されているかの判断ができていなかったりする場合が少なからず存在する。正しい判断力は、地盤と構造物の発注、設計、施工には不可欠で、土質・地盤にかかわる基礎学力、技術力が必要となり、学力や技術力の評価指標として、土木学会による認定技術者制度がある。このうち地盤工学が直接的に関係するものとしては「土質・基礎」、「トンネル・地下」が挙げられるものの、多様化・複雑化した地盤技術の現状を考慮し、素地を備える技術項目に応じた資格対象の分類を検討する必要がある。

14) 地盤分野における総合知習得の強化  土木技術者として、また、地盤にかかわるものとして、可視化した地盤がどこまで正しいのかを判断をするうえで、対象地盤の生い立ち、履歴書のようなものが理解できることが望ましい。さらに地盤分野における総合知習得を強化するために、地質学・地球物理学・火山学・地形学・土壌学など幅広い見識を習得できるような技術者教育プログラムを提示すべきである。

4.3 入札・契約

15) 施工関係者の設計段階からの参画  実際の施工を想定せずに構造物の設計を行い、施工に想定以上の費用がかかり建設費の増大を招いた事例がある。設計段階から施工者が協力して、仕様などを明確にしながら設計を固めていく入札方式の推進は改善策の一つであるが、設計・施工を一括した技術提案の導入などとともに、事業全体の最適化に寄与する契約形態の活用が推奨される。調査者の設計へのかかわりや、設計者の調査への再確認も、事業全体の最適化には大いに寄与することを認識すべきである。

4.4 調査・施工マネジメント

16) 地盤調査管理の重要性 設計・施工に先立つ地盤調査の内容や数量は、工期や費用の制約で抑制される傾向にあり、地盤の不確実性に対して常に十分な情報が得られるとは限らない。設計や施工のレベル、ならびに当該地域の地盤の不確実性に応じた地盤調査の仕様を明確にする技術・ノウハウを確立すべきである。

17) 施工マネジメントと地盤調査の重要性  地盤に関わる施工にあたっては、橋梁など上部構造が基本にしている設計から施工という単純なプロセスによるべきではなく、緻密な観測モニタリングとそれに基づく施工チューニングを一体化させる慎重な「施工マネジメント」の徹底によって、適切な方法選択とともに安全性を出来る限り確保することを原則とすべきである。あわせて、広域かつ詳細な地盤状況の調査の難しさが緻密な観測モニタリングを困難にしている点に対して、地盤の様子(地質や水位)を安価で広域かつ詳細に把握できる技術の開発が望まれる。

18) 地盤リスクマネジメントの実践  地盤や地下問題には本質的に未知の要素や予め知ることが困難な不確実な要素が多いので、地盤・地質リスクの評価の実績の蓄積と発注者側の理解が不可欠である。発注者、受注者の対等な関係のもと、地盤・地質リスクマネジメントを本格的に実践することが重要であり、そのために地盤・土構造物などのリスク情報の整備と地盤データに基づく国土管理が求められる。具体的には、3Dデータに基づく調査・設計・施工・維持管理の連動が望まれ、施工時のデータ更新とメンテナンスへの活用、ならびに将来の持管理者を想定したデータの絞り込みとシステムの開発にあたることが有効であると考えられる。

4.5 地盤データの整備・活用

19) 地盤情報の国民的共有化  これまで、地盤工事のために様々な地盤情報を収集している。さらに、土構造物の詳細や工事記録、工事におけるトラブル情報、地盤状態が難しい中での施工事例なども、今後に活かせる重要な情報である。したがって、種々の工事で明らかになった情報(地盤情報、地下水情報、工事記録など)はデータベース化し、官民を問わず国民的共有資産として位置づけ、誰もが利用可能なデータストックとして総括管理すべきである。その活用により、地盤工事における不確実性を少しでも低減させることができ、さらに、情報を共有することで多様な議論が進み、地盤工学のさらなる発展も期待される。データベース化については国土交通省や各種研究機関などによって従来から検討されてきたところであるが、なお一層の本格的推進が求められる。

20) データの統合的な解析による可視化  地盤・地下空間に関する各種データは、多くの人(組織)から集めることが可能である。それら質の異なるデータを単に 保存するだけでなく、統合的に分析・管理する必要がある。地盤工学会では災害調査でDIAS(Digital Integration and Analysis System) を活用している。データの収集だけでなく、種類の異なるデータを統合的に解析して可視化することが望まれる。

21) 維持管理段階における地盤と構造物の履歴書の活用  地盤が関わる構造物の維持管理において、施工時の情報が十分に保存されておらず、判断に苦しむ場面が多々ある。地盤情報を統合化し可視化するだけでなく、設計や施工の履歴情報とリンクした維持管理システムの構築が必要である。

4.6 法律など制度の確立

22) 地盤条件に関わる受害性・発害性と立地・開発管理  ある場所における地盤条件は、水理条件とともに、その場所に立地する行為によって被害を受ける可能性(=受害性)やその場所を開発する行為がハザードをもたらす可能性(=発害性)に大きく影響を及ぼす。こうした受害性と発害性の視点に立って、適切な立地管理や開発管理を行う体制や制度を強化・充実することが必要である。

23) 持続性重視の地下空間開発  土木構造物はスクラップ&ビルドが難しい。地下空間は特にそうである。一方で、構造物が老朽化していくのは自然な流れである。空間を造るだけでなく、人々の生活を創るという考えに立って、時代の変化をとらえた地下空間の利用を考えられる環境整備が必要である。

24) 法整備の必要性  今日に至るまで社会的要請に応じて法整備は進められているものの、地盤を多様・多彩に利活用していくことを想定する必要がある。輻輳する地下空間を有効に利活用するために、さらなる法整備が必要である。

5. おわりに

近年日本各地では地震災害が頻発化し、線状降水帯などの雨の降り方の変化による河川の氾濫や斜面崩壊、土石流の発生が数多く報告されている。人々の暮らしを守り豊かにする土木の目標を実現するためには、構造物を作る・守る場合とも、地盤の状態を調査と診断によって正しく把握する(可視化する)ことが不可欠である。医療分野に照らし合わせれば、見えない内部の状態を探る行為は共通であり、検査による診断と可視化を不十分なままに手術を実施する外科医はいない。地盤の状態を可視化するためには、地盤情報の国民的共有化、データの統合解析、維持管理における『地盤と構造物の履歴書』の活用が肝要である。

本声明で示したように、『地盤』は、国土・都市計画から構造物の計画・調査・設計・施工・維持管理まで、国土やインフラに関わるすべての分野に共通する「土木工学におけるハブ」であり、様々な形で関与する研究者や実務者がその重要性を深く認識し、その科学的解明と技術的・政策的展開による問題の改善に協力してあたることが強く求められる。また『地盤』は現代の顕著な「汎土木工学フロンティア」であり、土木学会は、学会内の多様な分野の統合的な協力、並びに地盤工学会等他学会や技術団体とのより広域的な協力を図りながら、地盤分野における科学的解明と技術的・政策的展開を大幅に加速させる必要がある。さらに『地盤』は、従来のような狭義の地盤工学の視点のみから捉えるべきものではない「土木工学の拡張フィールド」であり、地形学、地質学、地球物理学などを含めて拡張的に理解し、土壌学、生物学、生態学などをも隣接領域として積極的に捉え直していくことが必要である。

本声明で示した『地盤』を、「土木工学のハブ」として位置づけ、「汎土木工学フロンティア」との認識を持ち、「土木工学の拡張フィールド」と捉え直せば、2014年に示された土木学会創立100周年宣言の「あらゆる境界をひらき、持続可能な社会の礎を築く」ことの具現化となる。また、100周年宣言では、最も大切と考えることとして「幾多の困難にも、責任を持って立ち向かえる人材を育てる」ことを掲げている。本声明を一つの契機として、これをあらためて意識し、挑戦心旺盛な若き技術者・研究者・実務家が産官学の各分野で育つことを期待したい。



記者会見当日の質疑の模様を施工の神様で記事化いただきました。(2022/10/25追記)


国内有数の工学系団体である土木学会は、「土木工学の進歩および土木事業の発達ならびに土木技術者の資質向上を図り、もって学術文化の進展と社会の発展に寄与する」ことを目指し、さまざまな活動を展開しています。 http://www.jsce.or.jp/