見出し画像

部下に退職されたブログ 〜去られる側の気持ちと贈る言葉〜


私がリーダーをやっていたチームに在籍していた、しのださんが退職した。

そして退職ブログを書いていた。



そういえば退職した人のブログはよく見るが、退職された側のブログを見たことがない。

おそらく、退職されることが悪い印象を与えると思われているからだろうが、今回の退職は非常に前向きな退職だったし、彼女のブログを見てもうちの会社をとてもポジティブに捉えてくれている。

なので思い出や今の気持ちを残しておく意味でも、そしてしのださんへ贈る言葉としてもちょうど良いので、個人的に「部下に退職されたブログ」を書いてみようと思う。



しのださんはインターンを含めて3年ほどうちの会社で働いたが、私がよく話すようになったのは、新卒で入社した後にしばらくしてうちのチームに配属された昨年の9月ごろからだった。

配属されると決まってから彼女の評価を周りに聞いてみると「やりきり力が高い」と皆が口にしていた。

実際、配属される前にやったプロジェクトでは、大きな成果を上げていた。



「けっこう優秀っぽいなー」「自信家タイプなのかなー」「一応ナメられないようにしなきゃなー」と思い1on1を設定して話してみると……。

「私、全然自信がないんです。」

とても謙虚で自信の無い素直な女性だったので、想定していた印象と違い少し驚いた。

自信がないゆえに、行動でカバーをする、そんなタイプだと感じた。

そして自身の課題感について深く理解していて、「俯瞰力を身に付けたい」「技術やデザインなどの知識を身に付けたい」と言われた。



私のチームは、会社で販売しているtoB向け商品の開発をしていた。

商品の性質として、メディア側とビジネス側を横断して思考しながら開発を進める必要がある。

つまり彼女が身に付けたいスキルを獲得するのにはうってつけのチームだった。(だからこそ、私のチームの配属になった)



彼女にまず1つタスクを振った。

一緒に仕事をしないと実際のスキルやスタンスを見極められないためだ。

タスク量的にやり終えるのに1週間くらいかかるかなーと思っていたのだが、2,3日で仕上げてきたので驚いた。

またアウトプットの質としても、完璧では無いにしろ、申し分無いレベルだった。



タスクの進行も問題なく、コミュニケーションも積極的に取ってくれていたので、彼女に開発プロジェクトのディレクションをまるっと任せることにした。

私はディレクション歴が長いので、最初のキックオフの重要性や、どのように進めるとよいかなどの概要のみを伝えて、あとは基本的に彼女がやりたいようにやってもらった。

もちろん他のチームメンバーには事前に彼女に任せる旨や、協力依頼などをした上で。



最初はなかなかうまくディレクションできておらず、リリースに向けたテストが不十分だったり、コミュニケーションすべき人と適切にコミュニケーション取れていなかったりした。

なので定期的に1on1をしてフィードバックをしつつ、進め方のアドバイスもしていった。

私はあまりマイクロマネジメントは得意ではないし、彼女は特に「自信はないけど意志は強い」タイプだったので、役割だけ与えて放っておくようにしていた。

時々、成果物をチェックはしていたが、私の承認がないと進められない、という形にはせず、気づいたらアドバイスをするような進め方だった。

彼女は淡々と仕事をこなし、ドンドンうまくディレクションできるようになっていった。

結局辞めるまで5ヶ月ほどだったが、5つほど大きめのプロジェクトを回しきってくれた。

大きな事故もなく、新卒としては素晴らしいクオリティのディレクションだった。

本当に成長力が高かった。



こんなエピソードがある。

私は昨年の10月頃から、自分のTwitterアカウントを本格的に運用し始めた。

ある時、私がこの記事をシェアした。

1週間で1000人増!Twitterのフォロワーを増やすためにやった16のこと【完全保存版】

彼女も私のアカウントをフォローしてくれていたのだが、彼女はこの記事を読み、その通りにTwitterの運用を始めた。

最初は私のほうがフォロワーが多かったはずだが、あっさりと追い抜かし、今では4000フォロワーに迫るほどだ。

彼女は「やる」と決めたらやり抜く女性だ。



そしてオモシロイと思ったことには、積極的に協力してくれる女性でもあった。

私が運営している「コンテンツ飲み」というコミュニティがあるのだが、そのイベントも2度ほど手伝ってくれた。

彼女自身もコミュニティを運営しているため、他のコミュニティがどのように運営されているかに興味を持ったようだった。

イベントの第3回目のときに「これからのSNS」というテーマだったこともあり、フォロワーが劇的に増えていた彼女に登壇してもらい、この3ヶ月で2000以上フォロワーを増やした秘訣を話してもらったりした。

仕事以外で一緒にプロジェクトを進めるのは、なんだか共犯者のような独特の楽しさがあった。



彼女は前から「フードロス問題」に強い興味を持っていた。

私とやったイベントで残ったピザを全て持ち帰るほど、徹底してフードロスを無くそうとしていた。

また、彼女が今回転職した先である、フードロスの解決をするための事業をしている「TABETE」は、転職をする前からダブルワークをしていた。



ある時「しのだが辞めて、TABETEに行く」と私の上司から聞いた。

そう決まるまでに、彼女の中にもかなり葛藤があったとも聞いた。

その話を聞いた時、悲しかったがうれしさもあった。

彼女は意志が強く、きっとフードロス問題にだけ取り組みたいと思ったことが何度かあるはずだった。

しかし自身の成長の観点でうちの会社を辞めるのはどうなのか……そう思ってくれていたからこその「葛藤」だったのではないかなと。



だが、彼女も「やる」と決めたらやり抜く女性だ。

辞めると聞いてから1on1をしたが、辞める決断をするまでの話を聞き、彼女の意志の固さが確認できた。

退職ブログにもこう書いてあった。

このまま残っていれば、ディレクターとしてもっと力をつけられたことは間違いありません。でも、「自分がやりたいこと」が目の前にあって、それに「自分が関わることができる」状況をどうしても無視することはできませんでした。
自分は小学校2年生の時に2年間白血病を患い、一度死にかけたことがあります。だからこそ、明日いつ死ぬかも分からないから自分のやりたいことには忠実でいたい。機会損失をしたくない。

私が同じ立場だったら、きっと同じ判断をするだろう。

そう思えて、止める気持ちになれなかった。



もちろん、会社として、そして同じチームのメンバーとして、止めたい気持ちは強くあった。

彼女がうちの会社で成長するイメージはあったし、何より一緒に働いていて楽しかった。

しかし、やりたいこと、しかもリスクのあるジャッジをした人を止めるのは野暮だ。



彼女がうまくいくかは分からない。

けどうまくいくことが全てでもない。

とはいえ、彼女の成長力をもってすれば、きっと最終的に成功してくれると信じている。



最後に彼女へ「承認欲求に飲み込まれないでほしい」「自分を貫いてほしい」という2つの言葉を贈りたい。



まず「承認欲求に飲み込まれないでほしい」について。

今彼女は、Twitterのフォロワーが急増し、多くのいいね!やRTをもらえる立場にいる。

ただ、手軽に承認欲求を満たせるからこそ、大きな行動に移せなくなってしまうのはもったいない。

ポスト平成のキャリア戦略」にこのような一節がある。

SNSはナルシスの鏡のようなもので、(中略)小さい喜び、自己承認を安易に得られてしまう。そうすると、自分がかわいくなってきますし、何かリアルの世界でリスクを取る意欲が萎えていきます。

これだけ大きな決断をする彼女なので、心配は無いかな……と思いつつ、いかんせん「私、承認欲求高いんです(どやっ」と面と向かって言ってくるタイプなので、念のため伝えておきたい。

承認欲求に飲み込まれてしまうと、せっかくの今回の決断がムダになる危険性もあるからだ。



あと「自分を貫く」について。

彼女はもともと自信があるわけではなく、今回の決断も最初迷いがあったようだった。

その自信の無さを他人に利用されないでほしいなと思う。

人は時に弱っていると、人に頼ってしまいがちだ。

もちろん時に頼ることも必要だが、すべてを他人に委ねるようなことはしないでほしい。



彼女がFacebookで(お世辞かもしれないけど)このように書いてくれたのは本当にうれしかった。

退職者が出た会社やチームの上司は、評価が下がるのが一般的だろう。

でも退職したメンバーが羽ばたき活躍すれば、世の中のためにもなるし、ポジティブな退職なら、将来彼女ともっと面白いことができるかもしれない。

そして回り回って、そんな彼女を輩出した会社の評判も上がるから、みんながHappyになるはずだ。

少なくとも私が関わったチームのメンバーは、そういった人材になっていく……そんな風にこれからもマネジメントしていけたら良いなと考えている。

逆に働く立場として、自分が退職した時に会社が気持ちよく送り出してくれるような働き方をせねば、と今回の一件で改めて気を引き締めた。



彼女とまた素敵な共犯者になれるように、そして尊敬され続けられるように、自分も面白いことをどんどん実行していくつもりだ。



★しのださんのTwitterアカウント退職ブログはこちら。

★Twitterをやっています。noteのネタのタネを発信中です!


だいたいスターバックスで、あえてホットティーを飲みながらnoteを書いているので、ホットティー1杯くらいのサポートを頂けたら、こんなにうれしいことはありません。