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【ロシア留学体験談】Part 2

 こんにちは!

 東北大学日露交流サークルです。今回も前回に引き続き、東北大の大学院生Tさんのロシア留学体験談をアップしていきたいと思います。今回の記事は、モスクワでの短期語学留学を終えたTさんがいよいよウラジオストクの極東連邦大学へと長期の交換留学に行ったときのお話になります。記事は前回同様、佐藤が担当します。

・いざウラジオストクへ

 Tさんのロシアへの長期留学は2019年2月~12月の約10か月、ウラジオストクの極東連邦大学へ交換留学という形で行われました。ウラジオストクはロシアの東の端に位置する港湾都市で、日本とは距離的にかなり近いです。東京から2時間半のフライトで着いてしまうため、「日本から一番近いヨーロッパ」という表現もなされるほどです。

 またこの時、Tさんは大学から留学用の奨学金を獲得していったそうです。たとえ交換留学であっても長期になるとそれなりにお金がかかる場面も増えるので、こうした学内外の留学用の奨学金制度は活用するに越したことはありません!今後、ロシアに限らず海外の大学へ留学をお考えの方は是非色々調べてみてください。

東北大学 グローバルラーニングセンター「奨学金情報」https://www.insc.tohoku.ac.jp/japanese/preparing/scholarship/

 都市としてのウラジオストクは半径1㎞に市街地が収まるくらいのコンパクトな街で、Tさんいわく「日本のさびれた港町…」のような印象であったそうです。また、短期留学で行ったモスクワと比べると治安があまりよくなかったそうで、留学先の大学内でもドラ〇グ関連を含む事件が度々起こっていたそうです。もちろん、危険なことに自ら首を突っ込まなければ安全な留学生活を送ることができますので、過度な心配は無用だと思われます。ウラジオストクは港町ということで貿易・外交関係の会社が多く、現地に駐在している日本人も比較的多い街ということでした。

・留学先での学業

 留学先での学業に関しては語学のクラスとゼミ形式のクラスがあり、前者が主だったそうです。基本的に、1日1.5時間×2コマくらいの授業があり、休日はオフとなります。

 Tさんにとって特に新鮮だったというのが、ゼミ形式の授業への参加です。授業はもちろんロシア語で行われる上、考古学や民族学のような専門的な議論が行われるため、最初は全然議論の内容が頭に入ってこなかったということでした。しかし、そんな専門的な議論も最終的には5割くらい理解できるようになったそうです。慣れもあると思いますが、Tさん自身の努力によるところも大きかったものと思われます。また、こうした場面では時たま日本の事例についての意見を求められることもあったようで、そうした質問が来る度に苦労してアンサーしていたそうです。留学先で日本のことを聞かれるというのは留学あるあるですが、それを英語以外の現地語で返答するのはなかなか大変な作業だと思います。しかし、非英語圏ではほぼ100%遭遇する出来事ですので、心積もりはしておかなければならないかもしれませんね。

・日常生活

 ロシアへの留学生は基本的に学生寮に入ることになるそうですが、多くの場合2人部屋で、ルームメイトとの共同生活を送ることになります。もちろんルームメイトは選べないのですが、Tさんいわく「当たりはずれがある」そうです。そして残念ながら、Tさんの最初のルームメイトは明らかに「はずれ」でした。夜中に爆音でスピーカーから音楽を流す、トイレを汚す・流さないなど…、性格の合う合わない以前の問題だったとTさんは述懐します。前回の記事(Part 1)で留学先での出会いは一期一会だと書きましたが、それが良い方向にも悪い方向にも働く場合があるのだということをTさんの話を聞いて思い知らされました。しかし、半年後に部屋替えがあり、同じ日本からの留学生とルームシェアすることになり、不満は解消されたそうです。

 毎日の食事は基本的にずっと外食で、Tさんには行きつけのお店が5つほどあったそうです。とくにそのうちの中華料理屋のヘビーユーザーだったそうですが、ウラジオストクは中国や北朝鮮との国境地帯に位置しているので中華料理屋や韓国料理屋が比較的充実しているようです。もちろん、ボルシチをはじめロシア風の料理もよく食べたということで、Tさんいわく特にロシアの肉料理は日本人の口にもよく合うということでした。レートは常に変動しますが、2019年当時は単価も安く、1食500円以内に収まっていたそうです。それくらいなら学生の財布にもやさしいですね!

 休日の過ごし方としては、授業の予習や研究・調査以外には、街の中心部の大きなスーパーマーケットに買い物に行ったり、博物館や美術館を回ったりしたそうです。また、ウラジオストクには大きな中国人市場があり、ありとあらゆる雑貨類が売られていたということでした。Tさんが休暇のハイライトとして挙げたのが短期留学で知り合った友人とのノヴォシビルスク旅行で、3泊4日で現地の様々な博物館を見て回ったそうです。ロシア国内を飛ぶ国内線は割高であるそうですが、せっかく留学に来たら少しは国内旅行してみたいですよね!

 さて、ロシアの冬に入国し次の冬に出国したTさんですが、ウラジオストクの冬はどれくらい厳しいものだったのでしょうか。Tさんによれば、冬の気温は平均して-2℃ほどですが風が強いため体感温度はぐっと低くなるそうです。ただ、大学や寮をはじめとした建物内は暖房が入るので冬でも厚着するする必要がないほどです。防寒具も一式必要になりますが、Tさんの場合コートだけ日本から持参し、帽子やブーツは現地で調達したということでした。かさばる荷物はそのまま留学先に置いてきてもいいかもしれませんね。一方、ウラジオストクの夏は30℃前後まで気温が上昇するため、夏は夏でしっかり暑いということでした。

・ロシアとロシア留学の魅力

 ここまでウラジオストクの極東連邦大学へ長期留学したTさんのエピソードを簡単に紹介してきました。短期留学と合わせて約1年間留学したTさんが考えるロシアの魅力とはいったい何なのでしょうか。Tさんはそれを「人のおおらかさ」であると答えます。彼が体験した実際のエピソードとして、本屋で不足分の小銭を全然知らない別の客が出してくれる場面や、道に迷った人に親切に道案内をしている場面に出くわしてそうした印象を得たようです。事務手続き全般の煩雑さ、処理の遅さ等の不満点はあるというものの、概してロシアという国に対しては好印象をもったままTさんは留学を終えました。

 また、Tさんは院生と言うこともあり自身の研究に関する調査や文献収集も留学先で行っていました。そこで得られたデータや資料が大なり小なり修士論文の内容に生かされたことは、語学の上達以外に重要な達成だったと思われます。短期の語学留学だとそこまで目的意識をもって留学に行くことは珍しいかもしれませんが、長期留学で海外の大学へ行く場合、語学の上達以外にもサブテーマをもって現地入りするとTさんの事例のようにより充実した留学生活が送れるかもしれませんね。

 Tさんいわく、東北大学からウラジオストクの大学への交換留学は過去に前例がありませんでした。一般に、東北大学の学生の留学先としてはヨーロッパやアメリカの大学が人気で、ロシアへ行く学生はあまり多くないそうです。人気の留学先は書類選考や奨学金の獲得などの点において競合しやすいので、ロシア語学習者や旧ソ連圏に関心がある方はロシアへの留学を考えてみてもいいのかもしれません。ロシア連邦では政府の国費留学プログラムもあるので、気になる方は調べてみてください。

 以上、2回にわたって大学院生Tさんのロシア留学体験談を紹介しました。少しでも何かの参考になれば幸いです。それではまた次の記事をお楽しみに!

(文責:東北大学日露交流サークル 佐藤)

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