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【WEB版】『ディープインパクト誕生の裏に隠されたシナリオ』(19)

プライド高き馬、ナリタブライアン

「ナリタ」や「オースミ」の馬主が、山路秀則氏というのはよく知られている。「ナリタ」の冠名馬では、三冠馬ナリタブライアン、皐月賞馬ナリタタイシン、菊花賞馬父ナリタトップロード、3頭のGⅠ馬がいる。それに対して「オースミ」冠名馬からはGⅠ馬が出ていない。

「ナリタ」馬名だけが活躍できるのはなぜだろう。ここにも馬名が大きく関係している。2つの冠名について調べてみると、オースミの冠名は、山路氏の出身地、鹿児島県大隅地方から取ったもので、ナリタの冠名は自宅近くにある成田山別院から取ったものとなっている。

この成田というのが重要。成田山別院とは千葉県成田市にあり、ナリタとは成田国際空港のことを示す。つまり、ナリタブライアンが新しい10年間の最初に誕生した三冠馬に指名されたのは、これから始まる「国際化時代の幕開け」としての役割のためなのだ。

ナリタブライアンの戦歴を見てみよう。
 
ナリタブライアン
 
2歳時
1函館4 新馬 2着(2番人気)
1函館8 新馬 1着(1番人気)
2函館8 第25回函館3歳S(GⅢ) 6着(2番人気)
2福島8 きんもくせい特別(500万下) 1着(1番人気)
6京都1 第28回デイリー杯3歳S(GⅡ) 3着(2番人気)
6京都6 京都3歳S(オープン) 1着(1番人気)
5中山4 第45回朝日杯3歳S(GⅠ) 1着(1番人気)
 
3歳時
1東京6 第28回共同通信杯4歳S(GⅢ) 1着(1番人気)
3中山2 第43回スプリングS(GⅡ) 1着(1番人気)
3中山8 第54回皐月賞(GⅠ) 1着(1番人気)
3東京4 第61回東京優駿(GⅠ) 1着(1番人気)
6阪神4 第42回京都新聞杯(GⅡ) 2着(1番人気)
1京都2 第55回菊花賞(GⅠ) 1着(1番人気)
5中山8 第39回有馬記念(GⅠ) 1着(1番人気)
 
4歳時
3京都6 第43回阪神大賞典(GⅡ) 1着(1番人気)
4東京8 第112回天皇賞(秋)(GⅠ) 12着(1番人気)
5東京8 第15回ジャパンカップ(GⅠ) 6着(1番人気)
5中山8 第40回有馬記念(GⅠ) 4着(2番人気)
 
5歳時
1阪神5 第44回阪神大賞典(GⅡ) 1着(2番人気)
3京都2 第113回天皇賞(春)(GⅠ) 2着(1番人気)
2中京2 第28回高松宮杯(GⅠ) 4着(2番人気)
 
新しさという点では、朝日杯3歳Sを勝利した三冠馬ということがあげられる。主催者は三冠馬を出すにしても、同じパターンは決して使わない。だから、朝日杯3歳S勝利という戦歴を加えた新しいかたちにしているのだ。ただ、ルドルフと比べると三冠馬にしては2歳時の成績が見劣りする感じを受ける。新馬戦は2戦目で勝利し、函館3歳Sも敗退と、一見したところ順風満帆ではない。

しかし、朝日杯3歳Sまでの道のりをよく見てほしい。ナリタブライアンは1番人気に支持されたときだけ勝利しているのだ。これがナリタブラインの個性であり、プライド高き馬だからこそ、1番人気に支持されたときにしか勝たない三冠馬だったのである。

プライドを捨てたのは5歳の春。遅すぎた選択であった。そして三冠馬でありながら古馬GⅠ未勝利。これもまた、新しい個性である。ただ、古馬GⅠを勝てなかったのは、三冠馬になった翌年に指定戦が導入されたからに他ならない。この指定戦導入により、地方在籍馬が中央入りしなくてもJRA競走に出走可能となった。国際化とは広義に解釈すれば、地方から海外、すべてを包括する。つまり三冠馬となった翌年にいきなり指定戦が導入されたために、ナリタブライアンは国際化の門戸を開く役割だけを担ったのだ。

1993年12月12日 5回中山4日目 11R
第45回朝日杯3歳ステークス(GI)
※ナリタブライアンは1番人気に支持された時だけ勝利した馬
ナリタブライアンの戦歴

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