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【市場トピ Vol.1】 ~VIXから読み解く相場~

投資のジュークボックスでは、投資にまつわる様々なトピックスについても取り扱っていきます。初めてのトピはVIXについて取り上げてみます。

1.VIXとは

S&P500という米国の代表的な株価指数について、投資家がこの先1カ月間でどの程度変動するかを予想した数値。一般に株価が大幅下落する際に急上昇する傾向があるため、巷では恐怖指数とも呼ばれている

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(以下、ウィキペディア引用)
VIX指数(英: VIX Index)またはCBOEボラティリティ指数(英: CBOE Volatility Index)とは、シカゴ・オプション取引所(英語版)(CBOE)が、S&P 500を対象とするオプション取引の満期30日のインプライド・ボラティリティを元に算出し、1993年より公表しているボラティリティ指数。https://ja.wikipedia.org/wiki/VIX%E6%8C%87%E6%95%B0

 →ちなみに、ここで言うインプライド・ボラティリティとは投資家が予想
    するボラティリティ(インプライド=予想された)という意味であり、
    過去の価格から計算したヒストリカル・ボラティリティと対比される


では、もう少し具体的にイメージしてみる
2020/6/12(金)のVIX指数は36.09。この意味するところは

投資家が今後1カ月間のS&P500の変動幅を年率36.09%と予想している
(変動幅=ボラティリティ=リスク=1シグマ)

ということであるが、この36.09という値は結構高い水準である
先ほどのS&P500とVIXのグラフを、VIXだけにしてもう一度見てみる

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ここ5~10年のVIXは低下傾向にあり、VIXが20を超えてくると警戒モードというような相場環境だった

そう考えると、今回のコロナショックではVIXが一瞬で80超まで上昇しており、どれほど強烈であったのかが良くわかるし、逆に言えば、足もとの株価水準こそコロナショック前のレベルを相当程度回復したにも関わらず、依然としてVIXが30台にあるということは、投資家の株価への警戒モードは高いレベルで継続しているということが見て取れる


2.VIX先物

実はVIXには先物市場がある。シカゴ・オプション取引所(CBOE)で取引されるVIX先物には週次と月次の銘柄があるが、一般的に取引されるのは月次銘柄である

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https://www.cboe.com/products/futures/vx-cboe-volatility-index-vix-futures


先物と言っても別に難しくはなく、例えば下の赤枠銘柄もので説明すると、このVXN20は2020年7月22日に満期を迎えるものであり、満期時点のVIXが34.95になると現時点(6/12)で予想しているということである

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ここでもう一段掘り下げてみる
各満期の価格をよく見ると、満期が先の銘柄の方が価格が安くなっている

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グラフにしてみると、よりわかりやすい

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このグラフの右肩下がりの意味は何か

冒頭のVIX推移グラフのとおり、VIXは相場の落ち着きとともに低下する傾向があるため、直近の市場変動が大きく、VIXが高水準であったとしても、
6カ月・1年先には市場は落ち着き、VIXは低下しているだろうと予想されるため、グラフは右肩下がりとなる(この形状をバクワデーションという)


では、市場が落ち着いているケースとして昨年12末時点を見てみる

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グラフは右肩上がりである(この形状をコンタンゴという)
この意味するところは、今の市場は落ち着いているけど、6カ月・12カ月先はショックが来るかもしれないという可能性(時間的価値)に対する価格の割増分である(金利の説明等は割愛する)


3.VIXの運用への活用方法

VIXの運用への活用は大きく2つある

①VIX先物やETF(ETFがVIX先物に投資)に直接投資する
②VIXをリスクシグナルとして、リスク性資産の売買判断に活用する

①については、VIX先物やETFを購入することでVIXに直接投資できるが、
ここで気を付けたいのが、VIX投資のコストである

VIXは株価大幅下落の際に急上昇するという性質を考えると、VIXを買うということは、”保険を買う”という感覚に近いのだが、概して保険料は安くない


では、保険料はいくらか。先ほどの19年末のグラフで計算してみる

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VIX先物は最も取引量のあるのが最も満期の近い銘柄(ここでいう01/2020)であり、それが満期を迎える直前に売却し次の銘柄(02/2020)に乗り換える(ロール)取引が一般的である

ということは、仮に01/2020を14.625で購入し、このグラフの形状が変わらないとすると、01/2020の満期直前価格はSpotとほぼ同じプライスになる。仮にSpotと同じ13.78だった場合、その13.78を売却し、再度02/2020の14.625を購入することになる(もともとは16.625だったが、1か月後に14.625まで下落している)

13.78÷14.625-1=▲5.78%


...Oh...1カ月で約6%の保険料を払うことになる

もちろん、この間にVIXが急上昇すれば大きな利益をもたらすが、ずっと凪の市場が続いた場合、毎月高額の保険料を支払い続けることになる

日本では、国際のETF VIX短期先物指数(1552)というVIXに投資するETFが上場しているが、その目論見書では冒頭にこう書いてある

・当ファンドは、中長期的には時間的価値の減価などによる影響を受ける傾向があると考えられます。
・VIX指数が変動を繰り返して元の水準に戻った場合でも、当ファンドの基準価額が元の水準に戻るとは限りません。


念のため書くが、別にVIXを買う投資を否定しているわけではない。実際、今回のコロナショック直前に保有していれば、1カ月程度で4~5倍上昇したことになる。素晴らしい投資成果である


ちなみに、以前はVIXを”買う”のではなく”売る”サイドのETFとして、野村の「NEXT NOTES S&P500 VIX インバース ETN」(2049)が存在したが、2018年2月のVIXショック後に償還された

インバースの場合、毎月の保険料を受け取る側になるので、凪の市場が続けば、毎月高額の”保険料”を手に入れることができるが、今回のようなコロナショックが起こった場合、大損失を抱えることになる


②VIXをリスクシグナルとして、リスク性資産の売買判断に活用する

例えばシンプルにVIXが20を超えたらリスク性資産を売却するなどと言った使い方が考えられるであろう

また、先に紹介したとおり、VIXのカーブを用いるのもひとつである
具体的には、先物の最も満期の近い銘柄と2番目に満期の近い銘柄の大小関係を見て、前者の方が高ければ警戒モードとしてとらえる方法である

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グラフを見ると、先週6/5時点では米雇用統計の好結果を受け、一段と株価上昇していたため、VIXの水準自体は20半ばと依然として高いももの、グラフの形状自体は右肩上がりであった

しかし、FOMC後に大幅下落に見舞われた米国株は、再びVIXのグラフが右肩下がりの警戒モードとなっている

このグラフ形状を見た判断というのは、プロの投資家においてはよく利用される方法であるため、初めての方はぜひ覚えておいて損はないと思う


4.最後に

長々とVIXについて説明してきたが、長期積立投資のように下がったら買い増しして放置するだけという投資スタイルの場合はさほど役に立つ話ではなかったかもしれない
一方で、ある程度相場観をもって機動的に売買する投資スタイルの場合は、VIXなどのリスク指標は重要な判断材料の一つになると考えている

VIXは米国S&P500を対象としているが、例えば日本にも日経平均ボラティリティーインデックスというVIXの日経225版があるし、それに応じた先物も上場しているので、ぜひ参考にしてみてほしい

(文責:S)


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