見出し画像

中国進出時に総代理店に任せて痛い目にあう前に

要約

日本のメーカーやブランドオーナーが中国進出を行う際に代理店を活用することがほとんどでしょう。中でも複数の代理店を地域や商品、ブランド等の軸で束ねてくれる総代理店に任せるケースが多いのではないでしょうか。2000年代の流通暗黒時代の中国であればともかく、インターネットを含めてオンライン、オフラインにおけるすべての流通チャネルが整備された今の中国においてはむしろデメリットの方が多いと考えています。今は中国での流通・小売を直接コントロールする時代です。その点について説明します。

とあるアパレルブランドの話

日系ではなく欧米系ですがアジアの小売拠点を日本のみに置いていたアパレルブランドですが、かつて南青山のみに置いていた店舗は、その希少性からか中国人も含めたアジアからのインバウンド旅行者が絶え間なく訪れ、中国の芸能人も立ち寄るほどの場所となっていました。今では中国にも進出し、上海など限られた場所における高級モールに出店するに至りました。2022年にこのブランドは中国で更に10店舗を増やす計画を実行するそうです。

代理店が考える”先大後質”

この欧米系ブランドは恐らく中国においては総代理店を活用しています。代理店は流通・小売の中間に入ってマネジメントを行うことにより価値を回収する業態ですが、売上の規模に応じた報酬体系になっていることが多いため、「先に大きくなり、質は後回し」という考え方になりがちです。特に総代理店に至っては、広大な中国における流通・小売を束ねてくれるとあって、日本を含めた海外のメーカーやブランドオーナーにとっては頼りになる存在として交渉優位となりやすいのです。

質が後回しになる、とは?

店舗拡大や売上拡大を優先した結果として、総代理店の先にあるチャネル、具体的にはぶら下がる子や孫代理店、更には小売店などのマネジメントの質が下がります。代理店間での価格統制がとれずに末端価格が乱れたり、ディスカウントや投げ売りが起こることによりブランド価値が下がります。海外からの商品が不足してその瞬間の需要を満たすことができない場合、代理店自らが模倣品を製造し、流通経路に流すという事例も実際にありました。

また、そもそも店舗が増えるということは生活者から見てそれだけ希少価値が下がるということでもあり、ブランド価値に悪影響があります。実際、前述した欧米系ブランドの当初からのファンであった探検隊メンバーも中国での店舗の急増で「興ざめ」したそうです。

代理店に「任せる」ことをやめましょう

代理店や総代理店を否定しているのではありません。「任せてしまう癖」から抜け出しましょう。日本のメーカーやブランドオーナーと接していて、日本国内ではPDCAを回すことに躊躇はなく、細かいマネジメントを行うにも関わらず海外に出たとたんに総代理店に放任してしまうことに不思議な気持ちを感じざるを得ません。

商品を流す仕組みを作る、ことで終わっていないでしょうか。仕組みを作って放任した結果として、商品のベースであり、生活者に対して伝えるべき物語としてのブランドを失ってしまっては本末転倒です。こうしたブランドに対する丁寧さ、その背景にある愛着は、オーナー系企業には残っているものの、サラリーマー社長によるマネジメントを行っている企業には失われてきているように感じます。ブランドの物語を異国の人々に丁寧に末永く届け続けること、原点に立ち返るべきではないでしょうか。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?