【半導体戦争】Intelの苦境
日経平均最高値更新
日経平均株価が最高値を更新しましたが、最高値更新までブーストをかけた理由と言ってもいいのがエヌビディアの決算です。
市場の予想を大幅に上回ったことで株価が上昇し、日本の半導体企業の株価もそれに伴って上昇しました。
現在は半導体が世界の主役と言っても良いでしょう。
今回は半導体企業のポジションと、かつて半導体といえばこの企業と言われるほどの地位を誇っていたIntelについて書いていきたいと思います。
そもそも半導体とは?
半導体は電気を通す能力がある素材ですが、少し特別な素材です。
通常の導体(電気を良く通すもの)や絶縁体(電気を通さないもの)とは違って、半導体はちょうど中間の能力を持っています。
これにより、電子の流れをコントロールできます。
半導体は、コンピューターやスマートフォン、テレビなどの電子機器に使われていて、小さなチップに多くの情報や機能を詰め込むことができます。
半導体のおかげで、私たちの日常のデバイスが高性能で頭の良い動きをすることができるのです。
そして半導体は現在AI分野で使用されています。
AI分野で使用されている半導体は、高度な計算とデータ処理を支える役割を果たしています。
特に、グラフィックス処理ユニット(GPU)やTensor Processing Unit(TPU)などの特殊な半導体がAIタスクに特化した処理を行います。
これらの半導体は大量のデータを並行して処理することが得意であり、機械学習やディープラーニングを可能にします。
AIが画像認識、自然言語処理、ゲームプレイの最適化などをしてくれる一因が、この特殊な半導体の活用にあるのです。
半導体企業のポジション
半導体産業を簡単に表すと図のような構造になっています。
設計と製造に分かれており、製造の中でも前工程と後工程に分かれています。
また、設計・製造を垂直統合型で行う企業と分業している企業にも分かれています。
IDMとは自社で全工程を一貫して行うことができるメーカーを指します。
ここにIntelが所属しています。
ファブレスとは自社で生産設備を持たず、設計やマーケティングなどに特化した企業を指します。
ここにエヌビディアが所属しています。
ファウンドリーとは顧客の設計データに基づいた受託生産を行う企業です。
ここに近年日本の熊本に進出したTSMCが所属しています。
OSATとは半導体製造の後工程・テストを請け負う企業です。
一口に半導体企業と言ってもポジションが分かれているということがわかると思います。
Intelのビジネスモデル
Intelは半導体製造のIDMで、自社で設計から製造まで全て行うことができます。
Intelの共同創設者であるゴードン・ムーアは「半導体の集積率は18ヶ月で2倍になる」というムーアの法則を提唱しました。
これは同じ大きさの集積回路が18ヶ月で2倍の性能になるということです。
半導体業界は技術の進歩が早い業界です。
Intelも技術開発のスピードと高い開発力で業界をリードしてきました。
Intelの特徴としてはまず同業他社に先駆けて技術開発を進めて他社を突き放します。
他社は半年から1年でIntelに追いつきますが、Intelは追いつかれたら価格を大幅に下げて価格の参入障壁を作ります。
つまり、Intelは他社に追いつかれるまでの短期間に十分な利益を上げるビジネスモデルを構築していたのです。
ではなぜIntelは大幅に価格を下げることができるのでしょうか。
それは経験効果があるからです。
経験効果とはある製品を生産する作業の経験が蓄積されると作業効率の向上などの理由によりコストが減少するというものです。
そのため、他社に追いつかれる前に経験効果でコストを削減し、追いつかれたら大幅に価格を下げるということを繰り返してIntelは先行し続けてきました。
Intelの苦境
ただ、Intelは現在苦境に立たされています。
その理由の一つにAppleの脱Intelが挙げられます。
Appleは自前で半導体を製造することにしたのです。
そしてAppleが製造する半導体であるM3シリーズを搭載するMacBook Proの新製品についてIntelのプロセッサーを搭載していた従来品から性能が飛躍したということを強調しました。
大口顧客であるAppleが自前で半導体を開発する姿勢に変えたことに加えて競合のAMD、クアルコムの追い上げによって従来のIntelの戦略が苦しくなりつつあります。
これまで追いつかれる前に突き放していたIntelがなぜ追い上げられているかというとIntelが微細化技術に大苦戦したからです。
これが契機となり、TSMCやサムスン電子と組むライバルの台頭を招きました。
Intelは主力製品がPC用の半導体で今後はAIに使用する半導体に期待をかけていますが、エヌビディアやAMDのように投資家の期待に応えられていません。
実際に業績も大きく成長していないのがわかるかと思います。
Intelの現状から改めて永遠に続くビジネスモデルはないと感じさせられます。
世界で急拡大している半導体でIntelは覇権を取り戻すことができるか注目していきたいです。
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