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学校でお金

「お金の単位は知っているかい?」

と先生は聞いてきた。

「円」

「他には?」

「ドル」

「ユーロ」

「ベル」

「ベルってなに?」

「先生知らないの?あつ森で使われているお金だよ」

「あつもり?熱々の森?」

みんなプッと吹き出し、呆れた顔で笑う。

「あつまれどうぶつの森のこと。ゲームだよ」

「なるほど。それでな、
 円はコインが丸い形、円形なことから「円」とつけられた。ユーロはヨーロッパ連合の人たちが自分たちのことを表すヨーロッパからつけられたんだよ」

そうなんだ。
先生はこんなふうに豆知識をよく話す。


「それで、
 これから作るお金にも自分たちらしい単位が必要だ」

ということで、それを考えることになった。

お金だから「KIN」、

3組だから「SAN」

 などなど。

多数決の結果、

百山(ももやま)小学校なので「MOMO」にすることになった。

100モモ、なんか、かわいい感じだ。


「で、お札を作るからー」

今度はお札づくりである。
先生が用意するのではないらしい。

「お札のデザインを募集します。
 下書き用の紙を渡すから、
 描いてきたら明日の朝、黒板に貼っておいてね」


翌朝、ずらっと39枚のデザインが黒板に並んだ。

誰が描いたかは無記名なので分からない。

投票の結果、1~3位を決め、人気順に

「100モモ、50モモ、10モモ、
それぞれのデザインとして採用します」

ということになった。


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それから数週間たって、25日の日が来た。

「さあ、お給料の日だ」

と先生。

ひとり1枚ずつB4のプリントが配られた。

見てみると、
そこにはあのとき選ばれたお札が印刷されている。

「その1枚に、1000モモ分あります。
 それが君たちの基本給です」

あれ、先生からじゃなく、
自分たちで給料って支払うんじゃなかったっけ。

「それをまずハサミで切って」

ジョキジョキ切り分ける。

「そのうち、500モモは自分ものにしていいです。
 残り500モモは、
 よく働いたと思う会社に払ってください」

ということになった。

「じゃ、社長さん、前に出てきて」

と、各会社の社長たちが黒板の前に呼び出される。

先生が

「はい、給料袋」

と、大きな封筒を彼らに手渡す。

そして先生が社長たちに
「ここからアピールタイムです。
 社長さん、
 自分たちの会社がいかに頑張ったか、
 みんなに最後のアピールして」

というわけで、
社長な彼らは、必死こいて、この1ケ月、
どんな活動をしてきたのか訴える。
週1くらいしか活動しない会社は、
ここでみんなの記憶を呼び起こすのだ。

アピールタイムも終了し、
先生が社長たちに持たせた封筒を見ながら、みんなに言う。

「じゃ、呼ばれた班の人たちからお給料支払ってください。  
 この袋に入れてあげてね。
 はい、1班さんどーぞ」

というわけで1班の人たちから、
それぞれ自分のお気に入りの会社にモモを入れ始めた。
社長たちは必死に「こっちこっち!」と呼びかけている。

全員が終えると

「じゃ、山分けタイム」

と、それぞれの会社のメンバーで集まり、
集まったモモを分け始めた。

「よっしゃー!」

「すげー、こんなに!」

とあちらこちらから歓声が聞こえてくる。

「先生、割り切れない」

と困った顔をする子たちもいる。

「じゃ、貯金したら?」

と先生。
お給料袋の封筒は先生預かりなので、
そこに余ったお金を入れて繰り越すことができるのだ。

札束を手にしながら先生のとこへ駆けていく子もいる。

「先生見て。こんなになった!」

「すごいなー、がんばったなー」

「先生、両替できる?」

「できますよー。7、8、9、10。はい確かに、じゃ交換」

「先生、おかわり優先券ください!」

「毎度ありー!500モモになりまーす」

「先生、宿題パス券!」

「1000モモでーす」

「たっけー!800しかないよー」

「またどーぞー!」

銀行なのか、お店なのか、先生の前も大賑わい。


みんなそれまでに味わったことのない満足感を覚えていた。

それは勉強で評価されることと違い、

自分が好きなこと、得意なことで誰かの役に立ち、

しかも大人からではなく

同じ仲間から認められることの楽しさだったのだと、
わたしは思う。


学校から帰ったわたしがしたことは、
モモ専用の「お財布」を作ることだった。

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