【短編小説】この感情に名前をつけないで〜2〜(5話完結済)
みーたんに出会った日→〜1〜へ
みーたんと月を見た日
いなくなったのはみーたんじゃなくて、パパだった―。
ひどいじゃないか。
パパと言う名前があるのに、どっかに行ってしまうなんてなんて。
あれから父の話をすると母はひどく機嫌を悪くした。
だから父がどこへ行ったのか知らない。
父はいつも仕事仕事で、家にいることがとても少なかったので、いなくなってもあまり生活が変わることはなかった。初めは出張か何かだろうと思っていたぐらいだ。
でも、父が帰ってくることはなかった―。
みーたんは父との言葉とは裏腹にずっと公園にいた。
「みーたんもお家帰りたくないの?」
親友のユキちゃんと一緒に学校の校庭で遊ぶのが日課だった。でも、夕方になるとユキちゃんのママがユキちゃんを連れて帰っていく。1人になってしまったわたしはトボトボとみーたんのいる公園に向かった。
「今日もママはお仕事で遅いんだって」
みーたんは何も言わずに話を聞いてくれた。
「パパいつ帰ってくるかな」
みーたんと一緒に月を眺めた。
ある夜、母が両手に買い物袋を下げて公園を横切ろうとした。母はわたしをみつけ、
「なんでこんな遅い時間まで外にいるの!危ないでしょ」
母に怒られたわたしはべそをかきながら話した。
「みーたんと、みーたんと、、お話ししてたんだよ」
「他の家の猫でしょ?引越しの時にどうせ泣くんだから、名前なんてつけないの」
母はこの時ばかりは父と同じことを言っていた。
『ああ、わたしが悪かったんだ、
パパの言うことを聞かなかったから』
だから、パパもいなくなっちゃったし、ママもずーっと怒った顔してる。
小学1年が終わった3月。
4月からはお婆ちゃんの家に移り住むことになった。
わたしはユキちゃんとバイバイした。みーたんともバイバイした。
パパとママの言う通り、涙がたくさんでた。
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?