白い硯
学生の頃、画材店で白い硯を見つけました。
手のひらくらいの直径で、
数枚の皿がお重箱のように重なっています。
皿は両面が使えるようになっています。
お店の人に尋ねると
丁度お習字のとき使う墨のように棒状に固めた
岩絵の具を見せてくれてました。
墨をするようにして使うのだそうです。
なんだかとても気になって
試してみたくなって
高価だった絵の具と硯を
アルバイトして手に入れました。
なんとなく
青い色を手に取って
硯に少しお水を入れてすってみました。
ゴリゴリ
お習字の時に墨をすった時はもっと滑らかでした。
ゴリゴリゴリゴリ
岩絵の具をすり
たっぷり水を含ませた水彩紙に薄くひろげてみました。
完璧に滑らかに練ってある
チューブ入りの絵の具とはまったく違った
含みのある色が現れました。
細かな絵の具の粒子が僅かな滲みを作りながら
紙の上の水たまりをゆっくり動いています。
次第に水が乾いていくと
しっとりした色の風景が広がっていました。
それ以来、油のにおいがきつくて辛かった油絵を離れました。