私が好きなヨーロッパの小さな街々~フランス シャルトル~
パリからの日帰りツアーの定番。 何ともったいない。泊まってわかる街の深み
シャルトルには、これまで何度訪れたでしょうか。
多分、5回は行っているはず。
日帰りのバスツアーや、モンパルナス駅から列車に乗ってと、いずれも半日または周辺観光も入れて終日の日帰りの旅でした。
街での滞在時間は長くて3時間程度で、そのほとんどは、大聖堂の見学とその周辺のみ。それも大急いで見どころだけを見て回り、その後、周りの旧市街を歩き、ちょっとした買い物してという感じでした。
2019年の秋に「シャルトルを読む」という旅でシャルトルに4泊しました。旅の目的は大聖堂の徹底見学と周辺の教会へ行くためでした。
しかし、丸2日間は大聖堂見学で、特に、東西南北にあるステンドグラスのひとつひとつを読み説きます。
また、大聖堂正面や北と南の扉口にある彫刻群、内部の祭壇やクリプト(地下聖堂)まで、午前・午後に分けてたっぷり見尽くしました。
曇りならじっくり楽しめるステンドグラス
よくパリのガイドさんが、「晴れた日はぜひ、シャルトルへ行ってください。ステンドグラスが素晴らしいです」と言ってましたが、果たしてそうでしょうか。
今回の旅の講師、ロマネスク美術の専門家・池田健二さんによると、「ステンドグラスを見るには曇りの日が一番」と言っています。
大聖堂には東西南北の四面にステンドグラスがあり、その数176枚で、晴れていれば、確かに色は鮮やかなのですが、時間によってはスポットライトのように陽が差し込むため、斑ができたり、ステンドグラスを守るためにかかっている網が影なり、望遠で撮影するときれいに写らないそうです。
では、晴れた日に見るならば、時間を考える必要があるようです。
日中ほぼ陽が差し込むのは南側だけですので、他の3面は陽の当たる状況を心配する必要なく見られます。
とするとすべてをよい状態で観るためには、南側だけは朝と夕方に行くのがベストとなります。
この南側には有名な13世紀のオリジナルのステンドグラスが残っており、有名な聖母マリアの像があります。
もう一つの見所、正面の彫刻群は、陽が差す午前中がベストということになります。
巡礼の街シャルトルは、街としての魅力が詰まっている
大聖堂の話はこのくらいにして、ちょっと街歩きの話をします。
シャルトルは巡礼地で、小高い丘の上に大聖堂はあります。
パリからバスで行くと真っ平の麦畑のボース平野の遠くに大聖堂の尖塔が見えてきますが、近づくと窪んだ小高い丘の上に教会が築かれ、それを中心に街が発展して行ったことがわかります。
ですから、まず、観光の最初にその様子がはっきり見える公園へ向かいます。
その名は桜井公園。
その名の通り、シャルトルは奈良県桜井市とは姉妹都市で、桜井市にもシャルトル公園があるそうです。
公園には桜の木が植えられていて春には市民の憩い場となっているそうです。ここから街を眺めれば、シャルトルの街が歴史を辿ることができます。
街の西側にはユール川が流れていて、小さな石橋やハーフティンバーの民家や船着きがあります。
そこから大聖堂に向かって登って行くことになりますが、どこも絵になる街並みで、今回初めてこの旧市街をほぼ全域を歩きました。
確かに丘の街はどこから写しても奥行きがあり、色調や建物や石畳などもあって、どこを歩いても本当に素敵な町並みです。
坂道のアップダウンは「ちょっと」いう方には汽車の形をしたプチトランがお勧めです。
パンが主役、パンを味わう 毎朝の楽しみバケット
私が泊まったホテル、グランホテルモナークはいかにもフランスらしいこじんまりしたホテルでしたが、ここのメインダイニングは、ミシュラン一つ星レストランで、一夜はこれぞフレンチのディナーを十分堪能しましたが、私にはそれよりも毎朝の朝食に出てくるバケットを楽しみでした。
表面の硬さと中の柔らかいさがマッチしていて、軽くバターを付けて口の中に放り込みます。
私がこの仕事を始めた頃、パリのホテルで食べたバケットとカフェオレの質素な朝食を思い出しました。
今思えば、何とも物足りない朝食でしたが、パンの美味しさだけは記憶に残っていました。
バケットを食べるのも初めてでしたが、噛めば噛むほど味があって・・・。昼食は、大聖堂近くのガレット屋さんで、午後の見学のひと時には、川沿いあるカフェなどと食も十分楽しめた滞在でした。
しかし、シャルトルが決して有名のグルメの街でもありませんので、これがフランスの標準だとしたら、レベルが高いなーとつくづく思わされました。
フランスの田舎は素晴らしい。パリの近くにあって、手軽に味わえるシャルトル
フランスの田舎は素晴らしいとよく言われます。
確かにフランスの田舎そのもののドルドーニュ地方にも、なだらかな斜面が続くブドウ畑とシャトーのブルゴーニュ地方にも、そして眩しいほどの日の光と白い石灰岩がむき出しになった南仏プロヴァンス地方にも、そうした期待通りの素敵な街があります。
また、パリの周辺にも、宮殿や美術館や大聖堂やそして文人・画家ゆかりの街がいくつかもあって訪ねましたが、シャルトルほどの街はなかったように思います。
何といっても1000年の歴史があり、大聖堂を取り囲むようにしてできた街並みはどこへ行っても絵になり、深みのようなものを感じるからです。
パリにいらっしゃったら、一泊だけでよいですから、フランスの田舎を味わえる街シャルトルに行ってみませんか。
鹿野眞澄