ゲームソフトの「帯」に懸ける想い。

                それは、ちいさな物語。


今や見掛けることもなくなった。

かつて、プレステーション(初代)やセガサターン、ドリームキャスト、音楽CD(今もCDって売ってるの?)などのCD系ソフトの背中(パカッて開けたら繋がってる側)に付いていた。

中古だと付いていないことも多く、ハガキやチラシなどと同様捨てていたというかたも多いことかと思う。

しかし、フリマなどでは帯単体でソフトを上回る価格が付いていたりする。
只の紙切れに、である。
マニアとは、かくあるものだ。

メーカーによって何を書いているかはマチマチで、タイトルまんまだったり、パッケージ裏のコピーをまんま載っけてたりもする。
中には何も書いてないことすらある。

僕にとって「帯」とは、作品の魅力を伝える言葉が短い文の中に凝縮された心を惹き付けられる特別なものだった。

※余談
かつてテレビ放映されていたアニメ、ゲーマーズ!の第一話にて主人公が  ゲームの魅力がぎゅっと込められたゲームのパッケージ裏が好きだ(意訳)と語るシーンがある。
他にも、マイナータイトルへの想いなど、ゲーム好きが共感を得る描写がある。
恋愛に比重が傾いている節もあるが、ゲーマーがうれしくなるような要素がちりばめられている。OPもオマージュに溢れている。

これに近い感覚であり、パッケージ裏はストーリーやキャラクター、システムなど
ゲームの「中身」を宣伝していることが多い。
それに対し、パッケージ表は、その作品の「顔」である。

たいてい、陳列棚に表を向けて置かれている光景を誰しも見たことがあるだろう。
ゲームに限らず、本でも音楽CDでも、およそ商品と呼ばれるものはビジュアルとしての「顔」を見せるように置かれている。

ゲームもご多分に漏れず、ゲームのイメージであるキービジュアルが描かれていることが多い。

たいていは無地にタイトルロゴのみを基本として、キャラゲーであればキャラクターが、世界観重視であれば背景が描かれていたり、象徴的なアイコンがあったりする。

面積も広く、手に取りたくなるような魅力的なデザインであることが求められると思うのだが、その役割は裏に任されているのか、比較的シンプルであることが多い。

個人的にゲームパッケージでジャケ買いした記憶はあまりない。

それに対し、面積としてはパッケージの数分の1程度の広さを与えられた領域である帯。
その狭い場所に書かれた文字は、時に僕の心を鷲掴みにした。

もちろんパッケージ裏にもコピーが書かれていることが多い。
だが、棚に置かれたソフトの裏は手にとってひっくり返さなければ見えない。

大きなビジュアルで顔を見せ合っている表パッケージの隣にちょこんと、だがしかし、しっかりと存在をアピールしているのである。
お客さんに見られる特等席で。
そんな帯に、僕は憧れにも似た感情を抱いた。

僕が自作において(未完だが。嗤うな)、言葉による作品イメージ、コピーを強く意識する原点がここにある。

作品のコピーを広報が考えているのかどうかはしらないが、僕は本来、これはシナリオライターやプランナーの仕事であると思う。
(実際は適材適所だとは思うが)

特に物語を文章で表現するシナリオライターは、誰より作品の魅力を言葉で表現する立場のハズだからだ。

故に、ライターのセンスがモロに問われる。

イラストやグラフィックがゲームの顔なら、
言葉は中身、物語。

ストーリー重視の作品でなくとも、プレイ体験という物語を言葉にして伝える。

ちいさな場所に込められた想いは、コピーという短い物語だ。
凝縮された物語。

少なくともゲームソフトではもう見掛けることもなくなった気もするが、未だに帯というものに特別な感情がある。
だから、レトロゲームを買う時も、つい帯のありなしを気にしてしまう。

ゲームプレイには全く関係のないことだ。
通販大手の出品者も「商品と見なしていない」と記しているところもある。
だが、僕にとってそれは特別な物語だ。


※追記
僕が心惹かれた帯(コピー)をひとつ紹介。
「白詰草話」の帯に書かれたコピー。
Windows用ゲームとして発売されたものをドリームキャストに移植した際の帯に書かれていた。

      少女達に追加された24対目の遺伝子


天才かてめーは。
買うしかねーだろこんなん。

僕もいつかキャッチザハートなタイトーのコピーのような作品コピーを作りたいものである。タイトーはスクエニに吸われたが。

ジャンルはノベルゲームなのだが、ボタンを押す度にマンガのようにコマと吹き出しが表示されていくという表現形式をとっていて、当時、衝撃を受けた。

加えて話数形式での区切り、絶妙なタイミングでオープニングやエンディングを挟むなど、独特の雰囲気を持っていた。

フェティッシュなイラストに人気があり、楽曲の評価も高い。
シナリオも人間の幸福をテーマに描かれ大人の味わいが魅力的だ。
メインテーマはタイトル画面の演出が加わり、20年振りに触れた僕は同じく魂を震わせた。透明な感覚、タイトルまで神ってる。

「君が望む永遠」や「マブラブ」といった作品が有名なアージュとは違った演出の可能性を感じたものだった。
制作ブランドであるLittlewitchは、無期限活動休止らしく、新作は望めないのが悔やまれる。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?