中学三年間~部活と私とそれから~
放課後になったようで、窓から吹奏楽の基礎練習の音が聞こえてくる。
まだ1学期なので、新入部員の音色なのか、初心者の音色だった。
その音を聞きながら、私の心は中学時代へと戻っていく。
*
中学校の部活は吹奏楽部だった。
小学生のとき楽器をしていたわけではない。
吹奏楽部に入ろう!と思っていたわけでもない。
むしろ部活に入る気もなかった。
入った理由は完全に一目惚れだった。
新入生歓迎会の部活紹介で、10人に満たない人数で体育館の舞台に上がり、スポットライトを浴びる。
金管楽器が、ライトの光を浴びてキラキラ輝いていた。
少人数しかいないのに、迫力のある吹奏楽の音が体育館を包み込む。
圧倒された。
その中でもひときわ目を引いたのは、ドラムを叩いているツインテールの女の先輩だった。
小柄な体で全力でドラムを叩いている。
その真剣な目。
全身でリズムを刻んでいる体。
ふいに見せる笑顔。
その全てから目が離せなかった。
一瞬で憧れの存在にされた。
部活は吹奏楽部に入部しよう。
そう決意した。
*
母校の中学校は、全学年で150人いないような規模だ。
20近い部活があり、入部してもしなくても良かった記憶がある。
なので、1部活の部員は10名いないような部が多かった。
入部した吹奏楽部も例外ではなかった。
入部当時3年生6名、2年生0名、新入生7名の計13名だった。
が、3年生2名が受験勉強に専念するためという名目で、休部しており、ほとんど会うことはなかった。
*
そんな背景もあり、新1年生も60名程なので、体験入部に来た新入生はなんとしてでも、本入部させようと必死だった。
体験入部に行くと、まず担当楽器決めをした。
吹奏楽には大きく分けて、3種類ある。
トランペットやトロンボーンなど、金管楽器。
サックスやクラリネットなどの、木管楽器。
リズムを刻むのに欠かせない、打楽器(パーカッション)
全ての楽器を試して、そこから適正ある楽器を先輩と顧問が協議して決めるという形だった。
マウスピース(楽器を吹く部分)を渡され、低い音・高い音を吹き分けるように指示される。
先輩のお手本やアドバイス通りに、マウスピースを吹く。
他の人は色んな音出すのに、私は何一つ音を出すことができなかった。
金管楽器・木管楽器ともに全滅だった。
私を見る先輩の顔が、時間が経つとともに、こいつはダメだという顔になっていった。
最後に、パーカッションの基礎練習をした。
メトロノームに合わせて、ステックを持ちリズム通りに叩いていくという練習だった。
最初は四分音符、次は八分音符、十六分音符と変化していく。
うまく叩けなかった。
初めての経験だからできないのは仕方ない、とは思えなかった。
みんなが見ている中、一人だけずれていくリズム。
恥ずかしくて、できない自分に苛立った。
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一通り楽器を周り、各自の楽器が決まった。
私は、パーカッションになった。
当然だ。だって吹く楽器は何一つ音が鳴らなかったから。
消去法で決まったのだ、ということは誰の目にも明らかだった。
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周囲の思いとは裏腹に、私は内心本当に喜んだ。
入部する前から、第一希望はパーカッションだったから。
なぜなら、あのドラムを叩いていたツインテールの女の先輩がいたから。
憧れたドラムの先輩は、同じパーカッションの直属の先輩になった。
*
そして私の部活の時間が始まる。
それは地獄の時間の始まりだった。
to be continued…
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