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社会保険適用拡大による106万円の壁への影響

 こんにちは。よこちょうです。
 9月も中旬となりましたが、本当に暑い日が続いてうんざりですね。
 皆様いかがお過ごしでしょうか。

 さて、今回は来月(2024年10月)に迫った、社会保険の適用拡大について考察してみたいと思います。


【社会保険で意識される「106万円の壁」と「130万円の壁」】

 まず、みなさんご存じかもしれませんが、上記2つのいわゆる「壁」と呼ばれている内容について整理しますと、

 所得税が掛かるのは年収103万円を超えた場合となりますが、健康保険や厚生年金などの社会保険を払う基準に関するものが上記の「壁」にあたる金額になります。
 現状(9月30日まで)、従業員101名以上の会社で働いている方を対象に、

  • 週20時間以上働いている

  • 賃金が月額8万8千円(つまり年収約106万円)

などの場合に、厚生年金および勤務先が所属している健康保険に入ることになります。これがいわゆる「106万円の壁」となります。

 さらに残業代などで年収130万円以上になりますと、会社規模関係なく社会保険の「扶養」から外れることになります。
 この場合、ちょっと複雑なのですが、現状、厚生年金や勤務先の健康保険に入る事ができるのは、

  • 従業員101名以上の会社の場合、週20時間以上

  • 従業員100名以下の会社の場合、週30時間以上 働く方となります。

 それ以外の方は個別に国民健康保険と国民年金に入る事になります。
 これがいわゆる「130万円の壁」となります。

 つまり、この境界を超えてしまうと、社会保険の負担が必要となるという事で、これを払わずに済む(=扶養で収まる)レベルで時間を調整して働く方が多くいらっしゃるのが現状です。
 なお、当然ながら厚生年金、勤務先の健康保険は労使折半ですので、増額になれば従業員のみならず会社側も負担が増える事になります。

【2024年10月1日施行の年金制度改正法による要件の変更内容】

 さて、10月1日、つまり来月頭から、上記「106万円の壁」でご紹介した要件が変わります。
 現状従業員101名以上にて適用されているものが、「従業員51名以上の会社で働いている方を対象」に変更になります。
 また、「130万の壁」の方においても、「従業員100名以下」の部分が「従業員50名以下」に変更となります。

 この改正により、それぞれに負担が増えることを考慮して、国の方でも2023年10月から助成金などの施策をベースに、「年収の壁」を超えても手取り収入が減らないようにするための対策を行っています。

【厚生労働省が実施している助成金の内容】

 それでは、厚生労働省の助成金について簡単にご説明します。
 上記の通り、年収が106万円を超えると社会保険料負担が発生し、負担額は概算で約16万円となります。
 つまり手取り年収が約90万円に減少する事になります。
 これを同一レベルの収入に回復するためには、実質125万円の年収が必要となります。

 厚生労働省が実施している助成金制度は、新たに社会保険に入った従業員に企業が手当(名称例:社会保険適用促進手当)を出す場合、25年度末までの時限措置ではありますが、1人あたり3年間で最大50万円を助成するという内容です。
 社会保険料を払ったとしても、手当で補充するという形になります。

 基本的な内容は、手当を最大2年間渡し(保険料相当額分)、3年目は手当をなくす代わりに年収を上げる or 労働時間を増やす事で年収水準を維持することに対して最大10万円助成するという形です。3年目以降は手当に頼らず恒常的に取り組む形に変えていくという事を狙っているようです。

 政府の「年収の壁」対策ページにこの内容に限らず、かなり具体的に記述されておりますので、詳細をお知りになりたい方はこちらをご覧ください。

【企業側/従業員側それぞれから見た考察】

 さて、この点について私としての考察というか意見になるかもしれませんが、少しコメントしておきたいと思います。

  • 年収/扶養を意識して働くことの意味
    現状少子高齢化の進行が著しく進む中、企業側の労働力不足がより一層深刻になってきています。生産性向上と共に、高齢者や女性をいかに活用するかが大きな課題となってきていると考えます。
     ただその一方で、扶養を外れることへの負担感とその後のメリットのバランスの悪さから、労働時間調整や対象職務の制限など、本来活かされるべき能力が埋もれている状況である事もまた事実だと思います。このことは単に一企業の問題だけでなく、日本の成長にとっても大きなマイナスであると思います。
    「働きたい方が適切な職種で思う存分働き、必要な対価を得る。そして社会を維持するために応分の負担を行い、その負担に対する保障を行う。」
     政治家および厚生官僚の皆さんに、この課題と正面から向き合い、納得のいく施策を提示してほしいと心から思っています。

  • 企業側の負担について
    経費とはいえ、労使折半の社会保険料は企業側にとっても、現状大きな負担になります。
    この費用を意識されていない経営者、人事給与担当者はいらっしゃらないかとは思いますが、給与の15%程度は必要となります。
    たとえば今回の改訂で、新規対象者が増えた場合やその対処として給与アップ施策を実現した場合、当然ながらその費用は増える事になります。
    従業員の立場ですと、企業側が負担して頂いているという事はなかなか意識できません。(企業が払っているとか知らない方もいるかも。。)
    本当に有難いと思っておりますが、この負担で苦しむことがないよう願うばかりです。

  • こういう問題をしっかり理解し、みんなで考えることの重要性
    当たり前ですが、これらの内容は日本国民のほとんどが関係する話です。
    なので、本来もっときちんと理解できるように国側は情報提供するべきだし、国民の側ももっと学ぶべきだと思います。
    マスコミなどもゴシップネタを流すよりも、こういう生活に密接した問題をもっと詳細に解説して議論を深めていくべきだと思います。
    日本の年金制度、健康保険制度は本当に難しいです。理解している方はほんの一握りのように思えます。
    現在の私の立場からも、もっともっと皆様にお伝えする機会を増やして、この問題をよりプラスになるよう理解して頂くよう尽力して参りたいと思います。

 今回は、「社会保険適用拡大による106万円の壁」について考察してみました。

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 この問題は助成金などの活用もできる分野ですので、まさに社会保険労務士事務所のテリトリーになります。
 ぜひお気軽にご相談下さい。

 次回もぜひお楽しみに!